『新幹線変形ロボ シンカリオン』シリーズ 10周年プロジェクト 出発進行!
『シンカリオン』シリーズ CGメイキングを語る
第2部では、シリーズの初期からたずさわる「シンカリオンのなんでも屋」こと山野井が進行をつとめ、『新幹線変形ロボ シンカリオン』のCG制作を支えたスタッフ陣が制作資料とともに10年間を振り返った。

制作の舞台裏について、チーフプロデューサーの鈴木はこう語る。
「アニメを作る人は大体そうですが、『シンカリオン』シリーズの現場って特に熱い人ばかり。なかでも第1期のときは、”オリジナル”を作る作業が大変だったので、会議とか本当毎回喧嘩(笑)でしたね。もちろん、みんなが一生懸命熱くやってるからこそです」
『シンカリオン』シリーズのアニメーションにおいてCGが担う役割は大きい。ロボットはもちろん、新幹線をはじめとした鉄道車両、そして線路まで、多くの要素がCGで制作されている。イベント内では戦闘シーンのCGができあがるまでのメイキング映像が上映され、会場からは感嘆の声があがる。

①絵コンテ ②仮アニメーション ③エフェクト、仕上げ の順序。
CGアニメーターの滝田は、『シンカリオン』シリーズのCGアニメーションを担うSMDE(小学館ミュージック&デジタル エンタテイメント)社内で、唯一全シリーズにたずさわっているスタッフ。「必殺技のカットについては、SMDEからアイデアを提案することが多くありました。僕ら作り手は楽しかったんですけども、ある意味、責任も感じたところでした」という。アニメーターに演出指示を出していたCGディレクターの久能木は「『シンカリオン』シリーズは、アニメーター自身の”センス”や”見せたい表現”を積極的に提案できる場所だったと思います」と制作現場のオープンな雰囲気を懐かしんだ。
TVアニメ3シリーズの合計放送話数は、150話以上にも及ぶ。「なにせ3シリーズやってると、決めポーズだけで何個作った?みたいな状態になってくる。『これどっかで見たことあるぞ』とならないようにするにはどうしたらいいか、考えながら作っていました」と山野井。
『シンカリオン』CGアニメーション 10年間の変化
TVアニメ第2期の「変化」について、山野井は苦労をこう語る。「基本的な仕様はTVアニメ第1期と同じでしたが、在来線から変形した武装強化車両『ザイライナー』と合体するということは、イコール変形合体が1ロボット2種ずつあるということで、倍の量になっていくわけです。ロボットの数が減った気がするけど、合体変形が明らかに増えました」
ちなみに「なんでも屋」山野井は、ロケハンにほぼすべて参加していて『シンカリオンZ』では在来線がある以上、新幹線から乗り継いでいく必要がある場所が舞台になるため、ロケハンが大変だったそう。

そして最新シリーズ『シンカリオンCW』は、新幹線2両で変形していた前2作と異なり、「1両でロボットに変形する」という大きな変化があった。
久能木が語る。「2両でできていた重量感とか、そのデザインのよさっていうのがもうまったく違う1両でできるかっこいい表現モデルとなりました。また、いままでは車両同士の合体だったんですけど、『ビークル』という電車以外のものと合体させて表現しなければいけない部分が一番難しかったです」

続いて、変形カット4種類を同時に流して比較。「『新幹線の車両からロボに変形する』ということ自体は変化させられません。シリーズの変遷につれ、(変化をつけるため)背景の情報がどんどん増えていきました」と滝田。「『シンカリオンZ』の背景は、京都駅や車両整備工場などをモチーフとした、鉄骨を幾重にも積み重ねたデザイン。鉄骨の形が『Z』に見えるところもポイントです。『シンカリオンCW』では、作品に『メタバース』というテーマがあったので、電車・新幹線でありながら『デジタルっぽさ』を取り入れています」


最後に「今後やってみたい演出」について山野井が語った。
「捕縛フィールド外の戦闘シーンを描くため、東京上空にヘリコプターを飛ばして撮影した実写の映像を、最終的にCGと合成しています。この映像を制作した当時(2019年)は、実写映像が手描きの背景のようにならないのが問題点でした。今後AIの技術が発展すれば質感がより近づいた映像が制作できるはず。今後こういったAIの活用も、挑戦していきたいと考えています」

イベントの終わりには『シンカリオンCW』スタッフによるトークショー「ERDAのないしょ話vol.3」、そしてTVアニメ第1期・第2期のスタッフトークショー「超進化研究所のないしょ話」の開催決定が告知されると、会場からは盛大な拍手が。
――シンカリオンはまだまだ止まらない! とばかりに、未来に期待がふくらむイベントとなった。
©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS
©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所Z・TX
©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/ERDA・TX
「『新幹線変形ロボ シンカリオン』シリーズ 10周年プロジェクト 出発進行!」
■インタビュー:タカラトミー 横山拓也、
ジェイアール東日本企画 鈴木寿広、
小学館集英社プロダクション 根岸智也
■取材・画像協力:ジェイアール東日本企画
■取材・構成・TEXT:緒方透子
■写真撮影:諸星和明
■記事編集:ウォーターマーク(尾崎健史・諸星和明・池田倫夫)
■プロデュース:ライトスタッフ(山本和宏・岩澤尚子・緒方透子)