配信があろうが、シネコンがあろうが、 私たちには今こそ「名画座」が必要だ。
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インタビュー「新文芸坐」の挑戦
「新文芸坐」マネジャー:花俟良王さんに訊く
コロナ禍をへてのリニューアル
――私は学生時代から名画座ファンで、名画座というのは、単なる映画館ではなくて映画ファンを育ててくれる、失くしてはいけない場所だと思っています。ここ数年、名画座は、シネコン以上に経営環境が厳しかったと思うのですが、そんな最中、老舗の新文芸坐さんが2ヶ月半の休館〜リニューアルを断行したのはニュースになりました。まずはその経緯からお話しいただけますか?
花俟 きっかけは新文芸坐が入っているうちの会社(マルハン)のビルの別の階の店舗が改装することになり、一定期間営業が不可能になったんです。ふと考えてみると、新文芸坐も早やオープン21年目で、映写設備もかなりガタがきていて空調もしかりでした。だったらこの際一緒にやってしまおう、と。 ですが、実を言いますと、そう決まる前にそもそも映画館を続けるのかどうか?という再検討から入ることになりました。ここ数年、コロナや配信などの影響もあって、ご承知の通り映画館は大変厳しかった。それでも、私たち従業員は映画が好きでずっとここで働いているわけで、どうにか残して欲しかったですし、会社側も、「人世坐」以来続く「文芸坐」の歴史を大事に思っていますから、努力して続けられるなら続けたいという思いでした。では、どういう映画館にしたら、今後も続けていけるのか。そういう検討に入ったんです。
リニューアルされた新文芸坐の1Fファサードに立つマネジャーの花俟良王さん――古くからの固定ファンの多い新文芸坐さんは、比較的コンスタントに集客できている名画座さんだと思っていました。それでも閉館も視野に入れなければならないほどだったのですね?
花俟 うちは伝統的に平日の昼間などは、シニア中心のお客様に支えられていたところが大きい。ところが、コロナ禍になってその層がパッタリといらっしゃらなくなった。高齢者が重症化するなんていうコロナのニュースを見れば当然です。その方々が戻ってきてくれればいいんですが、まだまだ。元通りに戻ってくれるという保証はどこにもない。最悪のケース、映画の見方として、もう別の習慣ができてしまったのかもしれない、とも考えました。それはもううちだけじゃなくて、名画座界隈のみならず、シネコンなどの封切館も同じ不安を抱えているはずです。ここ数年の配信、特にサブスクの影響でお客様が減ることは覚悟していたんですが、コロナで本当に加速してしまいました。
――正直、現在、私自身もそれほど頻繁に名画座に通っているわけではありません。それでも月に何回か足を運ぶと、それなりに入っているという印象がありましたが。
花俟 「新文芸坐さんはいつも結構入っていますね」と言っていただくお客様も多いのですが、そんなことはないです。私たちが誤解してはいけない落とし穴は、そういう声が聞こえてくるということは、本当に入っていない時の状態を見ている方があまりいらっしゃらないということじゃないかと思うんですよ。逆に言うと、入らない番組は本当に入っていない。それだけ入る番組、入らない番組の落差が大きくなってしまっているわけです。じゃあ今、入るような番組だけを組んでやればいいかというと、それでは「名画座」本来の役割が果たせなくなってしまう。そこは番組編成やプレゼンテーションを最大限に工夫するなりして乗り切っていかなければならない。今回はそういった流れがあって、さまざまな検討をした上で“新文芸坐が生き残るため”の思い切ったリニューアルです。やるなら今、とことんこの劇場でやれることをやってみるか!って挑戦する感じですね。

コロナ禍によって変わった名画座事情
――リニューアルの内容を伺う前に、コロナ禍での影響をどう受け止められたかということと、コロナ禍以前から顕在化しつつあった名画座にまつわる諸問題について、お訊きできたらと思います。まずはコロナ禍の2020年春の緊急事態宣言以降の変化について教えてください。
花俟 2月にコロナの報道が広がり、4月の緊急事態宣言前から客足が鈍ってきて、宣言が出て休館、再開後は収容人数の削減、消毒作業に明け暮れ……と。でもこれは名画座だけではなく、映画館全体、どこでも同じ悩みだったと思います。 当館の場合は再開した時、消毒に関しては、休憩ごとの消毒に加え1週間持続性のある消毒剤、つまり医療機関で使用されているのと同じものを使用して定期的に消毒を繰り返し、ロビーやトイレでの密を避けるために休憩時間を長くとりました。また、行政からの感染防止指導もありましたから、場内での食事は開館以来はじめて不可としました。どういった反応が出るか気にしていたんですが、結論から言いますと、コロナ以前に比べ、お客様からの苦情が減ったんです。つまり、今まではいろいろなお客様に配慮して食事を認めてきたんですが、止めざるを得なくなって一歩踏み込んでみたら、予想以上に苦情がなくなった。どういうことが結局、今のお客様のニーズに合っていたのか、ということが見えてきました。それによってリニューアル後の方針を決めました。
――新文芸坐名物だったタイ風チャーハンやラップサンドは、もう食べられないわけですね(笑)。
花俟 人気メニューでしたが、あの店もコロナ禍で潰れてしまったんです。ただ、食べる時にうっかり席を汚してしまったり食べ残しを放置する方もいらして苦情が多くあったので、いずれにせよコロナ禍では続けられませんでしたね。
――番組編成面ではどのようなご苦労が?
