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朱川湊人×大倉崇裕 作家ふたり「特撮」を語る

濃い。
真正のマニアである。
ノスタルジックホラーの旗手と本格ミステリーの俊英。
濃い作家二人が「特撮」を語った。

4月25日に東京・秋葉原の書泉ブックタワーでイベントが開催された。
『朱川湊人×大倉崇裕 「特撮」を語る』。
とにかくこの着想が面白い。
朱川湊人は新刊『無限のビィ』をはじめ、『かたみ歌』『冥の水底』など現実からフッと迷い込んでしまった異空間のような世界を舞台にした切ない物語を綴るノスタルジックホラーの旗手。大倉崇裕はTVシリーズ化された『福家警部補の挨拶』『白戸修の事件簿』など、魅力的な主人公キャラクターが活躍する本格ミステリーの俊英。作家として出版界で腕を競う二人に「特撮」を語らせるとは!
実は二人には共通点がある。
「ウルトラマン」の脚本を手がけたことがあるのだ。朱川湊人は『ウルトラマンメビウス』で32話「怪獣使いの遺産」、39話「無敵のママ」、40話「ひとりの楽園」の3本を。大倉崇裕は『ウルトラマンマックス』で7話「星の破壊者」、32話「エリー破壊指令」の2本を。
イベントの企画は書泉ブックタワー側から出たという。秋葉原という立地柄、濃いマニアの顧客が多いため「特撮」をテーマとしたトークイベントを企画したそうだ。『無限のビィ』の出版元・徳間書店から朱川のもとに話が行き、朱川が大倉に声をかけて実現した。朱川と大倉は『円谷プロ全怪獣図鑑』(小学館刊)での対談が初対面だったが、お互い《同じ種類の人間》と感じるところがあったという。
二人の「特撮」愛を、イベントでの発言とアフター取材で紹介する。

イベントトーク

朱川  大倉さんが「こないだ《ペテロ》(01)のガレージキット買っちゃったんです。3万円もして。こーんなに大きくって」っておっしゃってるの聴いた時に、この人ホントに馬鹿だなぁと(笑)。ああ、自分と同じ種類の人間だとわかったんですね。

大倉  対談相手にご指名頂いた時はドキドキだったんですが、怪獣好きで魂が通じているような感覚は私も感じてましたので。

朱川  今日はリミッターを外して喋ろうと思いますので。わかんないときは、わかんないって顔してくださいね。でも、あれでしょ、この中に《ウルトラマンセブン》(02)とかいう人いないでしょ?《ケムール星人》(03)っていう人いませんよね? そういう前提で行かせていただきます(笑)。

――おふたりの特撮との出会いは?

朱川  僕は1963年生まれで非常に幸せな世代なんですよ。小学校に入る前に『ウルトラQ』(04)、『ウルトラマン』(05)、『ウルトラセブン』(06)の本放送があって。小学3年生で『帰ってきたウルトラマン』(07)と『仮面ライダー』(08)。4年生で『マジンガーZ』(09)ブームがあって。「ガンダム」(10)は大学生のころですが、その頃は文学のほうに行ってたんで、「ガンダム」はちょっと乗り遅れた感じです。大学卒業してから『宇宙刑事シャリバン』(11)を見て「特撮」に戻ってきてしまいました。

大倉  私、怪獣が好きになったきっかけを実はよく覚えていないんです。よく聞かれるのですが。ハッと気が付いた時にはこういう風になっていたという感じです。唯一覚えているのは朝日ソノラマの「ファンタスティックコレクション」(12)を小学生の時に読んで、すごい感銘を受けたことですね。記憶がはっきりするのは中学の時に「ガンダム」の直撃を受けて、「ガンプラ」(13)にはまったことです。高校に入ったころ、ガレージキットという精巧にできている怪獣の模型が出始めて。高価なものなので金をどう工面したのか覚えてないんですが、それを作り始めて。そこから逆流する感じで本だったり、またちょうどビデオレンタルとかレーザーディスクとか出始めて、映像を見やすい環境になってきたので映像そのものにも戻って。高校くらいから一気にガバッとはまって……今に至るという感じです。朱川さんは一回文学の方に行ってらしたそうですが、私は実は一度も足抜けしてないんです。

――特撮に出会ったことと、いま小説家でいらっしゃることには関係性があるんでしょうか。

朱川  初期のウルトラシリーズ、『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』が僕にとって柱のような作品ですが、各話のタイトルがすごくいいんですよ。小さいころ各話のタイトルと登場怪獣が書いてある本を持っていて、それを全部覚えていて。ビデオとかない時代ですから、再放送の時に見るのが唯一のチャンスで。その時に今日は「空の贈り物」(14)だから、もうすぐあれやるぞ、なんて言ってました。俳句っぽいっていうのかな。物語をイメージできるタイトルが多いんです。大倉さん、「悪魔はふたたび」(15)は?

大倉  え?……あ、《アボラス》と《バニラ》(16)

朱川  じゃあ「禁じられた言葉」(17)は?

