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大都市・東京の〈虚構〉と〈現実〉を見つめる大迫力の展覧会『MANGA 都市 TOKYO』、いよいよ11月3日(火/祝)まで!

国立新美術館で開催中の大型展覧会『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』の会期終了が、いよいよ11月3日(火/祝)に迫っている。

《都市・東京》という視点で、マンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品をキュレーションした大迫力の大型展覧会。取り扱う作品は90 タイトル以上。実に500 点を超えるマンガ原画、アニメやゲームの制作資料や映像などを展示している。この機会を逃すと、なかなか見られなくなってしまうこの展覧会は、エンタテインメント作品を愛するファンにとって一度は見ておくべき展示だろう。

会期終了が間近に迫る中、改めてこの展覧会の魅力を紹介したい。

 

■“物語”の舞台として描かれた東京と、現実の東京。その相互関係とは?

この展覧会は、マンガ・アニメ・ゲーム・特撮などのエンタテインメント作品の舞台として描かれる〈虚構〉の東京と〈現実〉の東京の相互関係に着目。作品の中で描かれた東京の様相を紹介するだけでなく、〈虚構〉の影響を受けて変化した〈現実〉の都市・東京まで迫る。

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実に多くの作品で描かれる日本の都市・東京。

江戸と呼ばれた昔から、作品発表時点の「現在」の姿、そして作品発表時には未来であったまだ見ぬ姿まで。この展示では、こういった数々の作品を、空間的に、テーマ的に、様態としても整理し提示している。

まず「イントロダクション」の巨大都市模型と大スクリーンを使って、作品に登場する東京を空間的に把握。テーマ別展示となる「セクション1:破壊と復興の反復」「セクション2:東京の日常」で、作品の中の東京の姿と現実の東京を対比させていく。さらに「セクション3:キャラクターvs.都市」では、〈虚構〉として生まれたものたちが、〈現実〉の私たちの生活の中に入り込んできている現在の様態をも展示することが試みられている。

それでは展覧会の構成を見てみよう。

 

 

■イントロダクション:1/1000巨大東京都市模型

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展示室に入場すると、本展の目玉である、圧巻の巨大都市模型が眼前に広がる。

この模型は幅約 17 メートル、長さ約 22 メートル。東京都内を1/1,000で再現したものだ。

正面の大型モニターには、『AKIRA』(アニメ/1988)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(アニメ/2007)、『秒速5センチメートル』(アニメ/2007)、『ラブライブ!』(アニメ/2013)、『STEINS; GATE』(ゲーム/2009)、『ゴジラ』(特撮/1954)、『3月のライオン』(アニメ/2016)など数々の作品映像が映し出される。この映像に連動して、都市模型上では描かれているその場所がスポットライトで示される。さらに『シン・ゴジラ』(特撮/2016)では、ゴジラの攻撃で被害が拡がるのに合わせてライトの照射範囲を拡大。『機動警察パトレイバー2 the Movie』(アニメ/1993)や『グランツーリスモ6』(ゲーム/2013)では作中の移動に伴って、ライトの照射位置も移動する。

模型展示と映像を組み合わせた立体的な演出で、作品を東京という空間の中で把握することができる展示となっている。

左:『シン・ゴジラ』 / 右:『機動警察パトレイバー2 the Movie』

左:『シン・ゴジラ』 / 右:『機動警察パトレイバー2 the Movie』


 

 

■セクション1:破壊と復興の反復

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テーマ展示、最初のテーマは、「破壊と復興の反復」。

日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品では、未曾有の天災や未知の生命体の襲来、事件などにより、首都・東京が壊滅的に破壊され、そこから立ち上がっていく様が度々描かれている。

これには、〈現実〉の東京が、江戸と呼ばれていた時代から、火災や天災、戦災などによって幾度も破壊されながらも、復興を遂げてきたという歴史的事実とも関係していると斬り込む。

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こちらでは『ゴジラ』シリーズ(特撮/1954~)、『AKIRA』(マンガ/1982-90、アニメ/1988)、『新世紀エヴァンゲリオン』※新劇場版含(アニメ/1995~)を代表的作品として提示。

