AnimeJapan 2025 「宇宙戦艦ヤマト」放送開始50周年記念ステージ レポート
2025年3月22日〜23日、東京ビッグサイトにおいて世界最大級のアニメイベント「AnimeJapan 2025」が開催された。「アニメのすべてが、ここにある。」のキャッチコピー通り、国内外の映画会社のアニメ部門やアニメスタジオが特設ブースを出展して、新作アニメーションをPR。そのなかの注目作を紹介すると共に、放映から50周年の節目を迎えた『宇宙戦艦ヤマト』のトークショーの模様をお届けする。

各社が自慢の新作アニメ作品をPR
東映アニメーションブースの注目は、4月6日スタートの『ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ』の展示。水木しげる没後10年の節目に、過去に放送された第1期~第6期のなかから、歴代声優陣らが選んだエピソードを毎週1話放映する。映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(2023)の大ヒットなど、まさに国民的アニメとなっている「鬼太郎」だけに、今後の展開が見逃せない。
農業機械や建設機械、マリン用機器などで有名なヤンマーホールディングスが制作し、現在放映中の『未ル わたしのみらい』も目を引いた。ロボット「MIRU」と人間の出会いを、5つのスタジオがオムニバスで描いたSF物語だ。ブースでは、キャラクターのデザインをあしらった農業用「痛トラクター」も展示。声優の大野智敬さん、依田菜津さんをゲストに迎えたミニトークショーも実施された。アニメ業界以外のアイデアとセンスが、どんな新風をもたらすのか、楽しみにしたい。
文化遺産となった『宇宙戦艦ヤマト』
VECTOR magazine的注目イベントは、今回から新設されたWHITEステージで開催された。1974年の放映から50周年の節目を迎えた『宇宙戦艦ヤマト』のトークショー「『宇宙戦艦ヤマト』放送開始50周年記念ステージ」だ。

登壇者は、4月11日に上映が開始された『ヤマトよ永遠に REBEL3199第三章 群青のアステロイド』を手掛けた福井晴敏総監督(左)、マザー・デザリアム役の潘恵子さん(右から2番目)、恵子さんの娘でサーシャ役の潘めぐみさん(左から2番目)、アニメ特撮研究家の氷川竜介さん(右)だ。
50年前、『宇宙戦艦ヤマト』のファンクラブを結成し、会長を務めていた高校2年生の氷川少年は、アニメ制作を担当していたオフィスアカデミースタジオの見学に赴き、「設定資料」や「細密な製作工程」を目の当たりにして「すごいと思った作品には、すごくなる理由がある」ことを知ったという。
「こんな作品は見たことがない、これテレビで放送していいの? というくらい圧倒的に新しい、未知の世界に連れて行ってくれた作品です。第1話でも全然、説明がないし、そもそもヤマトが登場しない。当時、人類を征服するぞ、という敵と戦うのが普通のアニメだったのですが、14万8千光年のかなたに飛んで行ってしまう。そのスケール感の大きさに、クラクラしちゃいました」と氷川さん。
「1975年3月の春休みにスタジオが解散しちゃうというんで、捨ててしまうという原画類やセル画や美術画を『日本の文化遺産なんです」といって、仲間たちと一緒にかき集めました」

その氷川さんの熱意は、『庵野秀明 企画・プロデュース/放送50周年記念「宇宙戦艦ヤマト 全記録展」』※で見ることができる。展示されている初期の資料は、氷川さんが制作スタジオから譲り受けたものが中心だ。
「設定画やアニメの原画の生原稿を見ると鉛筆線の細かいところ、薄いところまで出ています。それを見ると、アニメがアートだと感じると思います」

福井総監督は、氷川さんの次の世代のファンだ。
「第1作の映画版『宇宙戦艦ヤマト』をテレビ放映で見たのが『ヤマト』との最初の出会い。夜9時から始まって11時半くらいに終わるんですが、その2時間で地球が滅んでよみがえるんですから。印象に残っているのが、一緒に見ていた親戚のおばさんが、『これ今日中に終わるの?』って(笑)。それまで観ていた番組とは、全然違うものを見せられましたね。そんなものをはじめて観て、すごいなと感動しました」
「これが自分のクリエイターの原点のひとつだと思う」と福井総監督は語ってくれた。
50年の時を超え受け継がれる母娘のバトン

