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いま日本で見るべきストップモーション・アニメ作品 『JUNK WORLD』と『かたつむりのメモワール』

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少数精鋭のスタッフで思い通りに作る

――美術のセットやキャラクターのデザインが魅力的です。前作のバルブ村や今回のカープバールの街などのデザインは、どのようにしてかたちにしていくのでしょうか。

『JUNK WORLD』より

  おおもとのイメージについては、昔から映画を大量に見ていたので、頭のなかのいろんなところに残っているイメージが勝手に組み合わさってできているだけで、具体的にこれというものはないんです。実際に制作する際は、自分のなかで湧き上がってくるイメージをもとにラフな絵を描いて、それをスタッフに渡してかたちにしてもらいます。今回のスタッフは、6人ぐらいの少人数なのですが、絵を渡せばかたちにできるチームになってきたので、ある時期からは任せています。

――前作はほぼひとりで作られたんですよね。

『JUNK HEAD』より

  最初の30分版までは、全部ひとりですね。その後、映画にする段階で3人くらい増えましたが。やっぱり好きじゃないと続かないという世界で、スタッフには無理をいってやってもらっています。いまはみんなが協力してくれて、なんとか作れているのですが、それはあまりよくないことなので、普通に仕事をして定時で帰るみたいなやり方を目指したいと思っています。

――チームのスタッフはどのように集めたのでしょうか。

  自分が30分版を発表した時がそうだったのですが、作品を世に出すと、それに賛同してくれる人間は絶対いる。その流れで人が集まるのが理想です。30分版のときは内装の仕事をしながらひとりで作っていて、ブログでこんなのを作っているという発信をしていました。すると、近くに大工の方が住んでいて、手伝いたいといってきたので、アルバイトをしてもらった。その後に長編の予算がついたので「一緒にやらない?」と声を掛けて、そこからはずっとスタッフとして加わってもらっています。

――『JUNK HEAD』は、主人公視点で世界を知る構造でしたが、今回は群像劇的に描かれ、時間と空間を行き来する複雑な構成になっています。今回こういう物語にした理由は?

『JUNK WORLD』より

  時間を行き来する物語は、SFの中では定番なジャンルで、それに挑戦してみたいという狙いがありました。また、前作で地下世界を舞台にしたのと同じ理由ですが、時間ものにすれば同じセットを使い回せる。セットを作る数も半分ぐらいでできるという、制作と予算の都合で考えた部分もあります。

 

――時間を行き来する構想はあったのでしょうか。

『JUNK WORLD』より

  それは元々あって、こっちから見たらこうなるというような、見方が変われば物語が全部変わってしまうものを、ずっとやってみたかったんです。ちょうど『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)のようなマルチバース作品が評価されだした時期で、出遅れた気もしましたが、見る人にとっては理解しやすくなったのではないでしょうか。

――前作はキャラクターのしゃべりが言葉ではなく、ゴニョゴニョという感じのものに字幕が付いていましたが、今回は言葉が日本語だったのも意外でした。

  前作のゴニョゴニョというのは、声もほとんど自分ひとりで演じていたので仕方なくというものでしたが、やってみたらそれがウケてしまった(笑)。今回は前作に比べてセリフも倍くらいに増えたので、わかりやすさのために日本語にしています。でも、前作がウケたということもあって、今回もゴニョゴニョの日本語字幕バージョンも作りました(編注:取材当日がゴニョゴニョ版の情報解禁日で、インタビュアーもこの時知った)。それは、別バージョンというわけではなくて、吹替版と日本語字幕版があるみたいなことにしたいと思っています。

――そちらもぜひ見ようと思います。今回はキャストのクレジットが映画のなかにありませんでしたが、どういった方が声を当てているのでしょうか。

  前作同様、今回もスタッフ3人ぐらいで全部の声をやりました。結局、ひとりでキャストも監督も照明も担っているのは基本的に一緒ですが、それをわざわざいうのもちょっと嫌で、今回はもう監督エトセトラ=堀貴秀にしています。

――プロの声優を使わないことに関して、なにか理由があるのでしょうか?

  単純に予算がないとか時間がなかったというだけです。本当はプロの方にやってもらってもよかったとは思いますが、自分たちでやってみたらそれっぽくできてしまったので、じゃあそれでいいかなという感じです。

――制作体制としては、前回は監督の工房・作業場で作られたそうですが、それは今回も同じでしょうか。

『JUNK HEAD』より

  そうですね、建物はもうボロボロなんですけど、ギリギリなんとか持ちこたえました。今回、どれだけ稼げるかで、もっといい作業場に行けるかどうか、といったところです。

――少人数で作ることのおもしろさはどんなところにあるのでしょうか。

『JUNK WORLD』より

  制限なく自分のやりたいことができるところですね。大規模な作品だと、資金を回収しなきゃいけない都合もあるだろうから、「もっとこうして」という指示が出てくると思うんですよね。でも低予算であれば、あまりそういう部分を気にせずに作れる。もうそれだけだと思います。少人数で作る理由は「気持ちよく作りたいから」ですね。

――ゆくゆくは大規模作品を作りたいという気持ちはありますか? それともこの路線を続けていきたいのでしょうか。

  スタッフを増やして、スケールの大きな物語を作れるようになるのは目標としてあります。そのために、まずは自分の意思が通じるチームや体制をしっかり作りたいと思っています。

『JUNK HEAD』©2021 MAGNET / YAMIKEN
『JUNK WORLD』 ©YAMIKEN

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