太平洋戦争が終結した1945年からわずか9年後に誕生した『ゴジラ』では、戦争や核兵器による破壊を想起させる。『AKIRA』 では、第三次世界大戦によって破壊されその後に建設される「ネオ東京」を舞台に、超能力者を巡る軍や反政府勢力の争いを描く。『新世紀エヴァンゲリオン』(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ含)は、首都・東京が壊滅した後、新首都として箱根に建造された“第3新東京市“が舞台となる。

こうした、代表的作品例に描かれた大規模な破壊とそこからの復興。そのイメージの源泉にあるのは、〈現実〉の東京が遭遇してきた災害等による破壊ではなかったか。

「東京の災害史とフィクション」では、〈現実〉にあった都市破壊が、作中に描かれた作品を示すことで、〈現実〉と〈虚構〉の関係性を探る。

「東京大空襲」では、回想シーンで1945年の東京大空襲が描かれた『千年女優』(アニメ/2002)と、架空歴史の戦後でその爪痕が描かれる『人狼 JIN-ROH』(アニメ/2000)が紹介される。

「関東大震災と帝都復興」では劇中で1923年の関東大震災が描かれた『帝都物語』(特撮/1988)が、「江戸の大火と大地震」では、江戸前期の1683年に起きた天和の大火(“お七の火事”)をモチーフにした作品『火要鎮』(アニメ/2013)と、江戸末期ペリー来航から2年後の1855年に起きた安政の大地震が作中で描かれる『陽だまりの樹』(マンガ/1981~86)が取り上げられている。

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■セクション2:東京の日常

セクション2のテーマは「東京の日常」。

東京という街と、そこに生きる人々の姿は、作品の中でどう描かれているのか。

江戸時代から現在にいたる東京と人々の姿と変遷を、舞台年代ごとに《プレ東京としての江戸》、《近代化の幕開けからポストモダン都市まで》、《世紀末から現在まで》の3つの時代に分け紹介している。

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《プレ東京としての江戸》では、作品の中に描かれた江戸時代の生活と風景をいくつかの視点で紹介する。

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江戸時代には立場によって異なる日常があった。〈町民の生活〉が『鼻紙写楽』(2003-09 /マンガ)などで、〈遊郭と遊女〉は『さくらん』(2001-03/マンガ)、『二つ枕』(1986/マンガ)などで、〈武士の生活〉は『竹光侍』(2006-10/マンガ)、『陽だまりの樹』(1981-86 /マンガ)などで紹介される。また、人々が暮らす「江戸の街の空間」も、〈江戸の街並み〉は『佐武と市捕物控』(1966-72/マンガ)などで、〈河と橋の街〉としては『百日紅~Miss HOKUSAI~』(2015/アニメ)などで紹介している。

 

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《近代化の幕開けからポストモダン都市まで》では、1868年の明治維新から西暦2000年前後までの人の暮らしと街の様相を、作品に描かれた姿を通じて年代ごとの章に分けて紹介していく。

「西洋の移植による近代化の幕開け」では明治時代の様子を『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―(1994-99/マンガ)』などで、「女性の社会進出と花開く大衆文化」では大正時代を『はいからさんが通る』(1975-77/マンガ)、『サクラ大戦』(1996/ゲーム)、『フイチン再見!』(2013-17/マンガ)などで、「戦時の壊滅と戦後復興」では太平洋戦争の影響色濃い昭和初期を『愛と炎』(1971/マンガ)などで紹介する。そしてここまでの章で取り上げた作品で描かれたものは、作品制作時点では「過去」であったことを調べて描き出していた。

だが、次の「高度経済成長の光と影」の章からは作品制作と同時代が描かれていくことになる。その時代時代のリアルな暮らしが、風景が、作品の中に息づいている。

「高度経済成長の光と影」では日本の高度経済成長期(1954-1973年)で変わりゆく日々とその中で生きる人々を、『あしたのジョー』(1967-73/マンガ)などで、「東京一極集中と過密都市の貌(かお)」では70-80年代中盤の東京の姿を『ルパン三世(PART2)』(1977-80/アニメ)などで、「バブルとメディア都市」では80年代中盤から90年代を『シティーハンター』(1985-91/マンガ)、『東京エデン』(1998-99/マンガ)などで紹介する。

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空間としてのアプローチでは「東京タワーと東京都庁舎」に着目する。