花俟 名画座経営の側から見てコロナ禍で印象的だったのは、コロナ禍の初期にシネコンさんで新作映画の公開がつぎつぎと延期され、かける映画が不足しましたよね。その打開策として旧作の上映が増えたんです。つまりシネコンが名画座の領域に入ってきてしまった。これは予想外でした。それだけならまだ良かったのですが、ある時当館でコロナ禍だから『復活の日』(2)をかけてみようとなったんです。ところが上映交渉したら、これからシネコンでかけますからダメですよ、と。これはショックでしたね。それから、例えば『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾監督の連続上映とか、10代に人気のある若手女優の特集みたいなことまでシネコンがやりはじめた。そういうちょっとコアなターゲットを狙った企画は、これまではミニシアターや名画座の専売特許みたいになっていた企画です。ああ、コロナでそういう新たな競争の時代になったんだというのは感じましたね。 さらにコロナ禍で困ったのは劇場公開から配信までの期間がすごく短くなった。ある作品で、シネコンでの上映が終わって、「さあウチでやりたい」と手を挙げたら、もう配信予定が近いので出せませんよと。この間ロードショーが終わったばかりなのに。はあ……そういう時代になりましたかって。アカデミー賞絡みの秀作などでそうなってしまうと、少し悲しくなりますね。
――先ほども平日の興行を支えていたシニア層が激減してしまったとおっしゃっていましたが、そうしたことは番組にも影響していくのでしょうか?
花俟
考慮せざるを得ないですね。うちのシニア層のお客様は「映画館で観ることが好き」で、時間があれば番組にかかわらず観に来てくださる方が多くいらっしゃった。その3〜4割が現状減ったままです。必然的に、より若者層に目配せしないとやっていけない。そうすると、例えば旧作の邦画をかけるにしても、王道パターンの名画だけではなく、ちょっと変化球のパターン、例えば「昭和ってなんかオシャレ」と思えるような番組編成や、レアな発掘作を観たいというマニア層向けの番組など、少し捻った方向の編成を強めにしていく必要があると思います。
加えて、伝統的な「2本立て」の上映スタイルは、シニア層の支持は相変わらず高いのですが、最近若いお客様は一日のスケジュールをコンパクトに組みたいので「1本だけ観たい」という意見がかなり増えてきています。基本、2本立てを維持しつつも、1本立ての割合を増やしていく必要があるなと感じています。
ロビーに掲出された座席案内板番組を組むハードルは年々高くなる
――2020年のコロナ禍以前からも名画座運営にとっては、さまざまなご苦労が立ちはだかっていたことと思います。そもそも現在は、劇場側が上映したいと思った作品がかつてのように比較的自由に上映できるといった時代ではありませんね。
花俟
昭和の頃の、作品供給がおおらかだった時代と比べると、それは雲泥の差ですね。現在は、映画もいちコンテンツとして、権利ビジネスの範疇ですから、邦画の旧作であっても、人気スターや有名監督の作品など「○○映画祭」と銘打って上映できるような作品はリマスターをしてでもシネコンなどに出した方が、権利を持っている映画会社にとっては商売になります。名画座で上映できないわけではありませんが、例えば1年以内にシネコンでの上映を予定していたりすると、「今は名画座さんには出せません!」となってしまいます。
また名画座というのは昔からフラット興行といって、最初に作品の上映回数を決めて上映の契約金額を決めてきました。金額を決めて上映させていただく。一方シネコンなどは歩合(歩率)興行といって、お客様の入った結果から算出するわけです。私たち名画座はずっとフラット興行でやってきているわけですから、歩合興行に慣れていないですし、収支が変わってきてしまう。近年のデジタルリマスター版や4K版というのは歩合契約が条件というケースが増えてきたのですが、仮に今後、歩合で契約する作品が増えてきてしまうと、リスクが怖くて今までみたいな野心的な番組編成ができなくなってしまいます。
――洋画に関しては、日本での上映権が切れている作品も多いですし、さらに作品が限定されてしまうのではないですか?
