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いま日本で見るべきストップモーション・アニメ作品 『JUNK WORLD』と『かたつむりのメモワール』

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苦難の果てにある奇跡『かたつむりのメモワール』

 

オーストラリア出身のアーティストでありアニメーターでもある、アダム・エリオット監督によるストップモーション・アニメ映画『かたつむりのメモワール』が、劇場公開された。前作『メアリー&マックス』(2009)から、15年ぶりの新作である。ここでは、『かたつむりのメモワール』について解説する。

物語の主人公は、オーストラリアに住む仲のよい双子の姉弟グレースとギルバート。父親が突然亡くなり、孤児となったふたりは、それぞれ別の里親に引き取られることに。しかし、どちらの里親もロクなものではなく、グレースはどんどん孤独になり、ギルバートも家族のなかで孤立していく。これ以上あらすじの詳細は書かないが、不幸な境遇のなかで、不運なことや不快なことが起き、そこに小さな希望が生まれるものの、その希望が打ち砕かれる物語である。いったいどうなってしまうのかとハラハラしながら見ていると、最後の最後に驚くべき展開が訪れる。アダム・エリオット監督の前作『メアリー&マックス』(2009)を見た方であれば、最後のシーンを覚えていると思うが、それともまた違ったカタルシスあふれる展開だ。

本作は、エリオット監督とスタッフたちが、約8年の歳月をかけて、1秒24コマ×60秒×94分≒約13万5000コマを、1コマずつ作り上げた作品。すべてが手作りの人形と舞台セットであり、CGは一切使われていない。エフェクトの描写についても、火事の火はセロファンを使い、タバコの煙は綿、涙はローションを使うなど、手作業で作られている。

初見では物語の展開に圧倒されるかもしれないが、人形たちの繊細な演技(白眼の大きいキャラクターの目に涙があふれるカットなど)や、かたつむりのオブジェだらけのグレースの部屋などの、セットデザインにも注目してもらいたい。

本作は第97回アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた。最終的に賞を受賞したのは、本サイトでも以前に紹介した、ラトビアのギンツ・ジルバロディス監督作の『FLOW』(2024)。両作とも、監督を中心に少人数で制作されたインディペンデント作品であり、どちらも甲乙付けがたい傑作である。

アダム・エリオット

アダム・エリオット

1972年生まれ。オーストラリアのメルボルンを拠点に活動するアニメーター、ビジュアル・アーティスト。ストップモーション・アニメ作品の短編『アンクル』(1995)、『カズン』(1998)、『ブラザー』(1999)を制作後、『ハーヴィー・クランペット』(2004)でアカデミー賞の短編アニメーション賞を受賞。初の長編作品『メアリー&マックス』(2009)は、アヌシー国際アニメーション映画祭でクリスタル賞(最高賞)を受賞。15年ぶりとなる新作『かたつむりのメモワール』(2024)は、アカデミー賞長編アニメーション部門ノミネートのほか、アヌシー国際アニメーション映画祭でクリスタル賞を再び受賞した。

『かたつむりのメモワール』

『JUNK WORLD』

6月27日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿 ほか全国順次公開

 

監督・脚本:アダム・エリオット
製作:リズ・カーニー、アダム・エリオット
製作総指揮:ロバート・コノリー、ロバート・パターソン
音楽:エレナ・カッツ=チェルニン
演奏:オーストラリア室内管弦楽団
撮影監督:ジェラルド・トンプソン
編集:ビル・マーフィー
アニメーター:ジョン・ルイス、クレイグ・ロス、ピアス・デイヴィソン、シェイマス・スペルスベリー、ドナ・イェートマン、サミュエル・ルイス、ネルソン・ディーン
音響デザイン:デイヴィッド・ウィリアムズ
原題:Memoir of a Snail
日本語字幕:額賀深雪
配給:トランスフォーマー

 

[キャスト]
グレース・パデル:サラ・スヌーク
ピンキー:ジャッキー・ウィーバー
ギルバート・パデル:コディ・スミット=マクフィー
パーシー・パデル(父):ドミニク・ピノン
ジェームズ判事:エリック・バナ
ルース:マグダ・ズバンスキー
ケン:トニー・アームストロング
ビル(ピンキーの夫):ニック・ケイヴ

 

公式サイト:https://transformer.co.jp/m/katatsumuri/

 

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「いま日本で見るべき、ストップモーション・アニメ作品
『JUNK WORLD』と『かたつむりのメモワール』」


■インタビュー:齊藤睦志 ヤマモトカズヒロ

■取材・構成・TEXT:齊藤睦志

■写真撮影:諸星和明

■映像撮影:尾崎健史

■映像編集:創太

■記事編集:ウォーターマーク(尾崎健史・諸星和明・池田倫夫)

■プロデュース:ライトスタッフ(山本和宏・岩澤尚子・緒方透子)

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