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プラネタリウムでしか体験できない360度コナンの世界!
プラネタリウム版『名探偵コナン 閃光の宇宙船(ペイロード)』制作秘話

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D&Dピクチャーズ 花光昭典プロデューサー ×
トムス・エンタテインメント 藤堂真孝プロデューサー
インタビュー

プラネタリウムならではの映像表現が魅力

――プラネタリウムコラボ企画が生まれた経緯について、お聞かせください。

花光昭典(以下、花光)  デジタルアニメとしては、2012年の『星影の魔術師』が初めてですが、実はコラボ自体は25年以上前からやっているんです(1999年『天才天文学者へのメッセージ』、2000年『月夜のパーティーの謎!』)。昔のプラネタリウムはデジタル映像ではなく、スライド式の紙芝居のようなものを投影する形式でした。当時から『名探偵コナン』は、教育と親和性が高いということで、科学館からコラボの要望も強かったので、こうやってすごく長いお付き合いをさせていただいています。1枚の静止画をドームに映して解説するところからスタートして、いまではデジタル版も4作目まできて、映像表現の幅が広がったので、すごく進化していると思います。

――おふたりは以前からプラネタリウムコラボ企画に関わられていたのでしょうか?

藤堂真孝(以下、藤堂)  私は、『名探偵コナン』のテレビシリーズと劇場を長らくやらせていただいているんですが、プラネタリウムというプラットフォームは、はじめてでした。

花光  僕は、2作品目『探偵たちの星月夜』の最後くらいからたずさわっていて、本格的に参加したのが3作目『灼熱の銀河鉄道』ですね。前作でも、いろいろな映像表現ができたと思いますが、僕が慣れていない部分があったので、それを経験して今回はより深くお話しできたと感じています。ちなみに僕が入社したのは、1作目の『星影の魔術師』が完成したタイミングでした。天文の知識は、ほぼゼロだったんですが、『名探偵コナン』が好きだったので、研修期間中に試写を見て「いつか自分も」と思ったことを覚えていますね。

――新作を作るときは、まず花光さんから企画の提案をされる流れですか?

花光  そうですね。D&Dピクチャーズは、いろいろなプラネタリウム企画をやっていて、だいたい3~4年ごとに『名探偵コナン』の新作を作っているので、企画を考えて提案させていただきました。最初に「いまのプラネタリウムで、なにを取り上げるのが一番ホットか」という科学テーマに関するお話をして、そこから『名探偵コナン』にあうものを考えていき、そこが固まったところでトムスさんに入っていただき、シナリオ化する流れです。

藤堂  前作を制作したのは、たしかコロナ禍の前ですよね。コロナ禍以降は本作が初めてというのもあって、集客できない期間を経て、改めてプラネタリウムを盛り上げようという流れでお話をいただいたのだと思います。

花光  今回は、最初の企画案を出したのが2024年の年明けで、制作が本格的にスタートしたのは春ごろからですね。

藤堂  シナリオが春くらいにフィックスして、5月に種子島へロケハンに行きました。その後、9月いっぱいくらいで、一旦、映像として完成させた感じです。そこからプラネタリウムに落とし込む作業があるんですけれど。

花光  四角いテレビの画面とは違うので、ドーム空間にあうかたちにポジショニングするなど、作画していただいた後に細かい調整が必要になるんです。

――プラネタリウムコラボならではの魅力は?

藤堂  一番は視覚効果ですね。ほかのどの媒体でも表現できない、プラネタリウムに行かないと見られない映像なので。映画館で同じものを流しても、360度のドームと同じように見られません。プラネタリウムで見ていただくための最大限の表現をしていますから、そこが見どころですね。

花光  同じ『名探偵コナン』でも、すべてがテレビシリーズや映画とは違う表現になっているので、特別な空間を楽しんでいただきたいです。音響なども違いますから。前からだけでなく、後ろや天井からも音が流れます。場所によって、5.1chサラウンドというところもあれば、6chの場所(多摩六都科学館など)もあります。

藤堂  施設によっても、また違うんですね。座席が大きくリクライニングするので、視聴する姿勢も独特ですし、唯一無二の体験だと思います。

――服部平次が登場し、ロケットなど宇宙開発を取り上げるというのは、どのように決まったのでしょうか。

花光  JAXAの宇宙開発はホットな話題でもありますので、最初に決まったと思います。物語の舞台に関しても、これまではプラネタリウムや列車のなかなど限られた空間だったんですが、ロケット発射場がある南の島なら、これまでとは違うかたちの表現ができそうだと考えました。

開放的な空間なので、平次だとバイクアクションができていいんじゃないかということで、登場が決まりました。

――ロケハンでは、どういったところを参考にされましたか?


提供:トムス・エンタテインメント

藤堂  本編にも登場したJAXAさん、ロケットの発射台付近などですね。

花光  あそこは海岸線に面していて「世界一美しいロケット発射場」っていわれているんです。あとは、発射の指揮などを行う管制室の様子とか。

藤堂  島の様子はもちろんですが、ボートに乗って、沖から見える発射台の様子というのも本編に取り入れています。ただ、シナリオ段階にあった芸術祭のモデルの「種子島宇宙芸術祭」は、秋のイベントなので実際に見られず、資料をもとにしています。

――本編に登場する星座など、科学パートのくわしい内容は、初期の段階から決まっていたのですか?