大倉  《メフィラス星人》(18)。

朱川  どんなお話なんだろうか、とワクワクドキドキさせてくれるタイトルなんですね。『ウルトラセブン』でも「悪魔の住む花」(19)とか「ひとりぼっちの地球人」(20)とか。東京創元社さんのSF小説みたいに良いタイトルがいっぱいあるんです。僕は、見逃してしまって見ていない回も、タイトルから、どんなお話なんだろうといろいろ想像したりしてました。その影響もあってタイトルの強い作品に惹かれるんです。少し大きくなって『人間椅子』(21)とか『屋根裏の散歩者』(22)に惹かれるのはもうしょうがないですよね。そこからさらに『人間失格』(23)に行っちゃて、結局小説の世界に入っちゃったわけなんです。ですので、子どものころに円谷プロ(24)の特撮作品に出会わなかったら、今とは若干違う人生を歩んでいたような気がします。もっともあの時代に特撮がないなんてありえないので。ただ少し遅いと「あっ!キリンも象も氷になった!」(25)とか「タロウの首がすっ飛んだ!」(26)とかって感じになっちゃいますからね。私が今小説書いているのも、結果的にはウルトラのおかげという部分がありますね。

『福家警部補の追及』
東京創元社

大倉  私の場合は、直接は関係ないかもしれませんね。でもちょっとしたきっかけにはなっているんです。私は朱川さんの5つ下、1968年生まれなんです。ですので最初に見たウルトラも『帰ってきたウルトラマン』で、しかも再放送だった。当時住んでいた京都では午後4時から1時間ウルトラマンの再放送をやっていたんですが、そのあとの時間、5時からはドラマの再放送をやっていたんです。そこで出会ったのが『特捜最前線』(27)。ウルトラの再放送の後にたまたま見たら、もうこれが面白くて。やはりまだビデオのない時代ですから、見られるときは食いつくようにして見てました。おそらくそれが、ミステリーとか犯罪ドラマを面白いと思うきっかけだったと思います。本を読む時に、ミステリーに手が伸びたのもそこからですね。いまはミステリーと怪獣、その両輪で人生歩んでる感じです。……怪獣のほうがちょっと勝ってるかな(笑)。

――現在は「特撮」をどのように楽しんでらっしゃいますか?

大倉  私はいまは《ガレージキット》が主流ですね。

朱川  大倉さんはクラフト派だからね(笑)。

大倉  映像は、今はいつでも見られるようになった。ブルーレイBOXもあればfuluのような配信でも『ウルトラマン』や『仮面ライダー』が見放題です。いい時代になったなぁというのと、反面、とにかく再放送を見るために学校から走って帰るほどの渇望感が薄れてしまったようにも思います。先ほどの「悪魔はふたたび」はもう50回以上も見てるのでこれ以上見てもしょうがないというところもある。そんなこともあって、今は副産物的な模型とか立体物が私の生活の中で《怪獣》の中心にありますね。

朱川  どれくらい持ってるんです?

大倉  中学のころから作ってまして、それ全く捨ててないんです。作ったものが250匹くらいかな。で買ったけどまだ作ってないのがあるので大体…400匹ぐらいじゃないですかね。

朱川  未完成のものも多いね。

大倉  ガレージキットは少数生産なので、出た時に買わないと手に入らなくなってしまうんです。それでどんどんたまっちゃって。今はもう部屋の半分占領されています。

朱川  部屋半分?それで済んでるの?

大倉  天井まで積み上げて、部屋半分です。10年くらい前は遊びに来た友達がこれを見て、「生きてるうちに作れるのか?」って言ったのに対し、「当たり前だ。作らないものは買わない。絶対作ってみせる」と豪語してたんですが。今46歳なんで、もうちょっと無理な気がしてきました(苦笑)。

朱川  僕もプラモデルが好きで。仕事場は3部屋あるんですが、そのうちの1部屋はクローゼットという名の倉庫(笑)。奥の方に見えてる怪獣を取りたくてもなかなか取れなくて。自分の手でパァーンと飛ばしてもっと遠くにやっちゃったり。ベータカプセル(28)落としてしまったハヤタ隊員(29)みたいに。僕もダメ度高いです。 そうだ、うち、子どもがふたりいるんですが、小さいときに英才教育しちゃって。朝起きてメガネをかける時に、必ずこうして(モロボシ・ダン(30)がウルトラセブンに変身するときのポーズ)「デュワッ!」ってやってたら、こどもたちもやるようになって。締め切りに追われて明け方に寝て、でもすぐ起きなくてはならないときに娘に起こされて、でもすごく眠くて苦しみながらパッと起きて「アマギ隊員がピンチなんだよ!」(31)と言ったり。そうしたら娘が「アマギ隊員がピンチになる頻度が高いね」って(笑)。

大倉  いい娘さんですね。

朱川  特撮あっての今の生活ですね。しかし、子どものころと違って、大人になると誰も止めてくれないからエスカレートしちゃうよね。

大倉  確かにそうですよね。

朱川  上野のおもちゃ屋さんの3階が模型売り場で、ガンプラいっぱい売ってたんですよ。僕も買おうと思って選んでたら、中学生くらいの子がお母さんと来まして。その子が買おうとしたらお母さんが「もうガンダムやめなさい!」と大きな声で言って。そうしたら売り場にいたお客さん全員がギクッて固まっちゃって(笑)。

――ご自分の小説で「特撮」に強く影響を受けた作品はありますか?

『無法地帯―幻の?を捜せ!』
双葉文庫

大倉  2001年くらいに『無法地帯』という小説を書きました。今みたいになるちょっと前くらいの秋葉原を舞台に、レアな怪獣のプラモデルの争奪戦が起こり、殺人事件に発展するという話です。当時マルサンというメーカーが出した《エビラ》(32)という怪獣のプラモデルがわりとレアで、オークションで400万円の値がついたというニュースがあったんです。それをヒントに《ザリガニラー》という怪獣をでっちあげて。

朱川  《エビラ》で殺されたらたまったもんじゃないね(笑)

大倉  編集担当さんも怪獣とか好きな人だったので、大いに盛り上がって書きまして。ですが、私これまでに20冊くらい本を出してますが、一番売れなかった本です。ただ続篇を書いてくださいと言ってくださる方の率が一番多いのもこの本ですね。

朱川  書かないの?