花俟 そもそも今は上映権自体も非常に短い期間に区切られているんです。だからよく「日本最終上映」などとお客様に告知をしますよね。ただそれは、今に始まったことではないですし、逆にそういう告知をすることでプラスにしていくしかないと思っています。むしろ劇場数の多い東京において難儀なのは、多スクリーンを擁するシネコンになって、息の長い人気作は小さいスクリーンに移して、お客様が入る限り上映を続けてしまわれることですね。まだ入る、まだ入る、って朝9時から1回だけでも、22時からでもかける。なかなか私たちの劇場には回ってこない。だからヒット作を名画座があまりかけなくなったのは、そういう理由もあるんです。さんざんこすってから名画座に持ってきても、期待したほど成績が上がらない。でもその反面、シネコンではすぐに打ち切られてしまう小規模な配給会社の良質な作品が多くあります。だから小規模な秀作を名画座がどんどんかけるようになっていく感じですね。
――なるほど。都会ではシネコンの数も多いから、延々とどこかのシネコンでかかってしまうと、なかなか上映できない、と。
花俟 名画座ビジネスの仕組みもどんどん変わってきていますから、10年前と同じような感覚で番組を組んでいても名画座は持続できないでしょうね。結局、私たちにできるのはそうした今の状況をどう見極め、各館が切磋琢磨しあって、どのように独自の魅力的な番組を考え出していくかということだと思います。昔からお付き合いしてきた映画会社に限らず、いろいろなルートで作品を調達できる方策を探ったりしていますし、自主製作・配給、自主買い付けしようという団体もあります。アンテナを張ってシビアにお客様の要望と、映画館の利益と、いまの時代の空気感をなんとか合致させ、そのトライアングルの中にはまる企画を探っていかないとダメです。
――逆に言うと、より観客側と密接に結びついて、観客は本来こういうものを求めているんだということを探り、それを活路としていく。そういうことですね。
花俟 名画座の武器はそこですね。今、東京の名画座はそれぞれそこで鎬を削って、番組がすごく個性的で面白くなってきていると思います。各館ともに、それぞれご贔屓のお客様も一定数ついていて、おそらく一番コアな観客とより密接につながっている貴重な場所だと思いますので。当館もそこら辺のニーズはキャッチしていきたい。先ほど、なんだか「対シネコン」みたいなことばかり言ってしまいましたが、そういう場所なので、作品供給側の方々も、いい意味で名画座という場をもっと活用していただきたいと思うんですよ。
――考えてみれば、近年流行の「応援上映」、「スタンディング強制上映」などは、名画座界隈が発火点ですよね。
花俟 あれはもともと「応援上映」やりたいんですよ!みたいな方々がいらっしゃって、最初にシネコンに持ち込んだけど断られて私たちのところに来たんです。こういう上映をやってくれませんか? いいですよ、面白いですね、やりましょうって。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15/ジョージ・ミラー監督)の時です。もちろん昔から『ロッキー・ホラー・ショー』(3)のようなイベント的な鑑賞法の文脈はありました。だからこれが全くはじめてというわけではないですけど、いわゆる現在の形の応援上映というのは、塚口サンサン劇場さんという関西の劇場と、東京の新文芸坐、このふたつの映画館が発火点であることは間違いないはずです。2館で同時期に『怒りのデス・ロード』で、クラッカーとかコスプレして盛り上がるという上映をやりました。この最初の熱気というのはすごいものだったんです。僕らもとても緊張しましたしね。こういうのはまあ一例に過ぎないのですが、そのように名画座って、お客様に近い立ち位置でいることのできる劇場だと思うんです。
リニューアルの日には、かつての文芸坐のスライドをバックに花俟さんが文芸坐→新文芸坐の歴史を説明した「新文芸坐」としての20年を振り返る
――そうしたイベント上映にとどまらず、近年のプログラムにはひと工夫、ふた工夫が見られます。2000年12月に新文芸坐さんがオープンした時に感じたのは、3年半前まで同じ場所に(旧)文芸坐(1956〜1997年)がありました。以前の文芸坐は洋画館(文芸坐)と邦画館(文芸地下劇場)があって、さらに演劇を公演したり自主映画などもかける小劇場(文芸坐ル・ピリエ)まで増設されて3館になり、それぞれにお客さんがついていた。それが新文芸坐は1スクリーンのみになって、どういうふうにこれまでのお客さんをすくい上げていくのだろうということでした。ところが、実に多彩な番組編成で、かつての文芸坐の全てのお客さんに応えようとしてきた。貴館の持つ歴史や、数が減りつつあった当時の池袋の映画館状況を考えたら、当たり前の選択だったのかもしれませんが、ずいぶんと攻めているなと感じていました。
花俟 おっしゃる通りで、昔はいっぱい(スクリーンが)あったのに、1スクリーンのみになった。再スタートを切る時、じゃあ全部凝縮してしまえ!的なイメージはありましたね。新文芸坐のオープン当時は、名画座といえばまだ「2本立て」興行が主流でもありました。そこで思ったのが、この「2本立て」文化を活かして、生意気ながら、映画鑑賞の垣根を無くすことはできないだろうかと。つまり、意外な2本立てを企画して、普段、その方が観ないような映画も観てほしいと思ったんです。このジャンルは好きなんだけど、このジャンルは嫌いっていうのはもったいない。好みは自由ですが、ここに素晴らしい作品が、人生を変えてしまうような作品があるかもしれないのに、垣根があることによってそれを観ないというのは、もったいなくないですか?という提案をしたいと。それまでは監督別、作家別、ジャンル別といった王道の組み合わせがほとんどだったのですが、今まで三つに分かれていたのが一つのスクリーンになることによって、一部そういうジャンルを跨いだような企画とか、凝った2本立て番組も入れていくようにしたんです。ただこれ、最初の10年くらいは旧常連さんに相当怒られました。フザけ過ぎだとか、映画鑑賞をなんと考えているのか、と!