潘恵子さんは、TV版の続編『宇宙戦艦ヤマト2』(1978)に声優として出演したのが『ヤマト』との出会いだった。その後、1980年公開の映画『ヤマトよ永遠に』ではヒロインのサーシャを演じ、最新作『REBEL3199』では、娘のめぐみさんがサーシャ役を引き継いだ。
めぐみさんは「母から役を継がせていただく形は、今までなかったんです。光栄と思いつつも、サーシャとしてこの艦に乗れるのか? と心配もありました」と当時の心境を語り、「収録が始まる前、福井さんが考えるサーシャ像を伝えてくれる“サーシャタイム”というのを作っていただいて(笑)、お話ししながら、本作のサーシャ像を作っていったんです」とエピソードを披露してくれた。

恵子さんは、敵方のマザー・デザリアムを演じ、40年以上の時を経て、再び『ヤマト』に出演することになった。当初は「もう72歳だから」と出演を断り続けていたら……。「福井さんからメールがきたんです。『僕の書いた脚本(ホン)ではダメですか?』って」と恵子さん。それを受けて「いやじゃないです!(笑)」と承諾したそうだ。
『REBEL3199』の製作が進んでいくと、オリジナル版『ヤマトよ永遠に』のエッセンスは残しつつも、展開が大きく変わってきたという福井総監督。「展開の先には、まったく知らない世界があります。なぜ潘恵子さんを敵のマザー・デザリアムにすえたのか。最終回のセリフを聞くと、ああそうかとなると思います。そのひとことのために恵子さんをお呼びしたんですが、答えあわせは2年後です (笑)」と今後の展開を暗示する意味深な言葉を残した。

最後に、ファンへのメッセージとして恵子さんは……。
「すばらしい映像とすばらしい音響と、福井さんが描く人物はものすごく濃くて、大切なメッセージを送ってくれます。私の時代の方も、新しい時代の方も、大切な人を連れて一緒にご覧になっていただきたいなと思います」
めぐみさんは「『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第二章 赤日の出撃』公開の時、新宿ピカデリーにヤマトの模型が展示されていて、親子三代で見に来られている家族の方がいました。第三章は、そうした世代を超えたお話で、ズンと心にくると思います。いまを生きている人たちと、これまで生きてきた人たち、そして、これからを生きていかなきゃいけない人たちへのメッセージが込められたお話だなと思っています」。

最後に福井総監督は「『ヤマトよ永遠に REBEL3199』第三章を、何度も観にきていただければと思います」と締め、会場は笑顔と拍手に包まれた。
TEXT:幕田けいた
- ※ 『庵野秀明 企画・プロデュース/放送50周年記念「宇宙戦艦ヤマト 全記録展」』
東京会期は終了。大阪では2025年7月19日から2025年8月3日まで、大阪・なんばスカイオ 7Fコンベンションホールにて開催予定。詳細は展覧会公式サイト(http://tfc-chara.net/yamato50th/exhibition/)をチェック。

『ヤマトよ永遠に REBEL3199』
原作:西﨑義展
製作総指揮・著作総監修: 西﨑彰司
総監督:福井晴敏
監督:ヤマトナオミチ
シリーズ構成・脚本:福井晴敏
脚本:岡 秀樹
キャラクターデザイン:結城信輝
メカニカルデザイン:玉盛順一朗・石津泰志・明貴美加
CGプロデューサー:後藤浩幸
CGディレクター:上地正祐
音楽:宮川彬良・兼松 衆/宮川 泰
音響監督:吉田知弘
アニメーション制作:studio MOTHER
アニメーション制作協力:サテライト
配給:松竹ODS事業室
製作: 宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会
公式サイト:https://starblazers-yamato.net/
©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会