大倉  大好きな世界なので私は書きたいんですが、秋葉原も変わってしまって。社会情勢も違いますし、なかなかちょっと、という感じです。

『無限のビィ』
徳間書店

朱川  僕の方は、先ほども話したように、特撮が生活に密着しちゃってるので、文章書いてもそういうのは自然に出てしまいますね。それと発想が特撮チックだと思いますね。この前出した『冥の水底』は変身人間の話で、王道の《変身人間シリーズ》(33)に影響されている部分が強いと思います。『無限のビィ』も特撮チックな話ですしね。『無限のビィ』は結構分厚い本ですが、連載時はもっと長くてだいぶカットしたんです。カットした部分に特撮系のネタが多く入ってましたね。主人公たちが、「あれは《カメレオン男》か《死神カメレオン》(34)か」と議論するシーンとかね。

大倉  カットする必要あったんですか?

朱川  あまりに読者を置いてきぼりすぎたかなと思って。

――おふたりはウルトラマンシリーズの脚本に参加してますが、どのようなきっかけで?

朱川  『ウルトラマンメビウス』(35)で脚本を3本書いていますが、それは円谷プロさんからお話しいただきました。一部誤解があって、僕が書かせろって円谷さんにゴリ押ししたって言われてますけど、それは間違いです。最初の1本が続篇だった(36)ので、いろいろ叩かれたりする中でそんな話になってしまったようですが。
それまで脚本とか書いたことはなかったんですが、子どものころから円谷作品が大好きだったので、関われることが嬉しくてお話をお受けしたんです。僕はてっきり、自分がこういう話にしたいと言ったら、脚本のプロの方がたたき台みたいなものを作ってくれると思っていたんです。ところが『ウルトラマンマックス』(37)の台本を1冊渡されて、こんな感じで書いてくださいって。乱暴だよね(笑)。しかしなんで小説家が脚本書けるなんて思うんだろうね。
とにかく書けって言うから書いたんだけどさ。『ウルトラマンメビウス』はシリーズ構成が最初から最後までしっかり固まっていて、どのウルトラマンがどのあたりで出てくるとかビシッと決まっていたんです。自由に書いてと言われても、どこまで話の中に入れてよいかよくわからなくて。実は初稿書き上げるまで、ヒビノミライ(38)の正体がウルトラマンメビウスだとバレていることを聞かされてなくて。

大倉  ええっ!?それはいくらなんでも…

朱川  で、慌てて書き直し。そしたら今度は長いと。『メビウス』は30分番組なんだけど、正味20分くらいで、ウルトラマンと怪獣の戦闘シーンがあるから、お話は15分くらいでまとめないとダメなんですよね。それでキュウキュウにカット、カット、カット(苦笑)。まあ、それも今はいい思い出です。

大倉  自分が生み出した怪獣や宇宙人がおもちゃになるのもうれしいですよね。

朱川  そうそう!僕のは3匹のうちの一つが小さなソフビになっただけだけど、大倉さんのはちゃんとしたフィギュアにもなったよね。自分の怪獣がソフビになるというのは…

大倉  人生の中で事件。

朱川  もう大事件(笑)。大倉さんが参加したのは『ウルトラマンマックス』だよね。

大倉  『マックス』は、今うかがった『メビウス』とはちょっと違いましたね。『マックス』は新しい血を入れるというか、何でもアリの感覚で作ろうとしていたように感じました。最近も『ウルトラマンギンガ』(39)で監督をされていた梶研吾さん(40)という方がいて、以前から知り合いだったんですが、梶さんが「僕が監督するんだけど大倉くん1本書かない」と誘ってくださったんです。でも先ほどの朱川さんの話のように、小説家は脚本書けると現場の人たちが思っていたみたいで。

朱川  なんでだろうね

大倉  いきなり打合せに連れて行かれて、もう書くことになってるんです。脚本ってそれまで本当に見たことすらなかったんで。何とかして下さいと言っても、大丈夫、大丈夫って。結局梶さんに共同脚本という形で入ってもらって何とか第一稿を書き上げました。これ言っちゃって良いのかわからないんですが、どんな話を書いてくれってほとんど言われなかったんですが、ただ一言《ペガッサ星人》(41)みたいな話を、と。《ペガッサ星人》って簡単に言うけどあの話はテーマ性も深くて、複雑なんですよ。脚本一度も書いたことのない人間にいきなり《ペガッサ星人》とはすごいこと言うなぁ、と思いましたね。まあそこからいろいろ考えて《宇宙工作員》という設定が出来上がりました。
おかげさまで好評だったのか、後半でもう一本、同じ《宇宙工作員》で書いてくれという依頼が来ました(42)。今度はストーリー的なことは何も言われなかったんですが、予算がないんです、と。着ぐるみは新調できない。それはまあ1回登場したものを少し手を加えれば大丈夫だろう。昼と夜は変えられない。昼だったらずっと昼、夜だったらずっと夜にしてくれ。宇宙船ひとつ新しいものを出す余裕がないと言われてしまって。最終的にはどうしても必要という判断から、現場の方の尽力で宇宙船だけは新しいのを出させてもらいましたが。

朱川  僕の時もCREW GUYS(43)の制服を絶対濡らさないでくれって言われましたね。あと雨の中の戦いが難しいらしくて。『メビウス』の中で雨の中って僕の書いた《ゾアムルチ》(44)の回だけなんですね。《ゾアムルチ》は《ムルチ》(45)の後継機種みたいな感じなので、(《ムルチ》と《帰ってきたウルトラマン》の戦いが雨の中だったので)、メビウスとの戦いは絶対雨の中で、と言ったんです。撮影現場を見学させてもらったんですが、なんかすごいピリピリしてて。なんでこんなにピリピリしてるのかと聞いたら、感電するかもしれないからだと。そりゃあピリピリするよねってオチですが。

大倉  本当にピリピリしてたんですよね?

