Feature

プラネタリウムでしか体験できない360度コナンの世界!
プラネタリウム版『名探偵コナン 閃光の宇宙船(ペイロード)』制作秘話

Index

「コナンだから」を大事にする

――本作の反響はいかがですか?

藤堂  今回はチャレンジングな表現をいろいろやれたので、そこを評価いただく反応が多かったです。終盤の緊迫感があるカウントダウンシーンなどは、高評価をいただけました。

花光  プラネタリウム作品の配給って、まず博物館や科学館の方々に見ていただいて、いくつかある作品からどれを上映するか選んでもらうんです。今回、いろんなところで試写をしたときに、「これはすごいよね」とこれまでにない高評価をいただいて、たくさんの博物館や科学館の方に見ていただけたのは、すごくよかったです。

――本作は、2025年公開の劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』の舞台・長野県から上映がスタートしました。

花光  実は、映画に合わせて先行上映したわけではないんです。配給は4月から順次開始するんですが、プラネタリウムは子どもたちがメインターゲットではあるので、タイミング的に夏休みから上映される施設が多くて。

藤堂  最初に上映の告知をしてくださったのが長野県だったのは偶然なんですが、非常に“持っているな”と。映画でもプラネタリウムが出てきますから、それをねらって長野で先行上映をしたというほうが、格好がつくかもしれませんが、実際はラッキーでした(笑)。『隻眼の残像』の上映が始まった後に、聖地巡礼で「国立天文台 野辺山」へ足を運んでくださった方が、そのまま近くのプラネタリウムにも行ってくださって。よろこんでいただけてよかったです。

――原作にないオリジナルエピソードを手がけるときに、大切にしていることはありますか?

藤堂  プラットフォームに関係なく、お話作りのうえで「主人公をどう立てるか」ですね。事件やトリックを考えたとしても「それって刑事が解決することじゃないの?」という内容にならないよう、気をつけています。コナンという、小さくなった高校生の視座でしか見つけられないものがある、ということが作品の根幹にあるので。難解な問題を解くのがおもしろいんじゃないかと考えて、みなさんシナリオを書いてきてくださるんですが、「これは鑑識でバレるんじゃない?」とか「これは刑事がやらなければならないことで、コナンがすることじゃない」という内容になっている場合があるので、“コナンだから”というのは注意している部分ですね。

――「こんな方にぜひ見てほしい」というメッセージをお願いします。

藤堂  世界的に見ても、日本はプラネタリウムのコンテンツが非常に多い。教育の一環として僕らも見ていましたし、これからも未来の子どもたちや親御さんに見てほしいですね。ご家族やご友人と、プラネタリウムという特別な体験を、一緒の空間で共有するのは、すごく素敵だと感じているので。上映期間が長いので、見ていない方にもまだまだ見ていただけるチャンスはあります。ぜひ、足を運んでいただけたらうれしいです。

花光  藤堂さんがおっしゃったように、日本は世界でも2番目か3番目くらいにプラネタリウムが多くて、日本全国にあるんです。ただ、子ども館や科学館に併設しているので、どうしても小学校低学年から中学年向けの施設がほとんどです。海外では、科学を学ぶ場所である教育的プラネタリウムは、大人も行く場所という位置づけです。
そのため日本では、子どもにターゲットをしぼった作品が多くなるんですが、『名探偵コナン』の場合は、もう少し難易度の高い科学教育ができます。今回もお客様の反応を見ていると、カップルの方が「すごかったね」という感想を抱いてくださったりするので。大人も楽しめる映像表現や、レベルの高い科学テーマが扱えるのは、『名探偵コナン』だからこそなので、ファンの方もそうですし、幅広い層に見ていただきたいという気持ちがあります。

――ほかのコラボ企画とは違うのですね。

花光  小さい子ども向け作品でよくあるのが、キャラクターが宇宙に行っていろんな惑星をめぐるというパターンです。でも『名探偵コナン』は、リアリティが大事なので、コナンくんは宇宙に行けない。でもほかではあまりない、リアリティある表現ができるのが大きな特徴ですね。今作でいえば、ロケット発射シーンを緊迫感あるかたちで表現しています。

いつかコナンが宇宙で事件を解決するかもしれない

――今後、プラネタリウムコラボ企画で扱ってみたいキャラクターやテーマはありますか?

