細田守の“原点”へとタイムリープする展示「細田守の原点/展」開催中
2026年6月20日(土)から8月31日(月)まで、京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで開催されている「細田守の原点/展」。そのプレス向け内覧会の模様と、展示作品の魅力をレポートする。

俳優・染谷将太と、監督・細田守が語るものづくりのおもしろさ

はじめに細田守監督と俳優の染谷将太が登壇し、トーク・セッションが行われた。染谷は、『おおかみこどもの雨と雪』(2012)で小学校の先生役、『バケモノの子』(2015)で主人公の九太役、『竜とそばかすの姫』(2021)でカミシン役、『果てしなきスカーレット』(2025)でギルデンスターン役をつとめるなど、細田作品の常連キャストである。

染谷自身は自らの出演作品のエピソードにふれつつ、本展示ならではの魅力として、細田が中学時代に作った自主制作アニメについて「中学3年でこんな作品を作るのはすごいし、登場する竜などのモチーフが後の作品にもつながっている」と、驚きを語った。細田が金沢美術工芸大学在席時に描いた油彩画も展示されていて、そこにも現在につながるモチーフやメッセージなどを強く感じたという。

細田は、昔の作品を展示するのは恥ずかしいことではあるが、それも含めての「原点」なので見てほしいと語る。その当時の「作りたい」という衝動が自らの創作の原点にあり、これを見て「自分もやってみようかな」とか「やっていいんだ」と思ってくれたらうれしいし、刺激になればと言葉をつないだ。
『時をかける少女』から『おおかみこどもの雨と雪』までで展示を構成
展示は、『時をかける少女』(2006)、『サマーウォーズ』(2009)、『おおかみこどもの雨と雪』の長編3作品を軸に、それ以前の東映動画(現・東映アニメーション)在籍時代にたずさわった作品(『ゲゲゲの鬼太郎』『デジモンアドベンチャー』『おジャ魔女どれみ』など)のコーナー、そして中学〜大学時代に作った(描いた)作品(8ミリフィルム作品や絵画など)のコーナーで構成されている。
最初のエリアは『時をかける少女』のコーナー。スペースの中央に細田自身が描いた全カットの絵コンテ、約450枚がパネル展示され、壁面には設定画や背景画、原画やレイアウトなど制作時の資料が展示された。また、作中で印象的だった、主人公の真琴の走りを横からとらえた長い1ショットの映像を原画と共に展示している。

次の『サマーウォーズ』のエリアでは、スペースの中央に劇中に登場する「OZ」と呼ばれる仮想空間を模した円筒型の映像展示や、アクションシーンの絵コンテや原画などが印象に残る。また、すばらしい背景美術の原画を見られる。美術監督は、スタジオジブリ作品の美術を数多く手掛けた武重洋二。細田からのたっての依頼で参加し、舞台のモデルとなった長野県上田市の自然を美しく描いた。
細田守の若き日をかいま見る

次のエリアは『Early Days』と名づけられていて、『時をかける少女』に至るまでの細田のさらなる原点を見られる。2本の映像作品、中学時代に作った自主制作アニメと、大学時代に撮った実写映画作品は本邦初公開。また、大学時代に描いた油彩画なども展示され、細田作品のルーツがよくわかる。




撮影:山本倫子
また、約14年間在籍した東映動画時代の作品資料も見られる。公開当時話題になった『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』(2000)や、それを見た現代美術アーティストの村上隆からの依頼で作られたルイ・ヴィトンのプロモーション映像(2003)の資料も展示されている。
最後のエリアでは、『サマーウォーズ』に続く長編作品となった『おおかみこどもの雨と雪』の資料や映像を見られる。細田の生まれ故郷である富山県の雪深い里山が舞台となっていて、その美しい背景美術は『魔女の宅急便』などを手掛けたベテランの大野広司を中心とするスタッフが手掛けた。また、劇中で印象に残る、雨と雪と花が雪中を駆け回るシーンは、名アニメーターの井上俊之が作画を担当。その原画と完成映像をあわせて見られる。
『時をかける少女』が原点の中の原点
この「細田守の原点/展」を最後まで見て印象に残ったのは、やはり『時をかける少女』の持つ熱気やパワーだ。細田がそれまでの東映動画時代の作品でつちかってきた技術やアニメーション表現、学生時代から持ち続けてきたモチーフやテーマ、この作品の前にあった挫折などなど、そういったものがぎゅっと凝縮された後に、一気に爆発した作品だったことが、あらためてわかった。2006年の劇場公開時、作品を見て、その瑞々しさと爽快感に感銘を受け、同世代の新しい才能が誕生したと感じたことを思い出す。ぜひこの展示を通して、細田守の“原点”を堪能してもらいたい。

細田守
アニメーション映画監督。1967年生まれ。富山県出身。1991年に東映動画(現・東映アニメーション)へ入社。アニメーターおよび演出家として活躍。『時をかける少女』(2006)、『サマーウォーズ」(2009)を監督し、国内外で注目を集める。監替・脚本・原作を務めた『おおかみこどもの雨と雪』(2012)、『バケモノの子』(2015)は大ヒットを記録。さらに『未来のミライ』(2018)、『竜とそばかすの姫』(2021)、「果てしなきスカーレット』(2025)でも数々の国際賞で称賛を受け世界中で注目を集めている。
【『時をかける少女』20周年記念「細田守の原点/展」 開催概要】


[会場/会期]
会期:2026年6月20日(土)~8月31日(月)
10:00~18:00(最終入館 17:30まで)
※ただし、毎週金・土曜日および祝前日、8/11(火)~8/14(金)は20:00閉館。(最終入館19:30)
※7/12(日)より毎週日曜日および祝日も20:00閉館。(最終入館19:30)
※土日祝は、混雑緩和と安全対策のために整理券による案内を実施。
※平日も状況に応じて整理券を配布
会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO
(東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 6F)
主催:CREATIVE MUSEUM TOKYO
展覧会公式サイト:https://hosodagenten.exhibit.jp/
©「時をかける少女」製作委員会2006
©2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS
©2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会
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Writer
齊藤睦志
(さいとうちかし)
編集者、ディレクター、ライター。横浜市在住。株式会社クラフトワークス代表。VECTORでは主にアニメーション作品と作り手、アートイベントなどの取材・執筆を行う。その他の代表的な仕事に『宮﨑駿とジブリ美術館』(岩波書店)、『ジ・アート・オブ シン・ゴジラ』(グラウンドワークス)、『ジブリパーク公式ガイドブック』(徳間書店)などがある。
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