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「人類遺産」保全の危機迫る。国立映画アーカイブがクラウドファンディング開始

2026年6月25日(木)、国立映画アーカイブは、クラウドファンディングプロジェクト「使命は人類の記憶を繋ぐこと。国立映画アーカイブの活動存続にご支援を」を開始した。
国の支援を受ける国立映画機関が、なぜクラウドファンディングを実施するのか。同日、東京・京橋の国立映画アーカイブ小ホールで開催された記者会見の模様をお届けする。

日本映画界を支える、国内唯一の国立映画専門機関

国立映画アーカイブは、映画関連資料の収集・保存・公開・調査研究などを総合的に展開する、日本唯一の国立映画専門機関。収蔵点数は、映画フィルム約9万点、関連資料110万点を超え、まさに日本映画界の歴史と文化振興を支える重要拠点だ。

 

そんな同館が、クラウドファンディングサービス・READYFORにて「使命は人類の記憶を繋ぐこと。国立映画アーカイブの活動存続にご支援を」プロジェクトをスタートした。目標額は1億円、期間は6月25日~9月23日午後11時までの約3カ月間だ。特設サイトには、映画関係者55名による応援メッセージも公開された。

「映画は人類の文化遺産であり、記憶遺産」

記者会見には、国立映画アーカイブ館長の栩木章氏、学芸課長の冨田美香氏、国立映画アーカイブの運営を担う国立美術館理事長の田中正之氏、映画監督であり東京藝術大学教授の諏訪敦彦氏の4名が登壇。まず、栩木館長から同館の存在意義とクラウドファンディング実施の経緯説明がされ、その後各登壇者から本プロジェクトへの思いが語られた。

栩木館長は、国立映画アーカイブが「国立機関でなくてはできない、文化芸術としての映画振興を担う存在」として貴重な映画フィルムや資料の保存・修復・上映等を実施。映画文化の発展と継承に貢献してきたことを強調した上で、活動を継続していくために支援が必要だと訴えた。また、映画関係者や映画ファンに向けて「皆様の深い信頼と期待、応援にこたえるため、国立映画アーカイブはこれまで通り、人類の記憶の記録装置である映画を網羅的に収集・保存し、公開・展示を続けていくことをお約束いたします」と力強く宣言。事業運営や予算を含むさまざまな課題に対応できるよう「新しい姿を作っていきたい」と意気込みを語った。

学芸課長の冨田氏は、映画フィルムを保存・継承する重要性について言及。「映画は、人類の貴重な文化遺産であり、記憶遺産である」と定義。続けて「その時、その場所、その瞬間、そこに映っている人々の生の記録になるんです」と日本唯一の専門機関として映画を保存し続ける意義を説明した。

今回寄せられた映画関係者からの応援メッセージにも「当時の映画資料が現存しないため描けない場面もある」という旨の記載があり、芸術作品の創作・発展において、映画資料の保存がいかに重要かがわかる。目標額1億円の使途は、運営費全般。同館が運営費そのものの支援を募るのははじめてのことで、冨田氏は最後に「本プロジェクトを通じて国立映画アーカイブの活動を多くの人に知ってほしい」「プロジェクトは未来への布石だと考えています」とコメントした。

「施設存続の問題にもなりかねない」

質疑応答で運営予算の現状について問われた冨田氏は、令和6年度の文化庁運営費交付金配分額が6億8291万7000円だったのに対し、「今年度は3億5856万円」と回答。運営コストを試算すると、2億4000万円相当を自前でカバーしなければならないことが明らかに。

冨田氏は「人件費や経費の削減に取り組んでいる」というが、それでも同館の今年度固定費は4億4172万。寄付金や助成金などの援助を受けてギリギリの運営が行われているのは明白であり、交付金の減額が事業継続を脅かしている。

減額の背景にあるのは、文化庁が2026年2月27日に策定した国立博物館・国立美術館の次期中期目標だ。国は、全国の国立博物館・美術館に対して、令和12(2030)年度までに、展示事業にかかる費用の自己収入割合を65パーセント以上にするよう求めていて、基準を達成できない場合は閉館を含む再編の可能性があるという。

(編集部注)
記者会見の翌日(2026年6月26日)、この記者会見の報道を受け、文化庁から「独立行政法人国立美術館への交付金自体は減額していない」という声明が出された。
なぜ国立美術館7館のうち、国立映画アーカイブへの交付金が44パーセントの減額となったのか?  その原因は、2026年2月に文化庁が示した中期目標の「自己収入の割合が4割を切った館は再編」というノルマに近い指標にあるようだ。国立映画アーカイブの自己収入の大部分は、上映・展示の観客収入。上映には「席数と上映時間」という「制約」が厳然と存在するため、ほかの美術館に比べ集客が制限される。前述の指標に照らして、再編をまぬがれ国立映画アーカイブを存続させるためには、独立行政法人国立美術館として交付金配分を減らさざるを得ないという判断が働いた、とも推察される。

映画フィルムや資料の保存には、適切な温度と湿度管理が欠かせない。当然そこには莫大な光熱費がかかり、固定費が支払えないと、適切な保存環境の維持が困難になる。冨田氏も険しい表情を浮かべ、「この状況が来年度以降も続く場合は、施設存続の問題にもなりかねない」と危機感をあらわにした。

不足額は2億円以上。では、なぜ今回の目標額は1億円なのか。
栩木館長は「求められる財政構造と、我々が本当にやらなければならないミッションの間には、かなりの誤差がある」と述べた上で、政府への予算要求や増収のための施策、アプローチを各所へ行っていると説明。それでも不足が見込まれるのが1億円であると述べ、「予算の話になったときに、国立映画アーカイブってなにをやっているの? と聞かれることが非常に多い。だから金額のこともあるが、どれだけの人が我々に注目してもらえるかも大きなポイント」と、今回のクラウドファンディングの狙いを話した。
社会において“アーカイブをする”という行為が、次世代のためにどれだけ必要な投資なのか。氏は「プロジェクトを通じてしっかりと説明し、理解してくれる人をひとりでも増やしたい」と訴えた。

【国立映画アーカイブ】

住所:東京都中央区京橋 3-7-6
利用時間・料金など:施設により異なります。詳細は公式サイトなどでご確認ください。
公式サイト:https://www.nfaj.go.jp/

【クラウドファンディングについて】
期間:2026年6月25日(木)8時 - 9月23日(水)23時
目標金額:100,000,000円
詳細は以下のページをご覧ください。
https://www.nfaj.go.jp/support/crowdfunding/2026-06/

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■「人類遺産」存続の危機 国立映画アーカイブ クラウドファンディング開始

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