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全世界から素材が集められ復活!
『アニメーション紀行「マルコ・ポーロの冒険」』復活プロジェクト!

1979年に初放映されたドキュメンタリーアニメ『アニメーション紀行「マルコ・ポーロの冒険」』(以下、マルコ・ポーロの冒険)は、VTRの原版が保存されておらず、長らく幻のアニメ作品になっていた。しかし、関係者や視聴者の協力で集められたフィルム、VTR素材から、4Kリマスター版が完成。2025年、ついに全43回の再放送に至った。映像・音声の復元を進め、再放送にこぎつけたチームの4人に『マルコ・ポーロの冒険』復活までの道のりをお聞きした。

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『アニメーション紀行「マルコ・ポーロの冒険」』
復活プロジェクトチーム インタビュー

「もう1回見るまで死ねない」の声に押され

――NHKの「番組発掘プロジェクト」は、なぜスタートしたのでしょうか。

A  私が13年前に、この「番組発掘プロジェクト」にたずさわって、最初に驚いたのは、NHKには驚くほど番組が残っていないことでした。
ラジオ・テレビの放送がはじまってからは、しばらくの間、番組は生放送でした。
VTRが出てくるまでは、基本的にはドラマなども生放送でしたので、残す術がなかったんです。NHKが体系的に番組を保存しようと動きはじめたのは、1981年になってからです。
それ以前は、番組の保存は限られていて、1970年代までは、ほとんど残っていないのが現状です。それで、NHKに残されていない番組をどうすればいいのかとなりました。家庭用VTR機器が本格的に発売されたのが1970年代の中ごろですので、家庭で番組を残している方がいらっしゃるんじゃないかと考えたのが「番組発掘プロジェクト」の最初です。

――マスターになるVTRを保存していなかったのはなぜですか。

A  1950年代後半に2インチ(後に1インチフォーマットに移行)のオープンリールの放送用VTRが現場に導入されたんですが、リール自体が大きくて、重さも7キロぐらいしました。1本で60分記録できるのですが、当時の値段で100万円ほどしました。そのためコスト面で番組を保存し続けることが難しく、上書きして再利用していたというのが、番組が残っていない理由のひとつですね。
また、1980年代はじめまでは、NHK自体がアーカイブスとして番組を残すという仕組みを整えていなかったようです。これがふたつ目の理由だと思います。

――第1回と最終回は残っている作品もあるようですが?

A  大河ドラマなどで、初回と最終回、総集編は残しておくパターンはありました。『アニメーション紀行「マルコ・ポーロの冒険」』も第1回と最終回の第43回は残してありました。

――それで、外部の方の協力を仰ぐことになったんですね?

A  さきほど申し上げたように、1970年代になって、一般家庭で番組が録画できるようになりました。1971年に「U-Matic(ユーマチック)」、1975年に「β(ベータ)マックス」、1976年に「VHS」規格が登場し、普及していきました。
そこで視聴者のみなさんが、NHKの番組を残しているんじゃないかということで、ご家庭で録画しているビデオテープや録音テープをお持ちであれば、NHKに提供していただいて、それを保存していきましょう、というのが「番組発掘プロジェクト」の発想の原点ですね。きちんとプロジェクトとして立ち上がったのは2013年の3月からです。

――番組の収集、復活をプロジェクトとして行うのは珍しいと思うのですが、そのモチベーションは、どこにありましたか。

画像提供:NHK

A  視聴者のみなさんの声が大きいです。NHKが「番組発掘プロジェクト」のホームページを作ったら、大河ドラマや連続テレビ小説、少年ドラマシリーズなど、NHKにはいろいろな番組の原版がないということをみなさんが知って「どこかに残ってないんですか」というご意見をたくさん頂戴したんです。

――視聴者の思い出の番組は、それぞれにあるでしょうね。

A  当時の番組の残っているものを見ると、やはりおもしろいんですよ。1970〜1980年代の番組はドラマにしろ、バラエティー番組にしろ、科学番組にしろ、まだ番組作りの形が整ってない時代です。NHKがさまざまなチャレンジをしている。制作者が「こういうメッセージを伝えたい」と作っている過程が見えるんです。

――『マルコ・ポーロの冒険』には、どんな意見が寄せられましたか。

画像提供:NHK

A  まさに熱烈な声ですね。『マルコ・ポーロの冒険』を「もう1回見るまで死ねません!」みたいな(笑)。投稿の文章を読むと、ビデオがない時代に、放送時間にはお茶の間のテレビの前に正座して、見逃さなかったことがつづられていました。再放送がないこともあって、1回の放映を見逃したら、その話数は2度と見られないんです。投稿していただいた方は、その1回で見た内容を克明に覚えていて「こういうシーンがあったから、もう1度見たい!」と書いてくれていた。当時、どれだけ楽しみに1週間待っていただいていたのかが伝わってきました。テレビ番組に存在感やすごみがあった時代なのだという気がしました。

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