旧文芸坐時代から、このようなオールナイト上映が毎週組まれていた――一方、旧文芸坐の土曜夜の名物だったオールナイト上映は新文芸坐でも引き続き維持し、ここでも個性的な企画を増やしていきました。昔ながらの「監督(あるいはテーマ)特集」は継続しつつ、毎回意外性のあるポイントでアニメを紹介していく定例化した上映企画「新文芸坐×アニメスタイル・セレクション」とか、遊び心満載のテーマ企画も生まれましたね。
花俟 オールナイトはやはり体力的にも若いお客様が中心なので、客層も入れ替わっています。だからこそ様変わりが必要で、かつては普通に監督や作家別などの組み合わせで入りましたけど、近年はオールナイトの企画自体にある種のイベント性がないと厳しい。そこで、トークショーをつけたり、2本立て同様に意外性の高い4本立てなどであっと驚くような映画の見方をプレゼンしたりしています。特に130回以上の開催を経ても高い人気を得ている「新文芸坐×アニメスタイル・セレクション」(4)はその道の専門家(雑誌「アニメスタイル」編集長の小黒祐一郎氏)に毎回独創的なテーマで企画を組んでいただいて、やはりアニメ関係者のトークも入れたりして続いている。回を重ねるごとに定着していって、売り切れの回も多くなりました。この「アニメスタイル〜」で新文芸坐を知ったというお客様も多くいらっしゃいます。今だから言えるんですが、最初の頃、私は失礼ながらアニメオタクの方々というのはアニメしか観ない層だろうと勝手に思っていたんですよ。ただ、この企画をやりはじめると、彼らは実写映画もとてもよく観ているし、かなりシネフィル的な感性の人もすごくいらして。「アニメスタイル〜」も最近は垣根をどんどん取っ払っていこうという感じでやっています。
――モーニングショー、レイトショーという枠も増設され、レイトショーでも「新文芸坐シネマテーク」といった定例化した企画が生まれました。
花俟 モーニングショー、レイトショーは基本は「1本立て」枠なんです。これを設けたことで、昼間のメインの番組が洋画でも朝夕は邦画を上映するとか、その逆とか、長尺の作品を上映したり、かなり幅広いプログラムを組めるようになりました。その分、日替わり上映のようにプログラムが複雑化しているので運営は大変なのですが……。 レイトショー枠で2014年にスタートした「新文芸坐シネマテーク」(5)はまさに、先ほどの上映できる作品が徐々に限られていくというところからの逆発想で、講師を務めていただいている映画批評家の大寺眞輔さんと……日本で今、どうしてたったこれだけしか映画が観られないんだという怒りを共有して、「日本ではなかなか観られない作品を持ってきて上映するっていう企画をやりましょう」とはじめたんです。それで日本で観られないアート系・作家系の作品の権利を直接購入して、我々で日本語字幕をつけ、大寺さんのアフタートーク込みで上映しています。この「シネマテーク」ではコロナ禍でオンライン映画塾という新たな展開もスタートさせました。お客様はいわゆるシネフィルの方が多いので、先ほどの「アニメスタイル〜」同様、この「シネマテーク」も新しい客層を広げてくれたと思っています。
映画館での鑑賞は「体験する」文化
――同じレイトショー枠では、B級ホラー映画なども積極的にかけていますね。
花俟 シネフィル系のお客様にも、オタク系のお客様にも「あの時、新文芸坐でこれを観た」という体験を残してもらいたいと思って、あれこれ考えています。個人的に印象に残っているのは、これはレイトではなくオールナイトでやったのですが、『溶解人間』(77/ウィリアム・サックス監督)が、上映できるということがわかって、とてもカルトかつレアな作品だし、一人でも多くの方に観ていただきたい。でも知る人ぞ知る作品だし、どう広めたらいいんだろうと。そこで調べていったら、どうやら『悪魔の毒々モンスター』(84/ロイド・カウフマン監督)と『吐きだめの悪魔』(86/ジム・ミューロー監督)が上映可能であると。さらに、かつてTVの映画劇場で火がついたスティーブ・マックイーンが若い時の『SF人喰いアメーバの恐怖』(6)(65/アービン・S・イヤワース・ジュニア監督)もかけられると。これはもうドロドロ尽くしだ!と思って「春の新生活応援企画!」と銘打ち、「ドロドロの人間関係にご用心!春のドロドロオールナイト」というタイトルをつけたんです。そしたら、意外なことにその打ち出し方がとてもウケて前売りで完売した。そのように、一見シネマテークと真逆のことをしているようですが、映画館で映画を観て楽しんでいただく体験はすべて同じで貴重だと思いますね。くだらない企画でも大切なんです。
――最初に、「名画座とは映画ファンを育ててくれる場所」と言いましたが、見事にそういうことを実践されている気がします。
花俟 いや、そう言っていただけるのはありがたいことですが、正直なところはやはり、今できる限りのことをして、「名画座」としての「新文芸坐」を守りたい。最初にお話しした通り、そこに尽きるんですけどね。
――最配信などで映画に触れる若い層も多くなる中で、新文芸坐さんの立ち位置としてはどういうスタンスでありたいと思っていますか。
花俟
これはわかっていただける方は大勢いらっしゃると信じていますけど、スクリーンで映画を観るということは、他に変えられない体験があるんです。ですから、いきなり配信で観るというのは作品にとっても、出会う観客にとっても、最良だとは思えません。もちろん選択の自由はあっていいんですがその体験の場を奪ってはいけない。その場を必死に守っていきたいと思っています。基本はそこですね。
