『ウイングマン』実体化! 監督:坂本浩一の仕事
Index
キャスティング・撮影・ポストプロダクション
~1人監督体制・全10話同時制作でスケジュールを圧縮~
![](/wp-content/uploads/2024/12/feature2412_01_img12.jpg)
© 桂正和/集英社・「ウイングマン」製作委員会
――広野健太役・藤岡真威人さんについてお聞かせください。
坂本 主役である健太に、様々な候補が上がった中で、プロデューサーの山田さんから「藤岡真威人くんは、どうでしょうか」という提案がありました。自分も真威人くんのことは作品を通して知っていたので、ぜひお会いしたいですという話をしました。実際会ってみると、自分が持っていた印象以上に純粋で熱い子でした。やはり健太を演じる上で、ピュアで真っ直ぐな子が良いと思っていたので、真威人くんに会った時はビビッと来るくらい衝撃的でした。髪型含めて、まさに健太がそこにいましたね(笑)。
真威人くんも、しっかりと作品の勉強をしてきてくれて、父親である藤岡弘、さんの血筋を感じました。
![](/wp-content/uploads/2024/12/feature2412_01_img13.jpg)
© 桂正和/集英社・「ウイングマン」製作委員会
――アオイ役・加藤小夏さんはいかがですか。
坂本 アオイ役に関してはオーディションでした。難しい役どころですし、原作のアオイのファンが多く、ビジュアルのイメージも強いキャラです。桂先生立会いのもと、様々な役者さんたちにオーディションに参加していただき決めました。桂先生は、実写版のアオイでは、背負う物の深刻さを強調したいという強い考えがあり、それを前面に出すことにより、物語によりリアリティを出したいとのことでした。もちろん学園コメディや恋愛要素は必須ですが、故郷が占拠され、父が捕虜となり行方も分からない状況というのは常に意識して欲しいと。
――加藤さんは以前、桂先生原作のドラマ『I”s』にも出演されていますね。
坂本 加藤さんだったら、アオイに関して求めているお芝居ができるということはオーディションですぐに分かりましたし、ルックスに関しても、先生が思い描いているアオイのイメージに近いことは凄く感じました。それらを含めて、満場一致で、加藤さんがアオイに選ばれました。
![](/wp-content/uploads/2024/12/feature2412_01_img14.jpg)
© 桂正和/集英社・「ウイングマン」製作委員会
――小川美紅役・菊地姫奈さんはいかがですか。
坂本 美紅ちゃんも難しい役で、原作だと当時の80年代アイドルの雰囲気がありますよね?でも、いまの役者さんでは、当時のアイドルっぽさを出すのは難しいことだと感じました。
ですからルックスを似せるというよりも、美紅ちゃんが持ってる芯の強さや意外と行動的な部分など、キャラを似せる方向でアプローチしてみました。菊地さんにオーディションでお会いしたときに、彼女の「美紅としてのお芝居の作り方」というのが、自分たちの中で一番響いたんです。
だんだんとキャスティング決まっていくと、パズルが組みあがって来ます。真威人くんがいて、加藤さんがいて、菊地さんがいる。この3人だったら面白くなる!と、見えてくる感じです。
このように次々とキャスティングを決めていきました。
![](/wp-content/uploads/2024/12/feature2412_01_img15.jpg)
© 桂正和/集英社・「ウイングマン」製作委員会
――宮野真守さんも重要な役どころです。
坂本 キータクラー(北倉)をキャスティングする時に、何かインパクトが欲しいと話し合っていました。北倉の状態での役者としてのお芝居と、キータクラーの状態での声優としてのお芝居のある難しい役です。宮野くんの名前をキャスティング候補のリストに見つけた時は、実現は難しいだろうと諦めていました。声優、役者、音楽アーティストなど、様々な分野で活躍する宮野くんは、なかなかスケジュールが抑えられません。宮野くんとは自分が日本に来て初めて監督した『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』という作品で、ウルトラマンゼロの声を演じていただいてから、かれこれ15年の付き合いです。なので、ダメもとでオファーしてみたんです。
そうしたら宮野くんは、自分の作品だけじゃなく、桂先生原作『ZETMAN』のアニメでもキャラクターを演じていたので、不思議な縁を感じて、ぜひやらせてくださいと返事をくれたんです。奇跡的にスケジュール調整が上手くいき、実現しました。
