『機動警察パトレイバー EZY』File 2公開! プロデューサー・真木太郎と脚本・伊藤和典が語る『パトレイバー』の現在・過去・未来
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作品自体もビジネス的にもおもしろかった『アーリーデイズ』
――『アーリーデイズ』と『機動警察パトレイバー 劇場版』(1989)に東北新社のプロデューサーとして参加されていました。最初に『パトレイバー』という企画を聞いた当時の感想を教えてください。
真木 単純に「これはおもしろい」と思いましたよ。押井さんのファンだったしね。もっとも当時は、いまと違ってアニメーションの数が少なかったこともあります。でも際立った企画だと感じたし、当時9800円くらいの価格設定だったOVAを、4800円で売ることもおもしろいと思った。作品自体のおもしろさと、ビジネスとしてチャレンジするおもしろさの両方があったんです。
――真木さんが東北新社時代に関わったのは『機動警察パトレイバー 劇場版』までです。

真木 『アーリーデイズ』の押井さんが監督した6本が当たって、追加で吉永尚之さんが監督の7本目(「特車隊 北へ」)を作った。次はどうするかという話になって、僕は映画をやりたいと思ったけど、バンダイのプロデューサーだった鵜之澤(伸)は「まだ映画は早い。テレビだ」といった。意見が違うと、異なるアクセルを踏むことになるわけじゃないですか。方向性が違ったことが、僕がそれ以降のシリーズに関わらなかった原因のひとつになっています。ただ、何十年も前のことだから諸説あるんですよ。みんな自分の記憶こそ正しいと思ってるから(笑)。
――制作に関わったエピソードで、お気に入りのものを教えてください。
真木 やっぱり『アーリーデイズ』の5、6話(「二課の一番長い日(前編)・(後編)」)でしょう。続きものの話で、あのノリが映画の第1作につながっていくわけです。「5、6話のハードな雰囲気を拡大して、お金をかけて劇場版が作られたら……」というのは誰もが考えると思うし、それが実現できたというのがね。見ているファンの満足度も高かっただろうし、気持ちが共有できたと思う。ああいう仕事が好きだね。
――真木さんにとって『パトレイバー』とはどんな存在でしょうか。
真木 「長生きの秘訣」。僕もHEADGEARもこの業界に長くお世話になりましたけど、これからも新しい『パトレイバー』を作るというエナジーに生かされている。そう考えたら、僕らにとっては長生きの秘訣なんです。
クリエイターごとに異なる『パトレイバー』が生まれる
――脚本の伊藤(和典)さんによる書籍「『機動警察パトレイバー』寿司屋の後藤」が6月25日に発売されました。2020年にスタートした会員制ファンサイト「特車二課・分室」で連載された小説ですが、『EZY』の脚本とどちらが先に書かれたんでしょう?

真木 『EZY』の脚本が、かなり先ですね。2030年代が舞台の『パトレイバー』を作ろうという最初の会議の時点で、キャラクターが変わるという話は出ていた。飲みながら、みんなで「後藤は(『EZY』の時代に)なにをしてるんだろうね」という話をしたんですよ。一番わかりやすいのはフィリップ・マーロウ(レイモンド・チャンドラーの小説に登場する探偵)みたいな私立探偵かなと話したりして。その時はただの雑談でした。
しばらくして、後藤が主役になるスピンオフの連載をはじめるときに、伊藤さんが出したアイディアが「寿司屋」。当時、伊藤さんが住んでいた熱海に民家を改装したバーみたいなお店があって、そこで後藤が寿司を握っている設定です。出渕さんは最初「寿司屋なの?」というリアクションだったけど、「伊藤さんがやるならいいや」って。『EZY』の脚本ができてから、映像が完成する間に『寿司屋の後藤』が書かれました。地続きになっている『EZY』を見てから、この本を読むと本当におもしろいんですよ。
一方で、ゆうきさんが描いた新作『機動警察パトレイバー2026』(5月18日発売の週刊ビッグコミックスピリッツ25号に掲載)の後藤は、たぶん寿司屋はやってないよね。あれは“ゆうきさんの後藤”だから。混乱するファンがいるかもしれないけど、HEADGEARのメンバーそれぞれが考える後藤がいて、ほかの人が違う職業の後藤を描くのもあり。これも『パトレイバー』の特徴のひとつです。
――OVAとテレビアニメ版で設定が違いましたし、ゆうきさんの漫画もパラレル設定ということですね。

真木 『EZY』でメインとなるキャラクターが変わったことで、パラレル度がさらに拡大しました。でも『File 1』には、太田や進士などのキャラクターも出ていたわけで。それはファンサービスでもあるし、かつて特車二課にいた人もそこに生きているというリアリティの表現でもある。
――今後の『パトレイバー』について考えていることを教えてください。
真木 プロデューサーである僕の次のミッションは、新しいファンがついてくるような『パトレイバー』を作ること。新しいクリエイターによる作品ですね。
それは、例えばフランス版の『パトレイバー』。警視庁ではなく、フランス市警が活躍します。きっかけは『EZY』でキャラクターが変わったことで「東京のお巡りさんじゃなくていいんだ」と気づいたことです。最初に話した伊藤さんは、最初はキョトンとしていたけど、「ローカライズなんだよ」と説明したら「なるほどね。いいよ」といってくれましたね。
真木 太郎(まき たろう)
企画プロデュース会社ジェンコ代表。
手掛けた作品に、『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『この世界の片隅に』『PLUTO』『機動警察パトレイバー』などがある。
VECTOR youtubeでも動画版インタビューを公開中!
■『機動警察パトレイバー EZY』プロデューサー・真木太郎氏 インタビュー