例えば上映の後に生でトークショーを聞く体験。またオールナイト上映で寝てしまう体験、これも劇場体験だと思いますし。最近はコロナ禍で中止していますが応援上映とか絶叫上映とかも体験です。個の時代と言いますが、みんなで同じスクリーンを観るという体験を失ってはいけない。
そういうことは「文化の継承」だと私は思っているんです。そもそも映画とは時間を記録するものじゃないですか。古い日本映画を観ると顕著なんですが、いつも見ている街並が違う姿で映っている。もしくは前時代的なモラル、平気で女の人のお尻を触るとか、暴力をふるうとか、そういうことが映っていたりする。それが記録されている。それを観ることができる。それがいい悪いではなく、こういう時代があったという明らかな記録。これはある意味新鮮であったり、反面教師であったり、もしくは手本であったり。映画ってそういうものなんです。それを一人で部屋の中ではなく、ちゃんとみんなでスクリーンで観て共有してもらうのも、一つの大事な体験だと思います。
<リニューアル後の新文芸坐>
ロビーは高い天井を活かし、スッキリとしたデザインに変貌革新と継続とで、名画座の強みを生かす
――さて、この4月15日にリニューアル・オープンとなったわけですが、リニューアル後の新文芸坐がどう変わったのか?についてお聞かせください。
花俟 まずは基本の上映システムですね。映写と音響のシステムを一新しました。映写に関しては、従来の35mmフィルム上映は維持しつつ、新たに4Kレーザーでの映写システムを導入し、往年の名作から最新の話題作までを最適な状態でお届けできる環境を整えました(なお、新文芸坐のリニューアルの詳細は、インタビュー本文後のリリース記事に、より詳しくまとめています)。
――4Kレーザーを導入された一方で、もはやシネコンからは失くなったフィルム映写機を維持し続けてくださっているのが非常にありがたい。
花俟 現在は映写機の部品が無くなってきていたり、修理も個人ベースの所有者の方に頼らねばならないなど困難な状況なんですが、名画座の生命線ともいえる旧作は35mmフィルムでしか上映できない作品が多くあるわけですし、なんと言ってもフィルムならではの質感を見ていただく数少ない機会というのは大事にしたい。ですから35mm上映はまだまだ可能な限りは続けていきます。
クリスティ社製の最新4K RGBレーザープロジェクター「CP4430-RGB」――音響面はどう変わるのですか?
花俟 文芸坐の音はこれまでも映画ファンには好評をいただいてきたと自負していまして、だからこそ休館前の最後の上映も音響効果を最大限に活かした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だったんです。そこにさらに高いハードルを掲げて今回、カスタムスピーカーの設計・製作には(株)イースタンサウンドファクトリーさんと(株)ジーベックスさんのコラボを実現し、いろいろなプロの方々との協議も重ねてオリジナル音響システム『BUBGEI-PHONIC SOUND SYSTEM(ブンゲイ・フォニック・サウンド・システム)』というのを構築しました。同時にスクリーンもセバートソン社の「SAT-4K」というハイスペックスクリーンを導入しました。きめ細やかな映像を実現するだけでなく、このスクリーンは音の透過率も抜群に良いんです。また、シネコンからはほとんど失われてしまったスクリーンカーテンですが、これもこのご時世にあえて新調しました。ビスタサイズの常に剥き出しのスクリーンではなく、ちゃんとスクリーンサイズごとにバリマスクをかけて調整し、カーテンを開けて上映しますので、スコープサイズの時は一番大きなスクリーン感を味わっていただけると思います。
「ブンゲイ・フォニック・サウンド・システム」のロゴマーク――それも残していきたい貴重な映画館体験ですね。他にもリリース資料ではチケットシステムの変更について詳しく言及されていました。
花俟 チケットシステムは、今のニーズに合わせて変更しました。具体的には「自由席・入れ替えなし・当日券のみ」という従来の基本線を、これまではオールナイトや特別上映だけで実施していた「指定席・入れ替え制・前売券あり」に舵を切りました。これまで自由席&入れ替えなしで続けてきたのは、昭和からのスタイルとして、2本立てを肩肘張らず、気楽にゆったりと見ていただくためだったのですが、事前に席を確保するのが当たり前になった今、多くの方がそれを不便と感じるようになりました。新しい世代には敷居が高いと思う人出てきました。それともう一つは、現代の時間の使い方が細かくなっているということ。指定席にするなら、同じ「2本立て」上映でも朝に1本だけ観て、その日のうちなら、もう1本を観るのは他の用を済ませてからでもいいですよ、という視点を取り入れました。もちろん一本だけでも割引料金でご覧いただけます。
――同じ鑑賞日ならば、時間が離れていても指定席で「2本立て」が見られるというのは画期的なシステムですが、かなり思い切りましたね。
花俟 はい(笑)。対応する私たち自身ものすごく大変ですが、2本立てをどうにか残せないか、という気持ちが強いです。それでもふらっと映画館に来て自由席で見られるのがよかったのに!と頑なにおっしゃる方もいらっしゃいます。ですが、ここはどうかご理解いただきたい。今後営業を続けていくためにも新しいことにもチャレンジさせていただきたいです。
入場口にはマルチ決済にも対応できるAndroidキオスク端末を導入。障害者手帳アプリ「ミライロID」も使用できる――番組的にはいかがですか?
