『ウイングマン』実体化! 監督:坂本浩一の仕事
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制作体制と世界観の構築
~リアルな日常世界をベースとする~
――準備から撮影まで、どれくらいの時間があったのでしょうか。
坂本 企画が決まって、最初の脚本の打ち合わせをしてから撮影開始まで3〜4ヶ月ぐらいしかありませんでした。通常特撮作品はもっと準備時間が必要なのですが、今作はテレビ東京の深夜枠での放送、DMM TVでの配信ドラマという立ち位置なので、準備から完成までをギュッと短縮しないと成り立ちませんでした。ただそれでも通常の恋愛ドラマなどよりは、準備や仕上げ期間を長く取っているので、特撮番組の制作に慣れていない方々には不思議な経験だったと思います。
撮影までの短い準備期間で頑張っていただいた造形部、編集作業から放送までの短い期間でVFXを間に合わせていただいた合成部、それ以外のパートにも、『ウイングマン』への愛と情熱が溢れていたので、全てをハイクオリティでクリア出来たんだと思います。
――今回の作品はどういうチームで制作されたんですか。
坂本 スタッフさんに関しては、自分の作品にいつも参加してくれるチームが担当しています。東映さんや円谷さんのテレビシリーズは、シリーズレギュラーのスタッフさんがいるので、自分が監督としてそのチームに参加する形ですが、それ以外の作品の場合、毎回集まってくれるフリーのスタッフさんがいるんです。
特撮作品でも配信スピンオフやVシネマ、劇場版などを自分のスタッフが参加することもありますが、それ以外の『破裏拳ポリマー』『赤×ピンク』などのKADOKAWA作品、『モブサイコ100』や『SEDAI WARS』などのドラマ作品もそうですが、基本的には「坂本組」といわれている同じスタッフが担当しています。
――制作がスタートしたとき、監督はどんな作品にしたいと考えられました?
坂本 原作が40年前の作品なので、自分たちみたいな50代のファンをはじめ、原作を知っている方々が見たときに楽しめる作品にしたいという思いが、まずありました。それから『ウイングマン』は知らないけど、いまの特撮が好きですという世代が見ても、「新鮮でおもしろいね!」といってもらえる作品にしたかったというのがあります。
またDMM TVやテレ東深夜枠は、一般のドラマよりエッジが効いた作品が多いので、そういうドラマを観て楽しんでいる方々にもアピールしたかったですね。なので、特撮作品を作るというよりは、エッジの効いた面白いドラマを作るという思いで始めて、そこに特撮が加わっていく方法を試みました。
――プロデューサーや脚本家チームと、特にお話されたことはありますか。
坂本 一番刺激的だったのが、今作の脚本家チームは通常のドラマなどをメインに活躍されている方々で、特撮やアニメ畑の方々ではなかったことです。なので、彼らから出るアイデアは新鮮で、色々と勉強させていただきました。まず、ドラマ自体を特撮ではマストな、怪人や敵組織などがありきの世界観ではなく、それらが異質なものとなるような、ごく普通な世界観を作るということです。たとえば、実際今の時代に、コスプレやヒーロー好きな高校生がいたら、学校ではどんな存在になるのか?どんな会話をするのか?から始めて、健太の位置づけとか、他のキャラに関しても通常のドラマとして構成して、そこに異質であるアオイが来たらどうなるのか?というアプローチです。
――『ウイングマン』のアクション演出で、特に気をつけた部分はありますか。
坂本 まず、変身する健太がヒーローオタクという発想から始めました。名乗りをちゃんとやったり、技の名前を叫んだりとか、80年代の特撮のような熱い部分を大切にしたいと思いました。昔の戦隊の「行くぞ!」「おう!」のノリですね(笑)。健太は80年代の特撮(特に『ギャバン』)が特に好きな傾向があるので、ウイングマンでは、ポージングや技名シャウトは守りたかったですね。
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