花光  怪盗キッドや平次が登場しているので、安室さんなどいろんな人気キャラクターが出る作品を作りたいなとは思っていますが、どうなんでしょうか?

藤堂  原作の展開に大きく左右されるキャラクターは、オリジナルエピソードではどうしても描きづらい部分があります。なので、登場させたいという話は出るんですが、極力登場を控えているんです。原作側の監修もあるので、どこまでできるのか、なかなか難しいですね。

花光  扱いたい科学テーマという話では、『名探偵コナン』では航空宇宙の最新技術をテーマにしたい。1作目のときは、探査機のはやぶさが帰還して話題になったのでそれを取り入れています。今回もアルテミス計画(月面への有人着陸や長期滞在などの計画)を紹介していますが、近い将来に人間が月に行くというのがリアリティある物語として成立するようになれば、コナンくんが宇宙に行く話も可能になるのかな、と。さきほど話したように『名探偵コナン』はリアリティも大事なので、現段階では難しいんですが、AIやVR技術とからめたり……。このプラネタリウムコラボが続いて、技術が進化すれば、宇宙空間で起きた事件を解決する展開もありえるんじゃないかと、楽しみですね。

――最新技術をテーマにするうえで、子どもが理解できるかどうかについて、気をつけていることはありますか?

花光  『名探偵コナン』は幅広い年齢層から支持されていますが、基本的にプラネタリウムは小学3~4年生くらいがメインターゲットです。でも学校教育だと、天文分野を習うのはもう少し上の学年です。だからプラネタリウムである程度のことを伝えようとすると、学校よりレベルが高い内容を提供することになる。だからといって、誰でもわかるような内容にするのも意味がないので、まずはプラネタリウムを通して、科学や宇宙に興味をもってもらえたらいいという気持ちでいます。100パーセントはわからないかもしれないけど、なにかを持ち帰ってもらいたいなと。ただ、自分の子どもをプラネタリウムに連れて行ってみると、例えば「ジャイアントインパクト説」という用語自体はわからなくても、「ぶつかって月ができた」というイメージは覚えている。だから、全部理解してもらわないといけないというより、次につながるきっかけになればいいなと考えています。

藤堂  『名探偵コナン』という作品自体もそうだと思うんですが、子どもだましな内容になっていないというのが、幅広い層に支持していただける理由のひとつだと思います。テレビシリーズは、夕方に放送されていて子ども向けではありますが、それはあくまでお茶の間で見られるという意味です。もちろん、表現に気をつけている部分はありますけれど。子どもって、わかりやすいことを求めているわけじゃないんですよね。「なにそれ⁉」って興味深く思うことが大事で、レベルが高いことを話しているのを見ると真似したくなったり、理解したくなったりする。そこからハマっていくのがいいかな、と思っているので、そこも『名探偵コナン』が、プラネタリウムと相性がいい部分かなという気がします。

――航空宇宙技術が進歩して、コナンが宇宙で事件を解決できるようになるまで、プラネタリウムコラボ企画が続くことを期待しても?

花光  ぜひ。教育現場の方々に熱く支持されているからこそ、デジタル版も4作目まで続いてきました。これからもずっと作っていきたいですね。

髙木啓明

花光 昭典(はなみつ あきのり)

1980年生まれ、神奈川県出身。
2011年、D&Dピクチャーズに入社。プラネタリウム番組の制作に多く携わる。
これまでに、プラネタリウム版『クレヨンしんちゃん』『すみっコぐらし』などを手がける。

藤堂真孝

藤堂 真孝(とうどう まさたか)

1983年生まれ、香川県出身。
2005年、トムス・エンタテインメントに入社。
テレビアニメーションや劇場版アニメの制作に従事。
『名探偵コナン』『ゼロの日常』『犯人の犯沢さん』などのプロデュースを担当。

 

 

TEXT:中島文華

VECTOR youtubeでも動画版インタビュー(前後編)を公開中!

 

■『名探偵コナン 閃光の宇宙船(ペイロード)』 花光昭典プロデューサー & 藤堂真孝プロデューサーに聞く 前編

 

■『名探偵コナン 閃光の宇宙船(ペイロード)』 花光昭典プロデューサー & 藤堂真孝プロデューサーに聞く 後編

次ページ▶ プラネタリウムシリーズ作品紹介

1 2 3 4 5

pagetop