朱川  それもうほんとにピリピリしてました。感電が怖いから、本当は雨は使いたくない。それとCREW GUYSのユニフォームは革製なんで、絶対に濡らしたくないそうで。

大倉  撮影現場は過酷ですもんね。私もやはり自分が脚本書いたので嬉しくて現場見学させてもらったんです。横須賀の洞窟のシーンのロケでした。楽しくてずっと見ていたのですが、だんだん撮影が押してきて夜になった。そうしたら、大倉さんすみませんそこにいるなら手伝ってくださいって言われて。コード整理したりモノ運んだり。最終的に皆さんと一緒にロケバス乗って帰ってきました。2度目の時は、今はもうない東宝ビルドのスタジオ撮影でした。真冬で、メチャクチャ寒いんですよ。でもスタジオの中にあるストーブは監督のそばの一つだけ。電気の容量の問題らしく、これ以上つけるとブレーカーが落ちちゃうんだそうです。本番がかかるとそれさえも消される。本当に寒くて、途中で抜け出してカップラーメン食べに行っちゃいました。もうほんとに過酷ですよね。そのなかで長時間撮影されてるのを見て感服した覚えがあります。

――ウルトラシリーズ以外に自分で関わってみたい「特撮」作品はありますか。

大倉  一番は『大鉄人17』(46)ですね。視聴率が良くなくて一回路線変更されるんです。私の好きなものってわりと路線変更されるものが多いんです、『仮面ライダー響鬼』(47)とか『超人機メタルダー』(48)とか(苦笑)。『大鉄人17』は、前半ミリタリーテイストで、すごくかっこいいんです。前後篇構成で特撮もよくできて素敵なんですが、後半になるとだいぶ変わってしまって。最終話でだいぶ持ち直すんですが、ちょっと残念だった。だからそのあたりも踏まえて自分の中で1度再構築をしてみたいなぁと思います。

朱川  僕は『変身忍者嵐』(49)ですね。化身忍者という化け物みたいな忍者がいるヒーロー時代劇を作ってみたいんです。『嵐』には《月ノ輪》(50)という謎の西洋剣士が出てくるんですが、この人が主人公で、ヨーロッパで活躍する話を書きたいんです。という話を某出版社の方に話したら、どうぞどうぞ、他社でやってくださいって(苦笑)。

大倉  『嵐』って道具立てが完璧だし、面白くならないとおかしいはずなのに、なんとなく印象が薄いんですよね。

朱川  そこが気持ちを煽るんだよね。あの子寂しそうな顔してるから、俺が慰めてやりたいというような気持ちが(笑)。

――ほかに「特撮」で偏愛している作品はありますか?

朱川  僕と大倉さんとでは歳が5つ違いますが、初期の『ゴジラ』(51)シリーズ、初期の『ウルトラ』シリーズ、初期の『仮面ライダー』シリーズは全部別格扱いですね。

大倉  神です。

朱川  これらを除外したうえで言うと、東宝の変身人間シリーズの『ガス人間第一号』(52)が大好きですね。ゴジラ映画を見るためにオールナイト上映に行ったらプログラムの中に入っていて。基礎知識何もないまま見たんですが、不覚にも泣いちゃったんです。こんないい話なのか!と。そのうちに、なんでこれは俺が考えたものじゃないんだろう、と思うようになって。ものすごく印象が深くて、今でもお話を作るときに影響を感じますね。報われない愛情、とかね。

大倉  私は『仮面の忍者 赤影』(53)ですね。実は怪獣の出てくるあらゆる作品の中で一番好きなのが『赤影』の《アゴン》と《ドグマ》(54)なんです。

朱川  あのカブトムシとムカデみたいな怪獣?

大倉  特に《アゴン》が大好きなんですよ。だからかなぁ、『ジャイアントロボ』(55)とか『大鉄人17』とかに行くのかなぁ。

朱川  『赤影』は僕も好きだなぁ。忍びなれども、全然忍んでないけど。空飛ぶし、手からバズーカ砲でるし。

大倉  先日ブルーレイで「第二部・卍党編」を見ていたら、かみさんが横で見てて、「なんでこの時代にゴムがあるんや?」と。それを聞いて、思わず「もう見なくていいから。頼むから見ないで」と言っちゃいましたね(笑)。

朱川  横で素で突っ込まれるとね(苦笑)

大倉  レーザーガンとかまで出てきちゃうんで、そんなところまで見せたら何言い出すかわからない。だから今は家族が寝静まってからひっそりとひとりで見てます。

朱川  大倉さん、お子さん生まれたんですよ。この間。

――おめでとうございます!

