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【ネタバレ注意】『新幹線大爆破』を熱烈リブート!監督・樋口真嗣の仕事

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原作『新幹線大爆破』とは……

1975年公開の原作『新幹線大爆破』は、東海道新幹線の下り列車を舞台に、「走行速度が一定値より低下すると爆弾が爆発する」という、秀逸なアイディアを軸に疾走するサスペンス大作。東映スターの高倉健や千葉真一、北大路欣也らのほか、宇津井健、丹波哲郎、志村喬など、各社から人気俳優が集結。オールスターキャストによる日本のパニック映画の草分けである。
1970年代のアメリカでは、オールスターキャストによる『大空港』(1970)、『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)、『タワーリング・インフェルノ』(1974)といったパニック映画が続けざまに製作され、世界中でヒットを記録。1974年、東映の岡田茂社長は、同様のパニック映画の製作を東映東京撮影所に指示する。
キャストは菅原文太、梅宮辰夫、千葉真一が出演するとの方針だったが、主人公役の菅原が難色を示したため、脚本に強く興味を示していた高倉健に決定。当初、犯人役はシンプルな犯罪者の設定だったが、高倉の登板を受けて、細かい人間像が書き足されたという。高度経済成長期の競争社会に負け、体制に反撃を試みようとするアンチヒーローを演じた高倉は、本作以降幅広い役柄をこなすようになったのは周知の通りだ。
懸念材料は、物語の舞台となる東海道新幹線を所有する国鉄が、本作への撮影協力を断ったことだった。国鉄としては、新幹線爆破の脅迫が月に20〜30件もあり、それが増加して社会不安をもたらすことを懸念したのだ。「走行速度・時速80キロで爆発する爆弾」の設定を考案した佐藤純彌監督は、後のインタビューで「当時のセキュリティでは、計画を実行することが可能だったから国鉄が嫌がったのではないか」と述べている。
そのため新幹線の登場シーンのほとんどは、初期ウルトラシリーズの美術を手掛けた成田亨による特撮で撮影されることに。新幹線のミニチュアは、1両1メートルのサイズ(約1/25のスケール)で、12両編成を2セット製作し、30度の傾斜をつけた長大なオープンセット上を走らせて撮影した。当時、これほど大型のミニチュアを使った撮影は類がなく、続いて大規模なミニチュア撮影を行うのが、今回のリブート版『新幹線大爆破』(ミニチュアのスケールは1/6)だったのは興味深い。
ついに完成した『新幹線大爆破』だったが、1975年度キネマ旬報ベストテンでは読者選出第1位だったものの、配給収入では大苦戦を強いられる。一方、海外セールスのふたを開けてみると、全世界で15万ドル以上の輸出契約が結ばれ、ソビエトや東欧、アジア、アフリカではヒットを記録。特に大ヒットしたフランスでは、8週間のロングラン公開に。後に日本の娯楽映画の伝説的な代表作となる『新幹線大爆破』だが、予想外にも国内で苦戦し、海外で好評を博す出だしとなった。

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●イントロダクション

新幹線が爆破される!緻密な計算のもと、着々と計画を実行する犯人と捜査当局との対決、極限状態におかれた様々な人間模様がドラマチックに展開する戦慄の巨大パニック映画。
東映が総力を結集して挑んだ1975年公開の本作品は、爆破犯人役で新境地に挑んだ高倉健をはじめ、千葉真一、多岐川裕美、宇津井健ら豪華キャストが集結。海外でも劇場公開されフランスで大ヒットし、アメリカ映画にも多大な影響を与えた、まさに日本映画史に名を残す傑作が、4Kネガスキャン2Kリマスターの高画質Blu-rayでよみがえる!

 

●ストーリー

9時48分、約1500人の乗客を乗せた新幹線ひかり109号博多行は、定刻どおり東京駅19番ホームを発車した。列車が相模原付近に差し掛かった頃、国鉄本社公安本部に、この109号に爆弾を仕掛けたという電話が入った。特殊発火装置を施した爆弾は、スピードが80km以下に減速すると自動的に爆発するという。止まることのできないひかり号は、東京から博多までの1100km超をノン・ストップで疾走する。緻密な計画のもと500万ドルを要求し着々と計画を実行する犯人・沖田と、捜査当局との息もつかせぬ駆け引き、そして運転司令室の頭脳操作……。逃げ場のない極限状態の中、犯行グループ、警察、国鉄職員、乗客、それぞれの人間模様がドラマチックに展開し、全国民が注目する中、列車は驀進する!

 

●キャスト

高倉健、千葉真一、山本圭、織田あきら、竜雷太、田中邦衛、郷鍈治、川地民夫、宇津宮雅代、藤田弓子、藤浩子、松平純子、多岐川裕美、志穂美悦子、志村喬、山内明、渡辺文雄、永井智雄、鈴木瑞穂、丹波哲郎、宇津井健

 

●スタッフ

原案:加藤阿礼
企画:天尾完次、坂上 順
脚本:小野竜之助、佐藤純彌
撮影:飯村雅彦、山沢義一、清水政郎
音楽:青山八郎
監督:佐藤純彌

 

1975年7月公開
©東映

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