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【ネタバレ注意】劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』公開記念! 脚本家・大倉崇裕が描く『名探偵コナン』の世界

劇場版シリーズ第29作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』が4月10日(金)より絶賛上映中。コナンと神奈川県警の白バイ隊員・萩原千速が、正体不明の黒い暴走バイクの謎に迫る。
本作の脚本を手がけたのは、数々の著作が映像化されているミステリー作家の大倉崇裕。2017年公開の劇場版『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』以降、劇場版の脚本でおなじみとなった大倉氏に最新作はもちろん、これまで脚本を担当した劇場版&TVアニメオリジナル全エピソードについて話を聞いた。

 

※本記事には作品のネタバレを含みます。

Index

最新作・劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』
脚本・大倉崇裕氏 インタビュー

見せたかったのは千速の影の部分

――自身5作目となる劇場版の脚本ですが、依頼を受けたときのお気持ちを教えてください。

大倉崇裕(以下、大倉)  2024年公開の劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の仕事が終わったあと、「つぎは千速でいきたい」とオファーをいただきました。正直なところ「千速!?」という気持ちでした。いままでは、平次や怪盗キッドなど、設定がほぼできあがっているキャラクターが多かったんですが、千速は当時まだ単行本でも登場したエピソードがふたつくらいしかなかったので、どうしたものかな……と思いました。

――千速の印象について教えてください。劇場版初登場の彼女を描くにあたってどんなことを意識されましたか?

大倉  お話をいただいて、すぐに原作を読み返したんですが、千速のプライベートな部分はまだ描かれていなかった。第一印象としては完全無欠で、女性版・安室透といった印象を受けました。ただ、打ち合わせをし、プロットを掘り下げていくうちに、実はそうでもないんじゃないかと感じるようになったんです。彼女は、弟・研二の殉職を経験したうえで警察官として生きているので、そんなにパーフェクトな強い人間でいられるはずもないだろうと。そこで、まだ原作でクローズアップされていなかった影の部分を盛りこもうと意識しました。

――コナンの正体を知らない千速は、子どもにしては賢すぎる彼を怪しむこともなく、弟の仇をとってくれたコナンを最初から信頼しているという独特な立ち位置のキャラクターです。ふたりの信頼関係についての印象はいかがですか。

大倉  不思議な関係ですが、その信頼こそが一番千速らしさが見える部分です。コナンの正体を知らないのに全面的に信頼して、ああいう形で結びついているキャラは『名探偵コナン』の世界でも少ないので、なるべく活かしたいと思いました。千速がコナンを「少年」と呼ぶのは、すごくいい。肩書きや正体を気にしない千速のコナンへの信頼が、その呼び方に表れている。脚本でも「少年」という呼びかけはあまり多用せず、大事なキーワードとしてここぞというところで使いたいと考えました。

――バイクに興味を持つなど、蘭が千速に憧れている描写がありますが、蘭は千速をどう見ているとお考えですか。

大倉  千速を「風の女神様」と形容するくらいの、天使の羽が見えるような出会い方をして、大人の女性のかっこよさにふれたんだと思います。でも直接「きゃー! かっこよかったです!」とはいけなくて、憧れを抱いて自分もああなりたいと感じたんじゃないかなと。

蘭の千速への憧れについては気になったので、バイクに乗りたい蘭の動機づけみたいな面を当初はもっと強く出していて、バイクに乗ってみたくて、いろいろやるけれど周囲に「危ないからやめておけ」と止められるシーンも考えていました(笑)。

――脚本を担当された2022年公開の劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』にも、萩原研二と松田陣平が登場しました。ふたりの印象が変わった部分はありますか?

大倉  ここまで仲がよかったというのは、ちょっと驚きました(笑)。『ハロウィンの花嫁』では、警察学校組が活躍しますが、萩原は一番早く亡くなっているので出番が少なかった。ラストシーンで印象は強くなりましたけど。だから補完したいというか、そのぶん萩原の出番を作りたいなと思ったんです。そうすると自然に松田も登場させたいとなって。それに千速を描くなら弟の存在が大きいので、ふたりの関係性を描きたいと最初のプロットで提案したら、「いいんじゃないの」となりました。

 

自分からいい出したものの、まだ明かされていないプライベートな設定が多いので、まず青山先生に「萩原はどんなところに住んでるんですか?」と質問するところからはじまったんですよ。「普段の千速と研二は、なにを話してるんですかね?」となり「青山先生、考えてください」とお願いしました(笑)。あの回想シーンはほとんど青山先生にセリフを考えていただいたんですけど、それを見ながら書くのは楽しかったですね。

――千速に想いをよせる横溝重悟の印象はいかがですか?

大倉  千速とのコンビとしては日が浅いので、彼女が登場する以前の堅物で有能な刑事というイメージが最初は強かった。でもいざ千速とコンビを組ませると、また違った面を見せてくれるんです。初号試写(完成直後に関係者向けに行う最初の試写)を見たときに、今回のMVPは重悟じゃないかと思ったくらい、すごくいいキャラクターで。実は私が本作で一番好きなのが重悟なんです。

今後、千速とどうなるかはまだわかりませんが、書いていると自然にいい雰囲気になっていくふたりなので、いいカップルになりそうだな、うまくいってほしいなという個人的な願望があります。

――世良真純は、劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』以来、大倉さん担当作品では初登場です。登場が決まった経緯を教えてください。

大倉  最初の段階で、千速が出るならバイクがメインの話がいいから、バイクアクションをやろうと、とんとん拍子で決まりました。そこでバイクに乗っているキャラクターはほかに誰がいると考えて、「世良ちゃんだね」と。平次もいるんですけど『100万ドルの五稜星』に出たばかりなので。登場することは早くに決まったものの、プロット段階で世良をどう絡めるかはあまり決まっていませんでした。

――初期段階では、どんな内容だったのでしょうか?

大倉  私のプロットは、ミステリー面が濃いこともあって、重悟との恋愛要素などのポップな感じは入っていない、もっとシリアスな雰囲気でした。最新鋭の白バイ・エンジェルと暴走する黒いバイク・ルシファーの開発関連のごたごたを描いた、兵器開発をめぐるスパイ戦がメインだったので、世良が入りこむ余地がなかったんです。世良は、とくに扱いが難しいキャラクターで、彼女をどう出すかが今回の脚本で一番大変なところでした。世良と千速が一緒になにかをするって、考えにくいじゃないですか。いろいろ考えた結果、世良は世良で事件を追っていればいいんだと。最近は、赤井家の一員という印象が強いですが、女子高生探偵としての世良を描こうと思って、現在の脚本のかたちになりました。

――宮本由美と三池苗子が、ラブコメ担当ではなく、警視庁代表のような立ち位置で登場したのも印象的でした。

大倉  千速がメインキャラクターなので、舞台は神奈川だと決まっていたんですが、バイクアクションを見せるために長い距離を使いたくて。それで東京でも事件を起こして警視庁も巻きこみたいと思い、ルシファーが都内でも暴れることにしました。最初は高木と佐藤の予定だったんですけど、途中で「これをやるのは交通課じゃない?」と変更して、事後承諾でOKをもらいました。

 

苗子は、高いドライビングテクニックを持っている設定もあったので、それを活かさない手はないと思って、いざ書いてみたら予想以上にいい感じに動いてくれまして。予告にも使われたふたりの「もちろん!」というシーンが一番好きですね。あそこはいいよなと自画自賛しています(笑)。

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