会場  拍手

大倉  ありがとうございます。今8ヶ月になるんですけど、切実な問題は、怪獣たちをどうしようかなと。ガレージキットって意外に脆くて。子どもが手を当てたら頭とか取れちゃうだろうし…。

朱川  うちの娘、小さいときは全然平気だったのに物心ついたら怖くなっちゃたみたいで、怪獣の人形で泣き出すようになっちゃって。

大倉  それでどうしたんですか?

朱川  しょうがないから、じゃあ捨てようねーって言って娘の前でソフビをゴミ箱に捨てて見せるんです。そうすると安心するのね。で、娘が寝てからゴミ箱から出してしまうんです。

大倉  怪獣との共存ってなかなか難しいものなんですね…

――そろそろお時間ですので語り足りないことがあれば

朱川  皆さんにぜひもう一言、話しておきたいと思ったのが、もうひとつ別格だと思ってるのがありまして『仮面ライダー対ショッカー』(56)という映画なんです。藤岡弘さん(57)が事故から復帰して、桜島1号(58)と言われている仮面ライダーがスクリーンに登場、しかも初めて本郷猛が変身ポーズを取った(59)という、いろんな意味でプレミアム映画です。はっきりいってストーリーは、よくあるオールスターキャスト的な映画なんですが。怪人が自分の名前を間違えたりという突っ込みどころもあったり。

大倉  再生怪人ですからねぇ。

朱川  そういう映画なんですが、僕、この映画がすごく好きでね。というのは、エンドクレジットが出るところ、1号ライダーと2号ライダーがサイクロン号(60)で並走してる、その後ろにスタジャン着た子どもが映ってるんです。ライダーの後ろをすごく遠くから走って追っかけてる。僕、そこ初めて劇場で見た時から気付いてて、当時はそれがすごく嫌だった。あそこで、少年が(撮影されている)ライダーを追いかけてるってことは、画面の中は作り事の世界で、本当のことじゃないよって言われてるようなものですよね。それで、スタジャン小僧いらねぇって思ってたんです。ただこの歳になってくると逆に、スタジャン小僧映っててよかったなぁって思う。見ていただければわかりますが、仮面ライダーの後を追っかけて、すごく遠くから全力疾走してます。結構長いこと追いかけてる。仮面ライダーの方はエンジン付きなんで、どんどん引き離されて、やがて彼は小さくなって見えなくなっちゃう。あれは、あの頃の俺たちなんだなって思うんです。僕だって、道歩いてて、仮面ライダーがコスプレとかじゃなくてバイク乗って走ってたら追っかけますもん。

大倉  そりゃそうですね。

朱川  もっと深く考えたんです。スタジャン小僧を見て、これは作り事だと感じてしまうのは間違いなんじゃないかと。実は、映画の世界の中でも仮面ライダーは都市伝説的に存在していて、あのスタジャン小僧はそれを目撃して追いかけてきてるんじゃないか。彼は、あこがれの仮面ライダーに直にあってるんじゃないか。そう考えると、スタジャン小僧羨ましいって思うようになって。

大倉  スタジャン小僧は、僕らみたいな映画見ている一員じゃなくて、仮面ライダーがいる世界の住人なんですね。

朱川  そうなんじゃないかと。僕は、ひねた大人になっちゃったけど、今でもね、作品がどうのこうのより、ヒーローがカッコイイのが好きなおじさんなんです。今でも何かのきっかけで夢がかなって、ホンモノの、誰かのコスプレじゃない、本物のウルトラマンや仮面ライダーに会えないとも限らんと思ってるんです。

大倉  すごくわかります。

朱川  そういうことを夢想したりするんです。人間は死ぬ時、脳の中の酸素が欠乏して幻が見えるそうなんですね。その時に、仮面ライダーが来ないとも限らない。それは本物の仮面ライダーです。中屋敷鉄也(61)さんが入ってるんじゃない。ちゃんと、マスク取ったら本郷猛(62)が出てくる。

大倉  なるほど。

朱川  今の世の中、結構イヤなことばっかりじゃないですか。人のことアラ捜ししたり、非難したりするような事がすごく多くなって、何かちょっと生きづらい気持ちがします。今日集まってくださった皆さんは特撮が好きな人だと思いますが、せめて特撮好きな人たち、特撮好きな人たちは、夢を信じることが出来る人たちだと思うんです。そういう人たちが、きっと、世の中を変えていくんじゃないか。夢見ることができる人たちが。だからせめて、僕自身も、集まってくださった皆さんも、いつか本物のウルトラマンや仮面ライダーに会った時に、恥ずかしくないように頑張って行きたいもんですねぇと思うわけです。

大倉  ああ、なんか予想以上にすごくいい締めになりました(笑)。朱川さん、ありがとうございました。

朱川  大倉さん、皆さん、ありがとうございました。

アフタートーク

――「特撮」作品のどういうところに惹かれるのでしょうか。

大倉  私は特撮の中で「怪獣」が好きなんですよ。日常の中に突然ああいう巨大なものが入ってきて、何かが起こる。そこにすごく魅力を感じます。あと、脳内補完する感覚ですかね。その巨大なものを表現するするためにミニチュアで街を作る。頭の中ではこれはミニチュアだ特撮映像だとわかってるんだけど、脳内補完して、本物だと思いながらこうワクワクして見る。落語や本と同じで、自分の中でプラスαしたイメージを持って見ないと成立しないものだと思うんです。