花俟 従来の新文芸坐の売りだった「2本立て」や「土曜夜のオールナイト」はしっかり維持していきます。その一方で「1本立てがいい」という若いお客様も見やすいように「モーニングショー」や「レイトショー」も充実させたプログラムを組んでいきます。「新文芸坐×アニメスタイル・セレクション」や「新文芸坐シネマテーク」などの人気企画はさらに充実させていきます。
――オールナイト興行は、当然、劇場側の労力は大変ですよね?
花俟 私自身、なんでこんなことをこの時代にやっているんだろう?と思うことがあるぐらい大変ですよ(笑)。でも、映画館で一晩過ごして朝まで映画を観ることの高揚感ってすごくあるじゃないですか。これをやり続けることによって、何かを得ている人、救われている人がいる訳で、それは映画業界に反映されていくんじゃないでしょうか。やっていない世界線にくらべたら、やっている世界線の方が豊かだと思うんです。そう信じて続けていきたいですね。
宮崎祐治さんデザインのオリジナルキャラクター「ぶんげいくん」のイラストは以前よりもバージョンが増え、さらに表情豊かに来場者を迎えてくれる――今回、リニューアル後の劇場を訪れて一番驚いたのは、ロビーが白を貴重にすごく明るく、オシャレな空間になりました。
花俟 新文芸坐の時のラウンジのトレードマークだった和田誠さん(「20世紀の名作イラスト」125点)のイラストコーナーはさらに印象的に際立たせつつ、ロビー全体としてはレイアウト・内装を大きく変更し、スッキリさせました。また場内には音楽などに連動させることもできるLED照明システムも完備しています。これによってライブイベントや企業プレゼン、ウェディングパーティーなどの会場として貸館もできるようにしたんです。時にはイベントスペースとして活用いただくことも、当館の収益性を高める上で大事だと判断してのことです。貸館ではないですが、さっそくリニューアル・オープン直後の4月から豊島区の協力で「劇場都市としま エンタメシアター in 新文芸坐」というイベントを開催し、その一環で「アニソンライブ」なども行いまして、新しい設備が力を発揮しています。
音楽などに合わせてLED照明が華やかに稼働。ライブイベントにも対応可能にした。
リニューアルお披露目の日はロビーを貸館仕様にし、オードブルなども並べ、ウェディングパーティなどもできることをアピールした。――そういう地域との連携みたいなことも考えていらっしゃいますか?
花俟 「劇場都市としま」は豊島区がオタク文化の発信地になろうと力を入れていることで実現したもので、こういう発信は続けていけるといいと思っています。一方で、これまでずっと近隣の商店、飲食店などにチラシを置いていただいたり、ずっとそういう努力も積み重ねてきました。先ほど出たエスニック風チャーハンを出していたなんていうのも、そういう活動の中から実現したことなんです。ですが、そういった個店との連携は正直コロナでやりにくくなってしまいました。今後はまた徐々に考えていけるかもしれませんが。
――劇場同士の連携というのはどうでしょうか?
花俟 池袋の劇場同士というよりも、同じような課題を抱えている名画座やミニシアター同士のつながりが大きいです。どんどん情報交換しましょうよと言って、密にやっていますね。ちょっと面白い例としては、例えばシネマート新宿さんに宮森さんという個性的な社員の方がいらっしゃるんですが、オールナイトで「殺人鬼映画」の特集をやった時にふと気がついたら、これ全部シネマート新宿さんでやった映画だったなと。それで宮森さんに来ていただいて二人でトークをやりましたら結構話題になりました。そこで今度は私が新宿に乗り込んでいって逆襲(?)するみたいな、そういうプロレスのノリのようなトークイベントを実施して、お互いの客層にお互いの映画館のイメージを浸透させたいね、などと話しています。他の劇場さんともどんどん繋がっていきたいですね。それと2月から少しずつですがyoutubeに「新文芸坐」のチャンネルを作りまして、こちらでも発信を始めています。現在は「どうしてこの2本立てを組んだのか?」など上映プログラムに対するプラスアルファな情報を発信しています。人手がないのでなかなか更新できないですが、徐々にこのチャンネル内容も発展させていくつもりなので、是非注目していただきたいです。
――シネコンのような大手のチェーンでないからこそできる、いろいろな可能性にチャレンジしていくということですね。
花俟
シネコンはシネコンで、余計なものを削ぎ落とした末の「機能性」という良さがあるとは思うんです。実際私たちも、今回のリニューアルでは貸館なども考えて、ある程度シンプルさを追求しました。でも映画はエンタテインメントなので、映画館自体にもいろいろな遊びの要素が詰まっていないとつまらない。そういう部分は我々のような「名画座」の強みだと思いますので、これからもっと貪欲に追求していきたいと思います。
その一方で、相変わらず映画館経営は楽ではありません。コロナ禍で、そもそも日本の映画業界を守るシステムが諸外国と比較して遅れていることもわかってきて、多くの映画人が声を上げはじめています。あまり勝手なことは申せませんが、国もしっかりと考えて、今できる手を打っていただきたい。素晴らしい「名画座」という文化を守り続けて行くためには、いまが瀬戸際だということも理解していただきたいと思っています。
