『機動警察パトレイバー EZY』File 2公開! プロデューサー・真木太郎と脚本・伊藤和典が語る『パトレイバー』の現在・過去・未来
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鋭利な刃物のような指揮官が路地裏の寿司屋に?
そのギャップが愛おしいスピンオフ小説
小説「『機動警察パトレイバー』寿司屋の後藤」
ギャップこそ後藤の魅力だった。
かつて東京湾の大規模埋め立て計画が起こり、大型の作業機械が大量に必要とされるなか、汎用人間型作業機械・レイバーが激増。これにともない、レイバーを使った犯罪もまた急増した。警視庁は、これに対抗するため警備部内にレイバー使ってレイバー犯罪に対処する特殊車両二課を創設。通称・特車二課パトロールレイバー中隊、通称“パトレイバー”が誕生した――。これが『機動警察パトレイバー』の世界である。
そして、そのパトロールレイバー中隊=特殊車両二課の第二小隊隊長として数々の事件や騒動の対処にあたったのが、後藤喜一だ。
後藤は、「喰えない切れ者」として描かれた。普段は昼行燈を決め込み、ぼんやりと若い隊員たちを泳がせているかに見える。だが、いったんコトあらば、「カミソリ後藤」と評された判断力と統率力を振るい鮮やかな指揮で事件を解決に導く。
この普段のトロンとした様子と、重大事発生時における鋭利な指揮官ぶりのギャップに、観客はしびれた。
このギャップこそ後藤の魅力であったのだった。
だから、この小説に描かれた30年後の後藤の姿には強烈な説得力がある。
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熱海の路地の先にある小さな寿司屋。
駅近くの場所とはいえ、かなりわかりにくい。目印となる店の看板はない。
――店主は半眼に閉じたような眠たげな目を向けた。70を少しすぎたくらいだろうか。ふんだんにある頭髪は見事に白く、やや猫背で威勢のよさは微塵もない。
(第一話「店の名は」より抜粋)
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小説「『機動警察パトレイバー』寿司屋の後藤」は、こんな風に始まる。
著者の伊藤和典氏は、『機動警察パトレイバー』の企画・原作集団「HEADGEAR」のひとりで、初期OVA、劇場版、TVシリーズ、新OVAの各作品・シリーズにおいてシリーズ構成・脚本を務めた人物。
キャラクターを熟知しきっている。
数々の事件の日々から30年。「カミソリ後藤」の異名を持つ切れ者指揮官が、いまはひっそりと熱海の路地裏で寿司を握っている。数人の常連客に囲まれながら。
このギャップがいい。
「なにがあったんだ?」と思わず物語にひきこまれる。
全14章から構成された本作は、基本的には主舞台である「寿司屋の後藤」店内とわずかな店の周囲しか登場しない。ワンセット物の舞台劇の連作を見ているようだ。
いつもの店内、いつものカウンター、いつもの常連役、そしてカウンターの奥に店主の後藤。
世界から切り離されたような、他愛もない日々が続いていくように見える。それはそれで、とても居心地のいい空間だ。その空間を、常連客のひとりとなってずっと味わっていたい気持ちになる。
だが、そこに。
やってくるのだ。
後藤の過去につながるヤツらが。
篠原遊馬が。太田功が。泉野明が。香貫花クランシーが。進士幹泰と山崎ひろみが。
そして……。
ヤツらは「あの時」と「あれから」を語って去っていく。
そこには、いかにもヤツららしいドラマがあった。
「ああ、ヤツは、こう生きているのか」
それが確かな存在感という重みをもってしっかりと伝わってくる。
そう思えるのは、ヤツらを熟知した伊藤氏の「ヤツらへの愛」が込められているからだろう。
「だって、キャラクターには幸せになってもらいたいじゃないですか」
インタビューでの伊藤氏の言葉だ。
短い文体ながら、きわめて映像的な表現でテンポよく物語が語られていく。
しかし時折、静謐な緊張感が張り詰める瞬間もある。
泉野明。
第二小隊のパトレイバー1号機に搭乗して活躍した、元気に満ちた明るい少女。
彼女があれからの歩みのなかで感じた深い絶望と、その底に差した仄かな光明についての物語は、長年のファンであればあるほど、その愛しさに涙を禁じ得ないだろう。
そう、これら珠玉のエピソードは、長年この世界を愛し続けてきたファンにとって、ようやく知りえた長年の友の消息であり、同時に、「最後の便り」であるように思える。
おそらく、であるが、伊藤和典氏が、遊馬や野明の「さらにそれからについて」描くことはないように思われる。それほど、圧倒的な存在感をもってヤツらの人生が描かれている。
しかし、ヤツらは生きている。生き続けている。 「幕の向こう側かもしれないが」と伊藤氏は語った。
TEXT:ヤマモトカズヒロ

『機動警察パトレイバー』 寿司屋の後藤
著者:伊藤和典
発売日:2026年6月25日
定価・価格:紙版・1980円(税込) 電子版・1900円(税込)
出版社:株式会社文藝春秋
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