いま日本で見るべきストップモーション・アニメ作品 『JUNK WORLD』と『かたつむりのメモワール』
先達の作った映画からの影響
――監督が考える、ストップモーション・アニメの魅力や面白さは、どのあたりにありますか?

堀 SFという、通常の映画制作では何百億円もかかるような世界を、この予算感でもかなり伝えられる制作方法だということを発見したことです。それまで自分が見てきたコマ撮りのアニメ映画は、かわいい人形が動いている子供向け作品みたいなところがあったのですが、こだわりを持ったSF好きの大人でも楽しめる世界観を作れることがわかったというのが、大きかったです。
――メイキングを見ると、ストップモーションだけではなく、モーションコントロールや単に人形を動かすといったさまざまな手法が使われていますね。
堀 実写のように撮りたいというのがまず大前提にあったので、実写映画のメイキングばかり見ていたのですが、そのなかで「こう撮るんだ」という発見がいくつもあって、それを単純に人形だから小さく撮ればいいじゃないかという発想でやっていました(笑)。
――実写映画で影響を受けた作品はなんでしょうか。
『JUNK HEAD』より堀 うーん……、ひとつ挙げるとしたら、『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)ですね。世界観と、あのなんというか、ゆるいお笑いのセンスには影響を受けました。
――『スター・ウォーズ』の最初のシリーズにも近いものも感じました。ストップモーション・アニメや、モーションコントロールカメラ、ミニチュアのセットなどやれることを全部やっているところが堀さんの作品と共通しているなと。

堀 『スター・ウォーズ』では、フィル・ティペットさんがコマ撮りアニメをやっていましたよね。自分の目指していた方向も、フィル・ティペットさんがやられていたコマ撮りの手法だったので、近いものを感じています。でも、ティペットさんが『ジュラシック・パーク』でコマ撮りが終わったみたいなことを言っていて、ティペットさんが頑張ってやっていればもっとすごいものが確立できたはずなのに、なぜ諦めちゃったんだろうなとも思いました。そこは残念でしたね。
――監督が映画にのめり込むきっかけはなんだったのでしょうか。
堀 近所に信号もないような田舎で生まれ育ちました。その後、大分市内の芸術系の高校に進学したことで、その時期に初めて映画を見るという遅いスタートでしたね。そこからの熱量がすごかった。そのころに、初めてアルバイトをして買ったのが、ビデオデッキだったんです。それから毎日ビデオ屋に行って借りて。それを繰り返していたら、映画の世界のほうが楽しくなって。現実逃避かもしれないですけど、見たことのないものが見られるっていう楽しさがありました。そのころはまだ、インターネットもなく、知らない世界が見られるのは自分にとって映画だけだった。なので、そこにこだわり続けているところはありますね。
――若いころにインドを放浪されていたそうですが、そういった体験や、仕事として内装業をやられていたことなども、作品の内容に反映されているでしょうか。
『JUNK HEAD』より堀 ものを作るって、自分のなかにある素材でしかできない。インド旅行をしたときも、見るも無残な光景が日常の風景でしたから、そういうものの影響はありますし、40歳近くまでいろんなところで仕事をしたおかげで、ちょっとだけ人と違った映画ができた。映画の学校に行って助監督になってみたいな、真っ当なルートで生きていたら、この作品はなかっただろうと思います。
――紆余曲折があったと思いますが、『JUNK HEAD』劇場公開までの中で、一番うれしかったことと、一番しんどかったことはなんでしょうか。

堀 しんどかったのは、公開するまで本当に受けるかどうかわからないオリジナルの作品を何年も作り続けたことです。うれしかったことは、とりあえずその日にワンシーンでもできれば当然うれしいという気持ちがあって、それが積み重なって、最後に映画が公開されて評価されたときは、やっぱり認められたっていう気持ちになりました。同時に、また次が作れる、続けられるっていう意味でもうれしかった。自分は、この映画をホラーやゾンビなど、一部の物好きしか見ないようなジャンルの映画、それに準ずるものだと思って作りました。ところが、いざ公開してみると、女性ファンがたくさんついた。そんな時代なの? みたいな感じでした。それが一番びっくりしたことでしたね。
――女性ファンは、作品のどのあたりに魅力を感じたのでしょうね。
『JUNK WORLD』より堀 キャラがかわいいといわれたことがあって、キモカワとかそういうジャンルがいつの間にか世の中にできて、自分が作業をしている間に浸透してきたのかもしれないですが、よくわからないです(笑)。
『JUNK HEAD』©2021 MAGNET / YAMIKEN
『JUNK WORLD』 ©YAMIKEN
次ページ▶ 作品を作り続けていくために