朱川  僕は昔から、現実社会と少し怪しい世界の境目みたいなものがすごく好きなんです。祖父母がお寺のお坊さんなので、昔からお釈迦さんの世界とか馴染んでたんです。それもあって、この世以外の世界があるというのは、小さい時から自然に考えてた、というより感じてました。だから特撮のヒーローとかも、なにかのきっかけで本当にいてもおかしくない、と思ってます。そう思うとすごくワクワクしますね。大倉さんの言うように映像を見るときはミニチュアを脳内で変換するけれど、今こうやって現実の世界を見てる時も、あそこにあの怪獣がいたらあのへんの高さに頭があるなとか思うとね、けっこうクラクラっとするくらい佳いんですよ。

大倉  一種の病みたいなもんですね。

朱川  一種の病ですよ。だから『サンダ対ガイラ』(63)みたいな、いわゆる50メートルじゃない、25メートルクラスの怪獣は、より強烈な印象が残りますね。《フラバラ》(64)で、フランケンシュタインが団地を覗き込むところなんか特にすごい。目線が合っちゃう。ベランダの窓開けたらいるんだもんそこに。あれがすごく痺れる。現実社会とフィクションの境目を特撮でつなぐ、ということにとても魅力を感じますね。

――実際に特撮作品に参加して感じたことは?

朱川  イベントでも話しましたが、結構適当だな(笑)と。なんで小説家が脚本書けるって思うんだろうなぁ。

大倉  ほんと不思議でならないんですけどねぇ。ただ楽しかったことは楽しかったです。だからまたやれって言われたら、たぶん喜んでやるような気がします。

朱川  僕は小説のほうがいいなぁ。このシーンに何分かかるという時間の制約とか、撮影にかかるお金の制約とか全然無いですからね。

大倉  私はわりと逆に制約があったほうがいいですね。性格的なものかもしれませんが、そっちのほうが楽しくて。何でもやってくださいと言われると何もできなくなっちゃうタイプなんです。だから『マックス』の最初の時は、《ペガッサ星人》みたいなものをと言われて、その制約の中で考えました。私は脚本の専門家じゃないから、挑戦されてるような気がするんです。だったらやってやる、みたいな感じでしたね。

朱川  《ペガッサ》みたいなのってすごくアバウトな言い方ですよね。「夜何食べる?」「美味しいもの」って言われるようなもんです(笑)。もうちょっと言って欲しいですよねぇ。

大倉  (笑)。ただ、《ペガッサ》みたいなものって言ったっきり、後は何も口出しもなく、出来上がったものに対して、ああだのこうだのも全くなく、そういう意味ではものすごくやりやすかったですね。ただ、いまビッグになられた満島ひかりさんが、エリー(65)が私の脚本を読んで、一言、「これって、セリフが書き言葉ですよね」と。鋭い指摘ですよね。ああ俺やっぱり脚本家じゃないやと思いましたね。というのと、この人はすごくよく見てるなというのを感じましたね。現在の活躍の理由が判る気がします。

朱川  《ケサム》(66)が《ペガッサ》みたいに目が離れてないぞって文句は付けられなかった(笑)?俺は《ペガッサ》みたいにって言っただろって。

大倉  そこかぁ、デザインかぁ(笑)

――近年の特撮作品をどう見ていますか?

朱川  僕も大倉さんも、子どもの部分が残っているから、作品は見てます。でも子どもの時ほど愛せるかといえばそうでもない気がしますね。否定するつもりはありませんが。

大倉  私もそうなんです。でも一番重要なのは、今の子ども達の魂に響いてるのかどうかということだと思うんです。

朱川  あ、いいな、いいセリフ出た。

大倉  その子たちが大人になった時に我々みたいに、――我々みたいになってはいけないんですが(笑)、我々みたいな気持ちを持てるような番組ができればいいなと思うんです。でもそういう番組ができているかはちょっと極めて疑問ではあるなと。率直に言って。
でも、制作する人たちはすごく努力されていると思います。作品を見れば伝わってくる。だから続いていってほしいですよね。

朱川  ストーリーも昔に比べると、すごく綺麗にまとまったお話が多いね。

大倉  そうですね。

朱川  見ていて安心はできる。ただ、次こうなるのかなと思ったらやっぱり、ということも多い。そろそろその辺を外してくるのが出てこないかな、と。 どんな娯楽作品でも、制作当時の時代性と切り離して考えられないんですよ。例えば70年代。『帰ってきたウルトラマン』がちょっと暗いとか、ルサンチマンに満ちてるとか言われてます。そういう風に言われてますけど、70年代って、他の映画とかテレビもみんな暗いんですよ。みんな怨念の固まりみたいなところがある。たぶんそれぞれの時代を背負ってるんですよね。特撮作品も。そう考えると、今の特撮が全体的に小綺麗にできてるのは、今はそういう時代なんだ、ということだと思うんです。泥臭いものは嫌がられるのが今、なんじゃないですかね。

――CGのVFXも広義の特撮と考えれば、海外の映画も日本の映画も特撮作品が近年増えてきています。この状況をどう見ますか。

大倉  最近の海外のヒーロー物はまたすごいですよね。『アベンジャーズ』(67)もすごいヒーロー映画でした。あれだけのものを、やられちゃうわけですよ。『GODOZILLA ゴジラ』(68)を待つまでもなく、『アベンジャーズ』とか『バットマン』(69)で、あのレベルのものをやられちゃう。その中で、日本の特撮は戦わなきゃいけないわけですから、今までのセオリーとかと全く違う作品が出てきてほしいと思いますね。

