いま日本で見るべきストップモーション・アニメ作品 『JUNK WORLD』と『かたつむりのメモワール』
作品を作り続けていくために

――昨年ヒットした『侍タイムスリッパー』など、個人のアイデアや知恵に、大きな会社が目をつけることが増えていますが、そのあたりはいかがでしょうか。
堀 作ったものがよくて、見る目のある人が見てくれればというのはあるとは思います。ひとりで作ったというような作品は世の中にあふれているので、そのなかでも本当にトップを取れるぐらいの作品を作れるのだったら、当然注目を浴びるのではないでしょうか。
――『JUNK HEAD』が成功したポイントはなんだったと思いますか。
堀 そのころは、ほかに比較するものがなかったので、新しく感じてもらえたんだと思います。ちょっとタイミングが違っていたら、ただ趣味でやっている変わった人で終わったかもしれません。偶然の要素も大きかったと思います。
『JUNK HEAD』より――30分版の短編『JUNK HEAD 1』を作っているとき、自分が作りたいからという気持ちと、これは唯一無二のものになるだろうという思いのどちらが強かったのでしょうか。
堀 両方です。結局は一緒です。もうただひたすら映画が好きで、どうせ作るなら、見たことのないものを作ろう。自分が作る以上はこうしたい、みたいなことを詰め込んで作ったら、こうなっちゃったみたいな感じでしたから。
――ストップモーション・アニメの可能性について、どのように思われますか。
『JUNK WORLD』より堀 かわいらしい人形を使ったコマ撮りアニメというのは、これからも安定して人気があると思うのですが、自分が目指しているのは、それとは違うもっと実写に寄せたような作品なので、これからもSF的なジャンルで攻めていきたいです。そのなかで、コマ撮りアニメの地位も確立していきたいです。
――その第1歩がJUNKシリーズ最終章だと思うのですが、もう物語の構想は決まっているのでしょうか。

堀 制作はある程度進んでいて、これから脚本を作って絵コンテに取り掛かっていきます。数年後の公開を目指しているので、年内はその準備作業に専念します。
――これからも数年に1本のペースで作品を作っていくのでしょうか。
堀 1〜2年に1本は作りたいという思いはあります。自分ひとりでは無理なので、今回手伝ってもらったスタッフを中心に任せられるチームを作って、自分は脚本や絵コンテまでをがっちり詰めて、撮影を別のチームに任せれば、2班体制のかたちが作れます。そうすれば、もう少し早く作品を作れると思います。
――作品を連続で作っていくための体制を整えるということですね。

堀 いまのスタッフは特殊な技術を持っていて、彼らがいないと作れないような映像もたくさんあります。作品制作が単発で間が空いてしまうと、そのスタッフを手放さなければならなくなる。それはもったいないので、場も作ってちゃんとチームを育てるというのが目標です。

堀貴秀(ほり たかひで)
1971年生まれ。大分県立芸術短期大学付属緑丘高等学校(現・大分県立芸術緑丘高等学校)卒業後、アルバイトを転々としながら芸術家を目指す。2000年にアートワーク専門の仕事で独立。商業施設などの壁画やエイジング、造形物の施工、自ら設計施工したダイニングバーの経営、操り人形の製造と販売などを行う。仕事と並行しながら表現活動を続け、2009年に30分版の短編『JUNK HEAD 1』の自主制作を開始。2013年に完成後、アップリンク渋谷で1日のみ自主上映。2014年1月にYouTubeにて無料公開。同年2月にクレルモンフェラン国際映画祭でアニメーション賞を受賞。3月には、ゆうばりファンタスティック映画祭で短編部門グランプリを受賞。2015年に長編『JUNK HEAD』制作開始。2017年に完成後、数多くの海外の国際映画祭に出品され、ファンタジア国際映画祭で最優秀長編アニメーション賞、ファンタスティック映画祭で新人監督賞を受賞するなど、入賞入選多数。同作は2021年3月、日本で劇場公開され、大きな反響を呼ぶ。2022年、3部作の第2作となる『JUNK WORLD』制作開始。2025年6月『JUNK WORLD』が劇場公開。現在、3部作の最終章となる『JUNK END』の制作が進行中。
『JUNK HEAD』©2021 MAGNET / YAMIKEN
『JUNK WORLD』 ©YAMIKEN
2025.5.29 SME六番町ビルにて
取材:齊藤睦志、ヤマモトカズヒロ/
構成・TEXT:齊藤睦志
写真:諸星和明/映像:尾崎健史/
プロデュース:ライトスタッフ(山本和宏・岩澤尚子・緒方透子)
VECTOR youtubeでも動画版インタビューを公開中!
■『JUNK WORLD』監督・堀貴秀インタビュー 前編
■『JUNK WORLD』監督・堀貴秀インタビュー 後編
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