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東京を象徴するランドマークである、東京タワー(1958年竣工)と東京都庁舎(1990年竣工)の描かれ方を紹介している。東京タワーは『魔法使いサリー』(1966-68/アニメ)、『モスラ』(1961/特撮)、『美少女戦士セーラームーン』(1992-93/アニメ)などで、東京都庁舎は『ゴジラvsキングギドラ』(1991/特撮)、『残響のテロル』(2014/アニメ)などで描き出されている。

 

 

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《世紀末から現在まで》では2000年代の東京の姿を見つめる。

現在に至る近年の様相を、年代ではなく、描かれ方によって整理。視点が浮かび上がるアプローチを行っている。

『3月のライオン』(2007/マンガ)などから「色あせる東京」を。

『君の名は。』(2016/アニメ)、『時をかける少女』(2006/アニメ)などから「日常の風景に見出される美しさ」を。

『孤独のグルメ』(1994-2015/マンガ)、『34 歳無職さん』(2011-16/マンガ)、『くーねるまるた』(2012-18/マンガ)などから「終わりなき日常の小さな幸福」を。

『東京ゴッドファーザーズ』(2003/アニメ)、『ひとり暮らしのOL を描きました』(2015-17/マンガ)などから「東京のダーティリアリズム」を。

『映画クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ ブリブリ3 分ポッキリ大進撃』(2005/アニメ)、『おおかみこどもの雨と雪』(2012/アニメ)などから「都市の中の新たな共同体のかたち」を。

作品の中から浮かび上がる現在の東京の姿をそれぞれ見出し、提示している。

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「多様なサブカルチャーの台頭」では、東京の中の街ごとの様相に注目。

『すばらしきこのせかい -Final Remix-』(2018/ゲーム)などで“若者の街・渋谷”、

『龍が如く 極2』(2017/ゲーム)などで“東京最大の繁華街・新宿”、

『STEINS; GATE』(2009/ゲーム)などで“おたくの聖地・秋葉原”の姿を紹介する。

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■セクション3:キャラクターvs.都市

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最後のセクションでは、〈虚構〉として生まれたものが〈現実〉の東京に入り込んできていることを紹介。

街で見かけるキャラクターを、招き猫、福助人形、製薬会社のキャラクターフィギュアなど販売促進やキャンペーンPRに使われる「公共空間に現れるキャラクター」、『新幹線変形ロボ シンカリオン』(2018-19/アニメ)など「公共交通機関に現れるキャラクター」、『初音ミク』(2007~/その他)など「コンビニに現れるキャラクター」として紹介。

また「新たな聖地巡礼とモニュメント」では、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(1976-2016/マンガ)、『機動戦士ガンダム』シリーズ(1979~/アニメ)など観光資源として街中に出現することになったキャラクターモニュメントを紹介する。

本セクションの圧巻は、様態展示とも言うべきコーナー。

『初音ミク』がキャラクターとして起用されたキャンペーンを展開中のコンビニエンスストアの店舗を実寸大で再現。また車内広告が『ラブライブ!』シリーズ(2013~/アニメ)でジャックされた車両も再現された。都市の生活に入り込む様態を、場としてのコンビニエンスストア、鉄道の車両までも再現して現出させる意欲的な展示を見ることができる。

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展示室を出ると、ミュージアムショップも併設。展覧会のパンフレットやオリジナルグッズのほか、展示されている作品などの関連グッズが取り扱われている。

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国内最大級のMANGA総合展《MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020》は、国立新美術館 企画展示室1Eにて開催中。会期終了の11月3日(火/祝)まで残りわずか。

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《MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020》

会期/2020年11月3日(火・祝)まで

休館日/毎週火曜日(11月3日は開館。)

開館時間/10:00~18:00 入場は閉館の30分まで

会場/国立新美術館 企画展示室1E

展覧会サイト/ https://manga-toshi-tokyo.jp/

入場料/一般 1,600円 / 大学生 1,200円 / 高校生 800円

※混雑緩和のため、本展では事前予約制(日時指定券)を導入

詳細は、展覧会サイトチケットページを参照

https://manga-toshi-tokyo.jp/ticket/

お問い合わせ/03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

 
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