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10月9日放送開始! 『ルパン三世 PART6』の野望

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ルパン三世 激動の半世紀

©モンキー・パンチ/TMS・NTV

すべてはここからはじまった! 原作コミックの誕生

故モンキー・パンチ氏による原作コミックシリーズ『ルパン三世』が誕生したのは1967年。安保闘争から成田闘争へと続く学生運動華やかなりし時代であり、マンガ界では貸本漫画から続く「劇画」が市民権を得て、少年漫画へと影響を広げている真最中であった。
そんななか、「WEEKLY漫画アクション」(双葉社)で『ルパン三世』の連載が開始される。隆盛を極めた劇画の世界観に欧米のアートスタイルを取りこんだ、斬新なピカレスク・ロマンであった。1969年までの、わずか2年という連載期間ながら、作品は絶大な人気を得ることになった。
(その後、TVアニメ(PART1)放送に合わせ1971年から『ルパン三世 新冒険』が、TVアニメ(PART2)放送に合わせ1977年から『新ルパン三世』が連載された)

粋でクールなTVシリーズ(PART1)が誕生

そして1971年、日本テレビ系列で『ルパン三世(PART1)』の放送が開始される。ルパン三世役に山田康雄、次元大介役に小林清志、石川五ェ門役に大塚周夫、峰不二子役に二階堂有希子、銭形警部役に納谷悟朗という配役でのスタートであった。
「ハードでクールな大人向けアニメ」が志向され、緑色のジャケットをまとったルパン三世の粋なアクション、大隅正秋(現・おおすみ正秋)によるクールな演出、山下毅雄のジャジーな劇伴音楽などが相まって、それまでにないアニメ作品が誕生したのである。
しかしその斬新さゆえか、視聴率はシリーズ序盤から低迷し、「子供向け」への路線変更を余儀なくされた。そうした状況のなか演出を引き継いだのが、高畑勲と宮崎駿だった。結果として同シリーズは、大隅のハードボイルドと高畑・宮崎のコミカルタッチが共存する、非常に稀有な作品となった。
当初こそ振るわなかった視聴率だが、繰り返し再放送されるにつれ、シリーズの人気は徐々に高まっていった。そしてしばらくのブランクをはさみ、赤ジャケットで知られるPART2の放送と進んでいくのであった。

コミカル路線を極めたTVシリーズPART2へ

1977年に開始された『ルパン三世(PART2)』は、「子供でも楽しめるファミリー向けのコメディアニメ」がコンセプトとされた。ルパン一味の悪漢ぶりは薄らぎ、よりエンタテインメント色が強くなったのだ。音楽は山下毅雄から大野雄二へと交替し、よりジャジーで軽快なテイストへ。レギュラー陣の声優は、五ェ門が大塚から井上真樹夫へ、不二子が二階堂から増山江威子へと変更された以外はPART1を踏襲し、以後長きにわたりこの体制がシリーズを支えることとなる。
こうしたひとつひとつの路線確立が相乗効果を生み、PART2は当初より高視聴率を獲得する。世は『宇宙戦艦ヤマト』の劇場版公開で爆発したアニメブームの最中でもあった。本作はアニメファンの枠にとらわれない幅広い層に支持され国民的アニメとなり、およそ3年間で155話が放送されるという息の長いシリーズとなった。

劇場用アニメへ進出

高まる人気を受け、1978年には劇場版『ルパン三世(ルパンVS複製人間)』が公開される。吉川惣司監督によるこの作品はTVシリーズPART1当初のハードでクールなテイスト、世界中を舞台にしたエンタテインメント性に満ちた展開で好評を博した。
翌1979年には宮崎駿が監督として初めて劇場用作品に挑んだ『カリオストロの城』が公開される。可憐なヒロイン・クラリスの魅力、随所にちりばめられた奇想天外なアクションなどアニメーションらしい面白さに満ちたこの作品は、公開から40年以上経つ現在においても「名作映画」として不動の評価を得ている。

