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没後15年、いま見返されるべき映画監督、今 敏の世界

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駆け抜けた10年と、未完になった『夢みる機械』

――『PERFECT BLUE』から『パプリカ』まで、4本の映画とテレビシリーズひとつが、わずか10年ほどの間に作られたというのが驚きですね。

丸山  これは個人的な僕の思いなのですが、不思議な10年間だった気がしています。『PERFECT BLUE』は、「1億円で映画1本作りましょう」みたいな感じで、ビデオ作品程度の予算と時間の映画作品なんです。それもあって納得できるデキではなかった。次の『千年女優』も赤字だった。なんとか今監督でヒット作を作りたいと、僕が「ギャグものやってください」っていったら、それがなぜか『東京ゴッドファーザーズ』になった(笑)。ギャグものというか人情ものですよね。でも、そういうエピソードやシチュエーション作りは、よくできている。でも興行収入は厳しかった。それで「ロボットものをやろう」と、今くんが赤いロボットと青いロボットと黄色いロボットを描いた。それが『夢みる機械』という企画で、オリジナルストーリーなので時間がかかるし、準備にお金が必要となったタイミングで、WOWOWさんが新しい展開を求めていたところに、『妄想代理人』(2004)を企画したら、通っちゃったので「やろう」ということに。今くんの企画だけれど、テレビシリーズだから全部誰かにやってもらう。若い人を育てることを含めてやってもらう、という条件で企画したのだけれど、シナリオや絵コンテ、キャラクターも全部彼が考える。結局誰かに任せることなく、基本的に全編今 敏の作品になってしまった。
結局、それで時間を食ってしまって、次の企画である『夢みる機械』までスタッフを拘束するのが難しくなった。どうしようかってなった時に、原作ものなら早くできるので、原作ものをやりましょうとなった。以前、筒井康隆さんと対談した時に、筒井さんが今くんを気に入ってくれて、「『パプリカ』をやってよ」といったらしいんです。僕は、筒井さんの原作そのままではできないんじゃないか、と思ったんだけれど、今くんはやりたいっていう。スタッフが動けるし、じゃあ『夢みる機械』はとりあえず置いておいといて、先に『パプリカ』をやりましょうと。結果的にはこれが一番時間がかかって、お金もかかった。でもこれまでの作品の成果や実績で、世界配給も含めていろいろできました。

――『パプリカ』は、今監督作品の集大成的な作品といってもいいでしょうか。

丸山  『パプリカ』は筒井康隆さんの原作ではあるけれども、あきらかに今 敏作品ですよね。遊びがいっぱいあって、全部真面目に作っているんだけれど、楽しんでいるところもある。今くんが筒井さんを好きというのもあって、一緒に声の出演もしましたし、やりたいことやって面白がっている。僕は時間がないとかお金がないとか、作品を作るときはいつも悪戦苦闘しているんです。いつも苦しんでいるんですが、『パプリカ』は僕にとっても作っていて楽しい作品になりました。
ただ、『夢みる機械』への着手が遅くなってしまって、『パプリカ』が終わって、「さあ『夢みる機械』に入ろうぜ!」っていうときに病気のことがわかったから、彼にとってもすごくショックだったと思います。

――『夢みる機械』は、どのくらいまで進んでいたのでしょうか。

丸山  シナリオは完成して、絵コンテは一部できていました。今くんは、並行して作画に入るので100カットぐらいは色までついている。かといって、その後を繋げることは、本人なしではあり得ない。僕は今 敏のいない『夢みる機械』はやりたくないんです。
前の作品が終わるころには、次の企画を必ずやっていましたから。作りたいって気持ちと、休むのは嫌だという気持ちがあったのかもしれません。生き急いだのかなと思うこともあって、そこにはつらい気持ちがありつつも、逆にこれだけの作品を残してくれてありがとうという気持ちの、両方がありますね。

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