市内各所で盛り上がる「こうの史代展」巡回2カ所目 福知山展レポート
日本を代表する漫画家のひとり・こうの史代。多彩な表現で多くの人を魅了する希代のアーティストの”漫画家30周年”を記念した巡回展が、2025年4月からスタートした。2カ所目の巡回地は、京都府福知山市。ここでは、市内各所で展示・催事が行われた現地の模様をお伝えする。
金沢から地元・福知山へ

2025年4月から巡回が始まった『漫画家生活30周年 こうの史代展 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり』(以下、こうの史代展)。最初の開催は「金沢21世紀美術館」。金沢には、もうひとつ伝統的な美術作品を扱う石川県立美術館があるが、この市立美術館は現代を座標軸に置き、「市民が広くアートを楽しめるように」との思いから2004年に開館。しかし、他の多くの施設と同様、2024年の能登半島地震で被害を受けた。そのため、設備や施設の復旧のため、2027年5月から休館を予定している。金沢21世紀美術館では、リニューアルまでの限られた時間で、復興をはかる人々に良質なアートとのふれあう機会を提供するべく、意欲的に企画展を開催予定だ。そのうちのひとつが「こうの史代展」。金沢での展示は盛況となり、多くの人がこうの史代の作品や資料とふれ合うこととなった。金沢展のレポートはこちら。
2025年6月8日からの福知山展は、巡回展2カ所目。福知山市は、こうの史代が現在居をかまえる地。2016年の移住以来、イラスト「麒麟のいる街」の発表や、福知山マラソンへの参戦や観戦、ボランティア参加、参加賞への描き下ろしイラスト提供など、地元を軸足に置いた活動にも積極的。直近では、図書館雑誌スポンサー制度(※1)でこうの史代が6誌の雑誌を提供している、福知山市立図書館の開設100周年を記念して「こうの史代『荒神絵巻』作品展」を開催(2025年)。またコロナ禍の日常を般若心経と共に描いた『空色心経』(2023年から発表、2025年単行本発売)でも、福知山を舞台にしている。
縁深い福知山での大規模展開催とあって、展示やイベントも盛りだくさんとなった。
福知山城公園の入口部分にある福知山市佐藤太清記念美術館。
美術館を北東側から見ると、隅櫓風城郭建築様式の特徴的な外観がよくわかる。
美術館の近くには、福知山市丹波生活衣館もあり。こちらでも、こうの史代によるライブペインティングが行われた。
門をくぐって白壁にそって進み、美術館へ。
ロビーのスペースをいっぱいに使って、ショップコーナーを設置。
展示エリアの入口では、ぴっぴらさんがお出迎え。
コンパクトな美術館ながら、壁面をフルに使って膨大な原画や資料を展示。前期後期にわけて、ほぼ総入れ替えされた。
スペースや展示物によって、多様な方法論で展示を行っていた。
ガラスケースの展示エリアでは、原画に加えて道具類などの展示も行われていた。
丹波生活衣館で行われたライブペインティングで制作された作品も展示。
あとがきとして、福知山を題材にしたミニ連載の告知も!
鉄道にまつわる作品を中心にフクレルに展示
サブ会場となったフクレルは、2023年に新築された鉄道保存展示施設。元々は、市内にあった福知山鉄道館ポッポランドが、耐震性の問題から休館。資金不足から、収蔵していた展示品を市内各所に分散展示する方向で検討されていた。そこに、個人から2億円の寄付があったことで、福知山城公園内に新築されることとなり、現在に至る。施設内は、昭和25年に福知山鉄道管理局(全国で27カ所しか設置されなかった鉄道管理局のひとつ)が設置されてから、鉄道の街として栄えた福知山の歴史を振り返る貴重な資料や、”貴婦人”として国民に愛されたC57型蒸気機関車の動輪などが展示され、鉄道ファンならずとも楽しめる魅力的な施設。フクレルでは、キッズスペースの向かいの壁面を、こうの史代展の展示スペースとして、鉄道にまつわるイラストなどを中心に展示した。子どもが鉄道玩具などで遊ぶかたわら、大人がこうの作品を楽しむ光景は、フクレルならではのシーンだ。
福知山城エリアでも、最新の施設となる福知山鉄道館フクレル。
展示エリアを入るとC57型蒸気機関車の動輪。取材日は、国鉄OBによる解説が行われていた。
鉄道ジオラマのエリアでは、高架前と高架後の福知山を再現。両者を鉄道模型が往来する。
フクレルでしか見られないヘッドマークや表示板などの貴重な資料も展示。
キッズコーナーも用意され、子どもが鉄道のおもちゃで思う存分遊べるようになっている。
こうの史代展の展示スペースは、キッズコーナーの向かいの壁面。
最新の施設らしく、天井が高く開放感あふれる作りもフクレルの魅力。
50枚以上の挿絵を制作した『日本の鉄道ことはじめ』(沢 和哉、1996年)や『日本の鉄道こぼれ話』(沢 和哉、1998年)のイラストを中心に展示。
註釈
- ※1 図書館雑誌スポンサー制度
図書館法の対象となる地方自治体が設置する公立図書館などは、利用料無料の原則があるため、収入はコピーマシンの利用料や自動販売機などに限られ、その運営費は各自治体の負担となっている。そこで、雑誌の購読料を企業や団体、個人などが負担し、図書館運営の一助とするために「図書館雑誌スポンサー制度」が考案された。スポンサーとなった企業や団体、個人は、スポンサー契約期間中は雑誌カバーなどに、広告を掲載できるのが一般的。スポンサー料(雑誌購読料)の支払いは、図書館が指定する納入業者(地元の書店)に行われるケースが多く、地元の経済活動活性化の一助となることから、数多くの地方自治体で採用されている。
福知山市立図書館の雑誌スポンサー制度についてはこちら。
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