いま日本で見るべきストップモーション・アニメ作品 『JUNK WORLD』と『かたつむりのメモワール』
偶然か必然か、2本のストップモーション・アニメーション作品が相次いで劇場公開された。
「JUNK WORLD」(2025年6月13日公開/監督:堀貴秀)
「かたつむりのメモワール」(2025年6月27日公開/監督:アダム・エリオット)
いずれもストップモーション・アニメーションで制作された作品だが、物語も世界観もキャラクター造形もまったく異なる。一方で、いずれも監督でありアーティストでもある個人の情熱をベースに、少人数のスタッフと共に1コマずつ手作業で作られたという共通点がある。
今回の特集では、2作のまったく異なる作品の魅力をそれぞれ紹介しつつ、これらの作品に通底する、手作りのアニメーションの面白さやすばらしさについて、掘り下げていきたい。
奇跡の大ブレイクを果たした『JUNK HEAD』の前日譚
『JUNK WORLD』はいかにして誕生したのか

2021年3月に劇場公開され、スマッシュヒットを飛ばした映画『JUNK HEAD』。監督・堀貴秀は、内装業の仕事をしながら、40歳も近くなったころに一念発起し、それまで温めていた物語と世界観とキャラクターを用いて、ただひとりで人形とセットを作り、ストップモーション・アニメという技法で映画を撮り始めた。30分の映像ができた段階で、一夜限りの上映会を実施、YouTubeでの無料公開を経て、長編映画『JUNK HEAD』を完成させた。
その後、約3年の歳月をかけて、『JUNK HEAD』の前日譚にあたる続編『JUNK WORLD』が完成。堀監督に制作時のエピソードや自身のバックボーンについて、話を伺った。
JUNKシリーズはいかにして生まれたか
――「JUNKシリーズ」の構想が、いつどのようにして生まれてきたのかと、3部作の物語が生まれたきっかけについて教えてください。
『JUNK WORLD』より堀貴秀監督(以下、堀) 最初に『JUNK HEAD』の元となった30分の短編(『JUNK HEAD 1』)をひとりで制作して、その後は資金をクラウドファンディングで集めながら、同じく30分の短編を10本作ろうと考えていました。その時点で全体の構想はありましたが、物語は30分だけしかなく、お金が集まったら続きを考えようと。その後、出資者が現れて、映画の制作費を出してもらえることが決まり、最初の30分版とそこから新たに作った70分で『JUNK HEAD』を作りました。元々10本作ろうと思っていたものを映画の3部作に構成し直したということです。
『JUNK WORLD』より今回の『JUNK WORLD』は『JUNK HEAD』より前の話で、3部作の最後になる『JUNK END』を作ることで、ひとつの大きな物語になります。
――最初から地下世界を舞台にするという構想はあったのでしょうか。
『JUNK HEAD』より堀 最初の30分版を作ったときに、世界観の設定は考えていました。それには理由もあって、当時は働きながらひとりで作っていたので、仕事をしてお金を貯めて、仕事を休んで映画を作るみたいな感じでした。予算が無ければ無いなりに、作品世界の雰囲気を出すにはどうすればいいかを逆算して考えて、地下世界の通路だったらセットは壁と天井を何枚か作って組み合わせれば、使い回しができる。キャラクターに目がないという設定も、目があると作業量が増えるし、リアリティも減るので、目のない種族を設定する。そういった制作上の都合から、逆算して作ったところが多いですね。
――前作もそうでしたが、今作もキャラクターがユニークで面白いですね。
『JUNK HEAD』より堀 映画のなかでもSFというジャンルが好きで。でも、SF映画に、感動できる普通の人間ドラマが入った作品がないなとも思っていて。よくある、派手な戦闘シーンと世界観を説明するだけで時間が使われてしまうものにはしたくなかった。自分が作るんだったら、キャラクターが立っている映画を作りたいとか、3部作にすれば余計な説明なしに物語に集中できるなとか、そんなことを考えて、自分なりに作りました。
『JUNK WORLD』より――最初からストップモーション・アニメを想定して、この世界を考えられたのでしょうか。
『JUNK WORLD』より堀 スタートは、手元に人形があったからぐらいの感じでした。コマ撮り(ストップモーション)アニメが特に好きだったわけでもないです。ただ単純に「映画を作りたい」という気持ちが湧いてきてのスタートで、知識も経験もありませんでしたし、実写映画の世界とのつながりもなかった。新海誠監督がひとりでアニメ映画を作ったことで話題になっていましたが、自分にはCGでアニメを作る能力もなかった。そんな時に操り人形を作る仕事があって「これを撮れば映画になるのでは」と思ってはじめたのがコマ撮りアニメだった。いってみれば、簡単にできると思って勘違いして作り始めたのが『JUNK HEAD』です(笑)。
――アニメ作りの基本を学ばれましたか?

堀 元々画家を目指していて、美術系の高校を出てアルバイトしながら絵を描いて、美術展に応募していました。でも、途中で絵に飽きて、彫刻やアクセサリー作ったり、飲食店や千葉のテーマパークで壁画を描いたり。基本的にそういうアートワークの仕事をずっとやっていて、40歳の手前ぐらいになってもそういう生活だったんです。でも、他人のイメージをかたちにする、仕事を請け負うことだけを続けていると、やっぱり作家になりきれないなと思い、ここは一発なにかデカイことをして人生を変えなきゃという気持ちで作ったのが最初の30分版の『JUNK HEAD 1』です。その時は、コマ撮りアニメを教える教室に通ってみたりもしました。でも、3日ぐらいで大体わかったなと思って(笑)、あとはずっと独学ですね。
『JUNK HEAD』より『JUNK HEAD』©2021 MAGNET / YAMIKEN
『JUNK WORLD』 ©YAMIKEN
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