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貴重な資料で、アニメの制作の過程や歴史を振り返る特別展「練馬とアニメーション アニメ製作のいまむかし」

練馬区の「石神井公園ふるさと文化館」では、2025年8月11日(月・祝)まで特別展「練馬とアニメーション アニメ製作のいまむかし」を開催中。日本アニメーション発祥の地のひとつである練馬区ならではの貴重な資料を中心に、作品が完成するまでの過程をたどりながら、アニメ製作の魅力を紹介している。

貴重な展示資料で、アニメ制作の魅力を多角的に紹介

練馬区は、日本初の劇場用長編カラーアニメ『白蛇伝』を製作した東映動画(現:東映アニメーション)があり、日本初の30分枠連続TVアニメ『鉄腕アトム』を制作した虫プロダクションがある、日本のアニメーション発祥の地。現在も区内に所在するアニメーション産業に関わる会社数は約100社を超え、練馬区を代表する産業になっている。

「石神井公園ふるさと文化館」では、アニメーション製作にかかわる貴重な資料を所蔵していて、本展でも数々の名作アニメの脚本や絵コンテ、セル画などの貴重な資料に加え、撮影用カメラや特殊効果の演出用小道具などの機材類を展示している。
会場は4つのコーナーに区分されている。「その1 練馬とアニメーション」では、練馬区とアニメ産業のかかわりを紹介。2020年のデータでは、日本には811社のアニメ制作会社が存在。その大半は東京都にあり、練馬区には103社が所在するという。そうしたデータや年表で、産業としてのアニメの歴史が俯瞰できる。

「その2 アニメーションはこうして作られた」では、貴重な資料を展示し、アニメ作りの裏側を解説。

展示されているのは、アニメーション製作の工程がわかる、さまざまな中間製作物だ。作品の骨子となる企画書や脚本などの文字資料。キャラクターの設定画、アニメーションの設計図である絵コンテやレイアウトといった絵作りの基礎資料。キャラの動きを描く原画や動画、撮影のために動画を透明なトリアセチルセルロースのシートに複写し、着彩したセル画。キャラクターの背景となる背景画などを、ずらりと展示。いずれも、各時代で使われた実際の製作物だ。なかには当時、絵本やパンフレットなどで使用するためだけに製作された、セル画と背景画がセットになった「スチール」といった珍しい資料も。

  • 『一休さん』スチール 昭和50~57(1975~1982)年 テレビ放映 館蔵 ©東映アニメーション
  • 『燃えろアーサー 白馬の王子』製本台本 昭和55(1980)年 テレビ放映 館蔵 ©東映アニメーション

アニメ業界でセル画が使われなくなって久しいが、このコーナーでは東映動画が初製作したTVアニメ『狼少年ケン』(1963)で使用された、アニメーターが手作業で輪郭をトレースし、手塗りで彩色していた時代の文化財的セル画も展示。セル画の彩色は裏側から行っていたが、展示でもセル画裏面を見られる。

また『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』(1979〜1980)の「未彩色のセル画」が展示されているが、製作途中のセル画が残されているのは珍しい。

1960年代に使われていた作画や撮影用の道具類展示では、まさにアニメの歴史を築いてきたアイテムがズラリ。当時の東映アニメーションの貴重なスナップ写真もパネル展示されている。

  • フィルター アニメーション撮影台の下部にあるプロジェクターに取りつけ、色を加えるのに使用。 館蔵

「その3 今のアニメはこうして作られる」では、デジタル時代に突入している現在のアニメ作りを解説。かつての手作業の時代の製作過程と対比できる。

「その4 東映アニメーション作品紹介」では、本展の展示資料の大半を製作した東映アニメーションの作品を紹介。放映中の新作の映像展示もある。

本展は、アニメ作りの過程をわかりやすく理解できるので、ビギナーや家族連れにも最適なイベント。会場内を歩くと、世代ごとの推し作品に出会え、思わず「お!」と声が出てしまう。
同じ石神井公園ふるさと文化館2Fに常設展示されている多段式の「マルチ・プレーン・カメラ」は、カメラに対して複数のセル画や背景画を異なる距離に配置し、奥行きのある画面を創り出せるアニメ撮影用の撮影台。東映アニメーションで実際に使われてきたこちらのカメラは、昭和34(1959)年製。日本アニメの草創期から、制作現場を支えてきた貴重な機材なので必見だ。

【特別展「練馬とアニメーション アニメ製作のいまむかし」】

開催期間:2025年6月21日(土)~ 8月11日(月・祝) 9:00~18:00
休館日:月曜
※ただし7月21日(月曜・祝日)、8月11日(月曜・祝日)は開館。7月22日(火曜)は休館。
入館料:無料
会場:石神井公園ふるさと文化館 2階 企画展示室
(練馬区石神井町5丁目12番16号)

公式サイト:
https://www.neribun.or.jp/event/detail_f.cgi?id=202503161742103242

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