「原作重視」のTVシリーズPARTⅢが登場

PART2の放送終了から3年半を経た1984年、原作のクールなテイストを活かした「大人向けアニメ」として『ルパン三世 PARTⅢ』が放送される。ルパン三世はそれまでにないピンクのジャケットをまとい、デザインも原作コミックのテイストを活かしたものとなった。『PARTⅢ』放送中の1985年には劇場用3作目『バビロンの黄金伝説』が公開された。
1970年代後半からの家庭用ビデオデッキの急速な普及、レンタルビデオ文化の急伸を受け、1983年にはOVA=劇場公開でもTV放送でもない、ビデオパッケージでリリースされるアニメーション作品が誕生。
「ルパン三世」においても1987年に初のOVA作品『風魔一族の陰謀』が発表された。

TVスペシャルという、あらたな「主軸」が誕生!

そして1989年には、TVシリーズや劇場用アニメとはまた別の、あらたな展開が始まる。日本テレビ系列で放送する単発作品、いわゆる「TVスペシャル」である。記念すべき第1作は、『バイバイ・リバティー・危機一発!』(土曜スペシャル枠で放送)。『あしたのジョー』などで不動の地位を得ていた演出家・出崎統を監督に迎えた意欲作であった。1990年の第2作『ヘミングウェイ・ペーパーの謎』以降は「金曜ロードショー」枠へと移り、以後毎年1本のペースで放送される定番作品となった。出﨑は第2作以降もTVスペシャルの監督を務め、監修の1本を含め計5本に参加、TVスペシャルの定番化に貢献した。

名優の逝去という激震を受けて…

90年代は、TVスペシャルがルパン三世シリーズの主戦場となるが、1994年に激震が襲う。同年3月、ルパン三世役として長く愛されてきた個性派俳優・山田康雄が闘病生活のすえに逝去したのだ。同年のTVスペシャル第6作『燃えよ斬鉄剣』が、山田の最後の主演作品となった。
そしてこのとき、10年ぶりとなる劇場用第4作『くたばれ!ノストラダムス』が制作進行中であったが、山田の代役として急きょ白羽の矢が立ったのが、本人とも親交があったものまねタレントの栗田貫一であった。1995年4月に同作が公開、続く同年8月に放送されたTVスペシャル第7作『ハリマオの財宝を追え!!』で、栗田は正式に山田の後任となった。
翌1996年には、劇場用第5作『DEAD OR ALIVE』が公開されている。原作者のモンキー・パンチが監督をつとめ、キャラクターも原作コミックのテイストを最大限に生かした風貌という「原点回帰」の意欲作であった。アニメを取り巻く環境は、1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』からはじまる、ブーム再燃の時代に突入していた。

新世紀の「あらたなルパン三世像」を求めて

やがて時代はミレニアム(2000年)を超え、2001年のTVスペシャル第13作『アルカトラズコネクション』からはデジタル作画作品となった。 2009年には、TVスペシャル『ルパン三世VS名探偵コナン』が放送され、大きな話題を呼んだ。さまざまな可能性を秘めたクロスオーバー作品として注目され、のちに続編にあたる『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』(2013)が劇場公開された。
2010年のTVスペシャル第21作『the Last Job』で銭形役の納谷、不二子役の増山、五ェ門役の井上が作品から卒業し、翌2011年の第22作『血の刻印~永遠のmermaid~』から、それぞれ山寺宏一、沢城みゆき、浪川大輔へと交替した。
そして2012年、初のスピンオフ作品となるTVシリーズ『LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜』が放送される。監督・山本紗代、シリーズ構成・岡田麿里という女性クリエイターが作品の中核を担い、峰不二子を中心にルパン一味と銭形警部の若き日の姿を描いた意欲作である。
さらに2014年にはスピンオフ作品『LUPIN THE ⅢRD 次元大介の墓標』が発表される。劇場用作品『REDLINE』(2010)で話題を呼んだ小池健が監督、舞台出身の高橋悠也が脚本を務め、徹底してハードで危険な、アダルトなテイストを確立。目の肥えたルパンファンからも絶賛をもって迎えられた。以後、この「LUPIN THE ⅢRD」シリーズは2017年に『血煙の石川五ェ門』、2019年には『峰不二子の嘘』の3作品が発表されており、さらなる展開が期待されている。

満を持してのTVシリーズ再開!