朱川  海外では大人もヒーロー物好きですよね。でも日本人は感覚が違うと思うんです。今もどこかで、子どもの見るものだと思ってる。

大倉  逆に、子どもが見るものと思われるのが嫌で、そうじゃないものにしようとすると――

朱川  『仮面ライダーTHE FIRST』(70)や『仮面ライダーTHE NEXT』(71)みたいに、変な要素を無理に入れて、結局本筋を忘れちゃうようなことも(笑)。

大倉  『アベンジャーズ』って明らかに子どもの見るものじゃない。でも、やってるフォーマットは、我々が『仮面ライダー』とかで見てきたのと全く同じです。だから、これからの特撮映像作る方には、日本以外の国の人が見た時にこれはどう映るんだろうという視点を持っていただきたいなぁと思います。
また、朱川さんのおっしゃるように、海外では線引きみたいなものがなくなりつつあると思います。日本でもこれは特撮だから、って線引きがなくなるといいなと思いますね。『進撃の巨人』(72)を特撮映画として見に行く人はいないと思う。でも来年公開される『ゴジラ』(73)は、おそらくみんな特撮怪獣映画だと思って見に行く。その違いですよね。ハリウッドから『GODZILLA』が来ても、日本人だけが怪獣映画として見に行くという感覚。歴史があるので、しょうがないことなのかもしれないですが。その辺を変えていく視点みたいなものを、作る人たちが持てればいいかなぁ、というのはちょっと思います。
でもすごく新しいものは、出てきにくい状況ではありますね。

朱川  過去の作品のリメイクとか、マンガやアニメの実写化のほうが、企画は通りやすいことは確かですよね。

大倉  結局はいいものを作らないと人は来ない、というところに誰か気づこうよっていうのはちょっとありますね。

朱川  今、皆さんすぐお金欲しがりすぎ、という気がします。育てようという気がないですよね。流行ってるものに、それこそイナゴみたいにワァって食い荒らして、他に行っちゃう。そういう文化の消費の仕方をしてたら、日本はだめになりますよ。本もそうですしね。

――特撮作品にこれからどう関わっていきたいとお考えですか。

『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』
光文社文庫

朱川  『ウルトラマンメビウス』でやらせていただいたようなノベライズ(74)ですね。愛をいっぱい込めた。『仮面ライダー』だって書きたいと思いますし。他の人が作ったコンテンツなんで、気安く使えるわけじゃないですが、僕は本を書く人なんで、そのスタンスというのを忘れたくないですね。
それと、できれば、企画とかはやりたいと思いますね。でも脚本は、他の人が書いたのを見たい。か、自分が一から書くんじゃなくて、誰かと作り上げるか、ですね。方角的にはもちろん『怪奇大作戦』(75)とかも好きですが、フォーマットができちゃってるんで。フォーマットに乗るんだったら、昔の『ライダー』みたいな等身大のヒーローのほうが好きですね。僕は、知る人ぞ知る、池上遼一の『スパイダーマン』(76)が大好きなんですよ。小学校の時に、かぶれちゃったんです。平井和正(77)さんが原作の回とか、これ子どもが見ていいもんじゃないだろうというのが出てくる。ああいう感じは今どうなんだろうか、とか思いますね。

『怪獣文藝の逆襲』(アンソロジー)
KADOKAWA

大倉  私は最近、怪獣の小説を書く機会がありまして。『怪獣文藝の逆襲』という、怪獣をモチーフとした小説のアンソロジーが出て、そこで短いものを書いたんです。すごく楽しかったんですね。朱川さんが言われたように、私も小説書きなので、本を書くというアプローチをしたいですね。怪獣小説ってジャンルはまだありません。怪獣って、映画もテレビも音楽も、それこそプラモデルとか立体物も席巻してるんですが、小説に関してはまだそれほど出ていない。実は書かれてなくはないんですが、成功したものはあまりない。唯一残されたフロンティアみたいなところがあるんです。怪獣小説ってジャンルができるといいなと思ってます。小説は映画と違って個人で創作することができるので、個人の怪獣観が投影できる。だから、いろいろ新しい怪獣が生まれるんじゃないかと思います。

朱川  特撮ファンは、本よりも映像の方に行く人が大多数ですよね。でも活字だって面白いものにはすごくハマるのに、それを知らないのはもったいないなぁと思うんだけど。本って、読んで自分で想像しなきゃいけないからね。

大倉  想像しなきゃいけないのって大変といえば大変ですね。そこが面白いところなんですが。

朱川  例えば大倉さんの書いた本で、大倉さんの書いたことを僕の頭で再生するってのは、これはこれですごく楽しいことなんですよ。大倉さんの描いたイメージが頭の中に伝わってくるのは、本を読むことでしかできない経験なんです。特撮っぽい話を、それで出来るとすごく楽しいと思うんだけど、レベル高くないと。

大倉  かなり高度なものが要求されると思います。

朱川  書くほうがガッチリやらないと、読者が満足してくれないと思いますね。バヒューンって書いた瞬間にもうダメなんじゃないかな。擬音書いちゃった、もうダメだみたいな(笑)

大倉  ビーとかね。

朱川  ビビビビビとかね。

大倉  ガラガラガラとかね。

――ありがとうございました。

(2015.4.25 秋葉原 書泉ブックタワー(78)にて)

おふたりは、特撮映像の制作者でもなければ評論家でもない。
ただ、小さい時から特撮に接し、ファンとして深い愛情を注いできた。
そして現在は、小説というジャンルではあるがモノを創る側のプロフェッショナルである。
別のジャンルのクリエイターの視点は、愛ゆえに厳しいものもあると感じた。
「特撮」の未来を、一緒に信じたい。
そう感じさせてくれた濃密な時間だった。
(編集部・山本和宏)