取材・文=佐々木淳
註釈
- 1 経営母体も変わった:池袋東口の映画館「人世坐」は1948年に作家の三角寛が開業。徳川夢声、吉川英治、井伏鱒二らが株主に名を連ね、名画座として池袋の映画文化を牽引した。「文芸坐」はその姉妹館の一つとして1956年に開館。松竹の封切館としてスタートしたが、1968年の人世坐の閉館後、名画座に転向。やがて一つの建物の中に「文芸坐」「文芸地下劇場」「文芸坐ル・ピリエ」の3館と映画・演劇関連書店「文芸坐しねぶてぃっく」を擁し、一時代を築いた。しかし1997年に設備の老朽化や観客の減少により閉館。文芸坐の土地はパチンコホールなどを経営するエンタテインメント企業(株)マルハンが買い取ったが、前経営者・三浦大四郎の「ぜひ映画館を継続してほしい」との希望もあり、マルハンの新事業として「新文芸坐」が2000年12月に開館。今回は開館後、初のリニューアルとなる。
- 2 『復活の日』:ウイルスによるパンデミックを題材にした小松左京の同名SF小説を角川春樹事務所・TBSが映画化した1980年製作の超大作。監督は深作欣二。当時の邦画としては画期的な、ハリウッドスターも加えた豪華キャスト、世界ロケーション、破格の製作費が話題となった。
- 3 『ロッキー・ホラー・ショー』:舞台劇を映画化したジム・シャーマン監督の1975年製作のロックミュージカル・ホラー。その奇抜な内容もあって、アメリカでは本作をオールナイト興行で、観客が映画に登場する小道具などを各自持ち寄ってパーティ形式で鑑賞するスタイルが流行り、その上映スタイルは日本にも上陸した。
- 4「新文芸坐×アニメスタイル・セレクション」:雑誌「アニメスタイル 」の編集長小黒祐一郎をホストに2010年から行われている新文芸坐のオールナイト企画。毎回、アニメ業界のニッチなテーマを設定、深掘りし、関連作を上映。さらに演出家、脚本家、アニメーター、声優などをゲストにトークを繰り広げており、2022年5月21日のテーマ「押井守映画祭」(ゲスト:押井守)で135回目を数えた。
- 5 「新文芸坐シネマテーク」:新文芸坐スタッフと映画批評家である大寺眞輔がコラボレーション・ユニットとして運営し、主にレイトショー枠で不定期に開催しているシネクラブ企画。映画業界の経済原則から日本ではほとんど上映されないままの作家・作品を紹介、批評を展開する場として多くのファンを獲得している。2014年9月のアブデラティフ・ケシシュ特集をvol.1として始まり、2022年5月クロード・シャブロル特集第4弾でvol.36を数えた。
これまでの開催記録 http://indietokyo.com/?page_id=14
詳細は、新文芸坐シネマテーク https://www.facebook.com/bungeicinema - 6『SF人喰いアメーバの恐怖』:スティーブ・マックイーンが無名時代に主演した1958年製作の低予算B級SFホラー。日本ではマックイーンがスターとなった後の1965年に『マックイーンの絶対の危機(ピンチ)』の邦題で公開されたがあまりヒットせず、1972年に『SF~』のタイトルでTV放映(「水曜ロードショー」)された時の方が話題となった。原題は『The Blob』で、1988年にリメイク版『ブロブ/宇宙からの不明物体』も公開された。
「新文芸坐」リニューアルの概要(新文芸坐のリリースより)
●一新された映写・音響システムで最高の劇場体験を
リニューアルに伴い映写音響システムが一新。従来の35mmフィルム上映に加え、国内名画座では初となる4K レーザーでの上映も可能となり、往年の名作から最新の話題作までを最高・最適な状態でお届けします。さらに独自の音響システム『BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM (ブンゲイ・フォニック・サウンド・システム)』の導入により、これまでもご好評いただいていた「新文芸坐の音」 がさらに進化し客席を包み込みます。
●名画座の灯を消さずに新たな取り組みを
新文芸坐のトレードマークともいえる「2本立て上映」、毎週土曜日の「オールナイト上映」は継続。 1本立てのレイトショーやモーニングショーも用いて様々な映画の楽しさをお届けします。さらにトキワ荘から始まり漫画・アニメ・特撮・コスプレなどのサブカルチャー文化と縁が深い豊島区協力のもと、 「劇場都市としまエンタメシアター in 新文芸坐」も始動。ゲストトークやアニソンライブなどで映画ファン以外の方にも劇場体験をお届けします。
●「2本立て」 に対応したチケット予約システム
時代のニーズに対応し、「2本立て」の鑑賞方法・チケットシステムも大きく進化。これまでの「自由席・入替なし・当日券のみ」から、オンライン窓口で購入可能の「指定席・入替制・前売券あり」とします。さらに2本の作品それぞれが「当日のどの回を選んでもOK(続けて見なくてもOK)」 となります。これにより、混雑状況が分からない、せっかく来たのに満席で入場できない、早めに行って並んで待つ、などというこれまでの不満が解消されるだけでなく、朝1本見てから用事を済ませて夜にもう1本を見る、などというライフスタイルに合わせた鑑賞方法が可能になります。また1本だけを割引鑑賞料金でご覧いただけるようにもなりました。