キータクラーは、宮野くんの声優としてのスキルが活きた素晴らしいキャラになったと思います。北倉とキータクラー、謎の戦士のお芝居の切り替えは圧巻でしたね。
――声優陣のお話もお聞かせください。
坂本 宮野くんが参加している以上、必然的に他の声優さんたちも同等のレベルで渡り合える人をキャスティングしないといけません。自分も特撮作品で著名な声優の方々とご一緒する機会が多いのですが、何故か自分の頭の中では、リメルの声は大塚明夫さんで再生されていました(笑)。
ザシーバの戸松遥さん、ラークの関智一さんも何度もご一緒したことのある信頼出来るメンバーです。
![](/wp-content/uploads/2024/12/feature2412_01_img16.jpg)
© 桂正和/集英社・「ウイングマン」製作委員会
――スーツアクターの橋渡竜馬さんはいかがですか。
坂本 橋渡はスーツアクターやアクション以外に、役者としても素晴らしいスキルを持っています。近年の自分の作品で彼の起用が多いのは、『グッドモーニング、眠れる獅子2』という自分の作品で、ちょっとした役をやらせた時に、この子は面白いと思ったのがきっかけです。以前から顔出しで役をやりたいと相談を受けていたので、役者としても成長してもらいたいと思い、経験を積ませて来ました。
『仮面ライダーガッチャード』では、変身前の役プラス、変身後の「仮面ライダーエターナル」役も実際スーツに入って演じてもらったのですが、お芝居とアクションもすばらしかったです。
「ウイングマン」では、変身してのお芝居も多いので、アクションだけじゃなく、お芝居のスキルが必要とされます。スーツも体にフィットしているので、スタイルがよくないとできないという条件もありました。その条件をすべて満たしていて、自信を持って役を任せられると思ったのが橋渡でした。
――撮影現場の様子もお聞かせください。
![](/wp-content/uploads/2024/12/feature2412_01_img08.jpg)
坂本 撮影は真夏だったので、とにかく暑くて大変でした。深夜枠のドラマなので、他の特撮作品に比べると残念ながら予算は潤沢ではありません。ですから撮影を効率よく行って、スケジュールを圧縮しながら予算の振りわけを検討しないといけません。
今作は、クランクインの時には全10話の脚本を全て上げていて、場所ごとにまとめ撮りをしています。たとえば、健太の家に3〜4日間通って、1話から10話分のすべての健太の家のシーンを撮ります。次に学校へ行き、学校のシーンを全話分撮るというスタイルです。そうすることにより、予算を圧縮し、その分を造形や合成に使う……という捻出方法です。
効率性を上げる分、毎日こなさなければならない撮影分量が増えるのですが、キャストやスタッフの負担を軽減するために、昔のように深夜までの撮影や徹夜作業などは出来ません。そのために信頼出来るスタッフで効率よく進める必要性がありました。
真夏の撮影で大変なのが、スーツアクターです。真夏はワンカットごとにスーツを脱いで呼吸を整えないと、倒れてしまうくらい暑いんです。1話の健太の部屋での撮影の時は、橋渡の足元に汗で水溜りが出来るほどでした。はじめてスーツアクターと一緒にお芝居をした加藤さんが驚いて「これ、なんの水ですか?」って聞いたぐらいです(笑)。
色々と苦労は多かったですが、何か凄い作品を作っている、新しいことをやっているという雰囲気は、現場のキャスト&スタッフ全員が感じていました。
――ポストプロダクション(実撮影後の制作工程)で、重視したところはありますか。
![](/wp-content/uploads/2024/12/feature2412_01_img09.jpg)
坂本 自分は編集のテンポを重視しています。元々活動していたアメリカは、ケーブルテレビが一般的で番組数が多いんです。なので、退屈な間を作るとチャンネルを変えられてしまうので、テンポよく見せてくださいと、よくプロデューサーが指示を出していました。
昔の邦画は、引きの画面が多くて、ゆっくり見せるという演出が多かったと思いますが、今の時代、作品を携帯で見たり、倍速で見たりするので、テンポよく進めないと、若い子たちを惹きつけておけないのでは?と感じます。
あとは、やはりVFXですね。よく見て頂くと、『ウイングマン』の合成カット数はそんなに多くないんです。ほかの特撮番組から比べると半分以下です。
通常特撮作品であれば、派手なエフェクトや効果で迫力を煽りますが、今作では壁が崩れたり、瓦礫が飛び散ったりなど、リアル寄りにこだわってみました。
次ページ▶ 映像が完成して