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実相寺昭雄監督を支えた名カメラマン・中堀正夫氏トークショー

2025年6月8日、神田神保町の「ブックカフェ二十世紀」にて、日本映画の名カメラマン中堀正夫氏のトークショーが開催された。今回は、実相寺監督を一番身近で見ていた中堀氏が、関わった作品をふり返りながら、実相寺監督の演出技術やセンスを分析。そのトークショーの模様をお届けする。

伝説的演出は撮影当日の朝に決まった!?

中堀氏(写真右)は、円谷プロダクションや日本現代企画などのTVドラマでも活躍し、現在も多くのファンを魅了し続ける実相寺昭雄監督作品を支えたカメラマンだ。司会は、映像評論家・映画監督の切通理作氏(写真左)が務めた。
トーク前半では、実相寺監督の生い立ちに着目し、なぜ長くコンビを組もうと思ったか中堀氏が述懐した。

幼少期を中国大陸で過ごした実相寺監督の日本的ではない感覚は、ドイツ帝国によって開発された青島の街や、続いて暮らした張家口(ちょうかこう)市に広がる砂漠の荒野が原風景だったからではないかと指摘。一方で、自然豊かな長野県松本市で幼少期を過ごした中堀氏は、第23回ロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞した1970年のATG映画『無常』のカメラマンを務めたとき、実相寺監督との感覚の違いを感じ「それを埋めるために、自分が役に立つのではないかと考えた」と、長年のコンビに至る秘蔵エピソードを披露した。

後半では、実相寺監督の代表作のひとつである、1968年のTVシリーズ『怪奇大作戦』第4話「恐怖の電話」と第23話「呪いの壺」のシーンを分析。近未来的科学による怪奇現象的犯罪を描いた『怪奇大作戦』は、子供番組ながらグロテスクだったり、重いテーマがある内容で、現在でも人気のSFドラマである。
「恐怖の電話」の現場検証場面での、1シーンを1カットで構成した伝説的演出は、撮影当日の朝にスタッフからの提案で決まったそう。監督の使用台本に記された最初の演出プランは、42カットにも細かくわけられていた事実がイベント参加者を驚かせていた(下の写真は、幻の演出プランに基づいた仮想コンテ)。

また「呪いの壺」で語り草になる寺院の炎上シーンに関しては、本編は京都のスタッフで撮影を行い、特撮は東京で撮影したそうだ。だが当日、来場していた作品スタッフから、燃える寺のミニチュアは京都の美術スタッフが作ったのではないかとの疑問も提起され、その回答は調査の上、次回以降のトークショーに持ち越されることとなった。

シリーズで開催されている中堀氏のトークショーは、映像制作の関係者も多数参加することもあり、貴重な意見や知られざるエピソードがイベント中はもちろん、イベント後にも飛び交うのが興味深い。満員のマニアをうならせたイベントは、盛況のうちに幕を下ろした。

次回のトークショーは、2025年7月20日(日)に開催。『ウルトラマン』の撮影現場で実相寺監督を初めて目の当たりにしたという中堀さんから「特撮の現場体験のはじまり」をテーマにうかがう。会場は同じくブックカフェ二十世紀。14時30分開場。15時開演。予約2000円、当日2500円。別途1ドリンク代500円が必要だ。

 

TEXT:幕田けいた

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