そして2015年。30年ぶりとなる新たなTVシリーズ『ルパン三世(PART4)』の放送がついに始まる。
総監督に友永和秀、監督に矢野雄一郎、作画監督に横堀久雄というテレコム・アニメーションフィルムが誇る歴戦のアニメマンが中核を担い、「LUPIN THE ⅢRD」シリーズで実績のある高橋悠也がシリーズ構成を務めた。これまでの「ルパン三世」は基本的に1話完結方式であったが、初めてシリーズを通して描かれる大きなストーリーを導入。大きな物語に直結する本線ストーリーと独立したエピソードが併存するシーズ構成となった。サンマリノ共和国とイタリアを主な舞台とし、第1話でルパンと結婚するシリーズヒロインのレベッカ、ルパンを追うMI6のエージェント・二クスなど魅力的なレギュラーキャラクターも登場。30年ぶりの復活に恥じない印象的なシリーズとなった。
2018年にもTVシリーズ『ルパン三世 PART5』が放送される。『PART4』同様、テレコム・アニメーションフィルムが制作を担当、監督の矢野雄一郎、作画監督の横堀久雄がアニメーション制作の要所を締め、シリーズ構成・脚本には大河内一楼が起用された。「現代のルパン三世」をテーマに、最新のデジタル機器やネット環境が盛り込まれ、現代的なリアリティのあるシリーズとなった。また、「これまでのすべてのルパン三世を全肯定する」作品づくりが行われた。シリーズも、4~5話からなる中編4本と独立エピソード7本で構成。しかも中編4本は、物語としてつながっていて大きなストーリーが描き出されるという意欲的な設計がなされた。フランスを主な舞台に、シリーズヒロインのアミ、ルパンと過去の因縁を持つフランス警察のアルベール・ダンドレジー、銭形の忠実な部下・八咫烏五郎(やたがらす ごろう)などこちらも魅力的なレギュラーキャラクターが配された。また、「これまでを全肯定した」作品世界のため、ネズミ一族など原作由来のキャラクターやレベッカなど過去のアニメ作品に登場したキャラクター達が顔を見せている。
『PART4』『PART5』ともに、「ルパン三世」を現代的に再構築した堂々たるシリーズとなった。

ルパン三世シリーズの明日はどっちだ!?

時代ごとに新たな展開を導入し、新たな息吹を取りこみつつ広がってきたアニメ版「ルパン三世」。その大きな流れをずっと温かく見守ってきた原作者モンキー・パンチは、2019年4月11日に永眠する。
だが、「ルパン三世」は生き続ける。
同年12月には3DCGアニメーションで制作された初の劇場版『ルパン三世 THE FIRST』が公開され、さらなる可能性も開かれた。
そして2021年10月。新たなTVシリーズ『ルパン三世 PART6』がついに放送開始となる。
1クール目は“ミステリー”をテーマに描かれる。ミステリー作家の大倉崇裕がシリーズ構成を担当。辻真先、芦辺拓、樋口明雄、湊かなえ、押井守など、小説界・アニメ界を賑わす超豪華なゲスト脚本家の参加も大きな話題となっている。また、次元大介役が、PART1からずっと担当してきた小林清志から大塚明夫にバトンタッチされることも発表され、大きな反響を呼んだ。(初回放送分「EPISODE0―時代―」は小林が担当)。ミステリーというテーマ性の追求に新たなレギュラーキャストの参加もあり、本作はシリーズのなかでも大きな節目の作品となることは間違いない。50年分の歴史の重みを軽快に乗り越えていく、ルパンたちの姿におおいに期待したい。

TEXT:上川畑 博

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