花光  星座までは決めていないですね。基本的に「ここで星座の話」「ここではISS(国際宇宙ステーション)の説明」というように、スペースを用意した状態でシナリオを書いていただいて、そこに私たちが科学エピソードを入れていきます。

髙木監督の探究心が生んだダイナミックな魅力

――髙木監督に依頼された理由について教えてください。

藤堂  髙木監督は7~8年以上前から、主に『名探偵コナン』のテレビシリーズで貢献してくださっています。ダイナミックな芝居や感情豊かな表現で、本当に面白いフィルム作りをしていただけるんです。お客様を退屈させない演出に長けていらっしゃるので、ぜひテレビシリーズの髙木監督が演出した話数も見ていただければと思います。
2026年のテレビシリーズ放送30周年に向けて、数年前から戦略を考えているなかで、プラネタリウム企画の新作を提案していただき、時期的にもちょうどいいということで初監督の打診をさせていただきました。実力もさることながら、『名探偵コナン』をとても愛してくださっている方なので、その熱意をプラネタリウムにぶつけていただきたいと思って、私からご相談しました。

――髙木監督とお仕事をされてみて、花光さんはいかがでしたか?

花光  プラネタリウムならではの演出を尊重してくださったのが、ありがたかったですね。ロケハンのときから各所で熱心にメモを取られているのを見て、実制作が始まる前から、その姿勢に刺激をいただきました。

藤堂  今回は、絵コンテと演出、監督を兼任していただきました。絵作りのテクニックや見せ方はもちろんですが、一番の魅力は作品に対する愛情と、それをお客様に届けようという熱意ですね。とても勉強熱心な方なので、技術的な工夫もいろいろ考えてくださって、それがフィルムとして完成したので、たくさんの方に届けたいなと思っています。

――印象的なシーンについて教えてください。

花光  バイクアクションですね。従来のプラネタリウムは、キャラクターとのコラボ企画であっても、星空をゆったりと見るスタイルの作品が多い。でも『名探偵コナン』らしさを出そうと、今回はバイクアクションに挑戦できたので、新しい試みにぜひ注目していただきたいと思っています。

藤堂  縦方向の表現ですね。制作にあたって、改めて前作の『灼熱の銀河鉄道』をプラネタリウムで視聴させていただいたんです。そのときに、ドームで横スクロールの表現は視覚効果的にわかりづらいように感じたんです。そこで、より効果的な方法はなんだろうかと、同席した髙木監督ともお話をして「縦に表現するほうが向いているんじゃないか」となったんです。今回はH3ロケットを模したロケット発射シーン(作中ではTMS3ロケット)があるので、こういった縦方向の表現を軸にしたいと考えました。バイクアクションシーンもよく見ていただくと、縦方向の表現になっているので、そのカメラワークも見どころです。

花光  藤堂さんや髙木監督が、普段の四角い画面とは違う、ドームならではの演出をいままで以上に研究してくださったので、とても見やすいですし、プラネタリウムだからこそ楽しめる表現が多くなっています。どうしても見えやすい範囲での表現に収まってしまうことが多いんですが、今回はより見ごたえある作品になっているんじゃないかなと。

藤堂  過去3作品から、さらに一歩抜きんでた表現ができたと僕も感じています。

――ロケット発射を妨害する怪しい人物を、街中で探偵団が探すシーンも、ユニークな表現です。

藤堂  キャラクターが360度ぐるりと弧を描くように歩いているなかに、小窓表示で容疑者をピックアップするシーンですね。あれは、完成してドームで見るまで、どういう仕上がりになるかわからなかったんです。映像制作はこちらでするんですが、納品最終段階のチェックは、プラネタリウムではなくテレビモニターでしているので。でも実際にドームで見てみたら「こう見えるのか!」と感動しましたね。

花光  完成後にドームで見て調整はするんですが、何度もチェックする余裕はなかなかないんです。最近では、VRで疑似的にドーム空間を確認できるソフトがあるので、いったんそれで確認することが多いですね。

――過去3作と異なり、テレビシリーズの流用ではないオリジナルオープニング映像も見どころですね。

藤堂  オープニングはBoundary(バウンダリー)というCG制作会社にご協力いただきました。劇場で流れるようなオープニングをこちらでもやるのは、おもしろみがないなと思い、アメコミ風のドットを使った表現をして、色使いも特殊になっています。
僕と髙木監督の意見をすり合わせたうえで、打ち合わせさせていただいたんですが、叩き台を作ってみたら、花光さんも気に入ってくださって。

当初は、オープニングに360度見えるカットを入れる予定はなく、16:9の表現のみだったんです。でも、花光さんがノリノリになってくださった結果、最初と最後に360度見えるカットを組み込んでいただきました(笑)。オープニングだけでも、おもしろいフィルムができたと思います。

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