※1本立て、オールナイト上映、特別上映のチケットシステムは従来通り。
●イベントスペースとしてのご提案
今回のリニューアルではロビーのレイアウト・内装を大幅に変更し、新たなイメージで汎用性を持たせました。これにより多様な貸館に対応することが可能です。個人・団体の上映会はもちろん、新規導入された演出照明を用いたライブ、スクリーンを利用したプレゼンや企業総会、ウェディングや打ち上げのパーティーなどにもご利用いただけます。
■映写音響システム
<4K レーザープロジェクター導入>
クリスティ社製の最新4K RGBレーザープロジェクター「CP4430-RGB」 を導入。赤色・緑色・青色、それぞれのピュアRGBレーザー光源により、ハイコントラストかつ広色域の映像表現が可能になります。当館ではこれまでは4K作品は2Kにダウンコンバートした状態で上映せざるを得ませんでした。今後は4K素材が持つ圧倒的な情報量をそのままスクリーンに再現し、鮮烈な映像をお楽しみいただけます。UHD-BD などの4K 素材も対応可能です。
<35mmフィルム上映も継続>
従来通り35mmフィルムの映写も行います。映画誕生以来の規格である35mmフィルム。そのフィルムだけが持つ諧調豊かな映像を今後もできうる限り上映していきます。
<新たなハイスペックスクリーンの導入>
セバートソン社製のパーフォレーション (穴) のないスクリーン「SAT-4K」を導入。 音の透過率が良く、きめ細やかな映像を実現します。
<新文芸坐独自の音響システム『BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM』導入>
今回のリニューアルにあたりオリジナル音響システム 『BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM (プンゲイ・フォニック・サウンド・システム)』を導入。カスタムスピーカーの設計・製作は国内有数のホールや大手映画館チェーンのフラッグシップシアターに納入実績を持つ(株) イースタンサウンドファクトリーと、当館の映写音響設備のインストーラーである (株) ジーベックスのコラボレーションによる最新スピーカーシステムです。このカスタムスピーカーを QSC 社の最新プロセッサーQ-SYS 及び専用のネットワークアンプでドライブすることによりトータルで新たな音響を創り出します。
メインスピーカーには大型4ウェイシステムを採用。中高域には同軸型ドライバーを搭載した大型ホーンを選定し、メインスピーカーの中低域と低域、更にサラウンドスピーカーのドライバー口径をすべて15インチに統一しました。これにより音のつながりが良くなり、劇場全体を包み込むような一体感を創り出します。加えてリニューアル前に稼働していたサブウーファー(EAW SB284C) 以上の圧倒的な低音再生を実現するため、1台当たり 18インチドライバー2本を搭載した強力なサブウーファーを4台設置します。
デジタル上映時は最大 7.1ch まで対応。5.1ch時もバックサラウンドから音が出るので豊かな音場感を得られます。 フィルム上映時はドルビーSRD-EX (6.1ch) まで上映可能です。
■メインスピーカー
大型4ウェイスピーカー ×3台
HF HMF 1.4インチ(スロート径) 同軸型コンプレッションドライバー ×1
LMF:15インチコーン型ドライバーx2
LF:15インチコーン型ドライバーx2
中高域:同軸型リングラジエーターによるコンプレッションドライバーを搭載した大型ホーンを選定。大型ホーンならではの音の張り出しと浸透力の高さを発揮します。
中低域:映画の音にとって重要度が高いのが台詞。人の声の多くの帯域を担う 域には15インチドライバー2本を搭載し、豊かな声を響かせます。
低域:中低域とのつながりもよい強力な15インチドライバーを2本搭載し、音の土台をパワフルかつ堅固に支えます。
■サラウンドスピーカー
大型同軸2ウェイシステム 12台
HF:2インチコンプレッションドライバー ×1
LF:15インチコーン型ドライバー ×1
現在導入例の少ない大型の15インチ径の同軸ドライバーを採用。 ドライバー口径の大型化により低音再生能力が増し充実した音場空間を創出します。
■サブウーファー
18インチコーン型ドライバー×24台
強力な18インチドライバーを2本搭載したスピーカーシステムを4台導入。単体でも強力なサブウーファーを4台設置することにより、圧倒的な音圧の低音が体感できます。
※『BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM (ブンゲイ・フォニック・サウンド・システム)』命名の由来
トーキー映画の開発に先鞭をつけたウエスタン・エレクトリック社が1936年に発表した 『ミラフォニックサウンドシステム』に敬意を表し、交響曲のように豊かな新文芸坐オリジナルのトーキーサウンドを奏でていく、という想いが込められています。