朱川湊人(しゅかわ みなと)

1963年大阪府生まれ。慶應義塾大学文学部国文学科卒業。出版社勤務を経て、2002年に「フクロウ男」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。翌年には「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞を、05年に『花まんま』で直木賞を受賞。主な著書に『都市伝説セピア』『かたみ歌』『オルゴォル』『箱庭旅団』『サクラ秘密基地』『月蝕楽園』『冥の水底』『キミの名前』など多数。脚本に参加した『ウルトラマンメビウス』のノベライズ版『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』も執筆している。

大倉崇裕(おおくら たかひろ)

1968年京都府生まれ。学習院大学法学部卒業。97年「三人目の幽霊」が第4回創元推理短編賞佳作となる。98年「ツール&ストール」で第20回小説推理新人賞を受賞。著書に『三人目の幽霊』『七度狐』『やさしい死神』『白戸修の事件簿』(『ツール&ストール』改題)『白戸修の狼狽』『無法地帯』『丑三つ時から夜明けまで』『警官倶楽部』『オチケン!』『オチケン、ピンチ!!』『オチケン探偵の事件簿』『聖域』『生還』『百虹』『凍雨』『夏雷』『小鳥を愛した容疑者』『蜂に魅かれた容疑者』等がある。

http://d.hatena.ne.jp/Muho/

註釈

  • 1 ペテロ:『ウルトラセブン』#35「月世界の戦慄」に登場の怪獣
  • 2 ウルトラマンセブン:『ウルトラセブン』の誤称。これを聞くとファンやマニアはちょっとイラッとする
  • 3 ケムール星人:『ウルトラQ』#19「2020年の挑戦」に登場する《ケムール人》の誤称
  • 4 『ウルトラQ』:1966年に放送された円谷プロダクション製作の特撮ドラマ第1弾。怪獣だけでなく怪奇現象や、SF的なエピソードも多い
  • 5 『ウルトラマン』:1966₋67年放送の特撮ドラマ。宇宙から来た巨大ヒーローウルトラマンが、科学特捜隊とともに怪獣や宇宙人と戦う。
  • 6 『ウルトラセブン』:1967₋68年放送の特撮ドラマ。宇宙から来たヒーローウルトラセブンが、ウルトラ警備隊とともに侵略宇宙人と戦う。
  • 7 『帰ってきたウルトラマン』:1971₋72年放送の特撮ドラマ。ふたたび地球にやってきたウルトラマンが、MATとともに怪獣や宇宙人と戦う。
  • 8 『仮面ライダー』:1971₋73年放送、東映製作の特撮アクションドラマ。原作は石ノ森章太郎。悪の秘密結社《ショッカー》の手で生み出された改造人間・仮面ライダーがショッカーと戦う
  • 9 『マジンガーZ』:1972₋74年放送、東映動画制作のアニメーション。原作は永井豪。高校生・兜甲児が、祖父の残した巨大ロボット・マジンガーZで襲い来る機械獣と戦う。
  • 10 『機動戦士ガンダム』:1979₋80年放送、日本サンライズ制作のアニメーション。少年アムロはモビルスーツ・ガンダムに乗り込み、地球連邦軍とジオン軍との戦いに巻き込まれていく。
  • 11 『宇宙刑事シャリバン』:1983-84年放送の特撮アクション番組。製作は東映。『宇宙刑事ギャバン』に続く「宇宙刑事シリーズ」第2弾作品。
  • 12 ファンタスティックコレクション:朝日ソノラマより刊行された特撮番組やアニメーション作品を取り上げたムックシリーズ。制作者の意図を読み解くなど本格的な論評が行われ、衝撃を与えた。
  • 13 ガンプラ:『機動戦士ガンダム』に登場するモビルスーツや兵器などのプラモデル。
  • 14 空の贈り物:『ウルトラマン』#34のタイトル。登場怪獣はスカイドン。監督は実相寺昭雄。
  • 15 悪魔はふたたび:『ウルトラマン』#19のタイトル。登場怪獣はアボラスとバニラ。国立競技場を再現したセットが見事。
  • 16 アボラスとバニラ: 3億5000年前にカプセルに封印された怪獣。現代に復活し、千駄ヶ谷にあった国立競技場で対決する。バニラはアボラスの溶解液で倒され、アボラスはウルトラマンのスペシウム光線を3発浴びてようやく倒される。
  • 17 禁じられた言葉:『ウルトラマン』#33のタイトル。登場宇宙人はメフィラス星人。
  • 18 メフィラス星人:ウルトラマンと互角に戦う。地球人の少年の勇気を評価し、去っていく。
  • 19 悪魔の住む花:『ウルトラセブン』#31のタイトル。登場怪獣はダリー。若き松坂慶子が出演。
  • 20 ひとりぼっちの地球人:『ウルトラセブン』#39のタイトル。登場宇宙人はプロテ星人。
  • 21 『人間椅子』:江戸川乱歩の短編小説。『苦楽』1925年9月号に掲載。
  • 22 『屋根裏の散歩者』:江戸川乱歩の短編小説。『新青年』1925年8月増刊号掲載。
  • 23 『人間失格』:太宰治の中編小説。代表作の一つ。
  • 24 円谷プロ:特撮の神様・円谷英二が創設した特撮映像制作会社。『ウルトラマン』『ウルトラセブン』ほか数々の傑作を生んだ。
  • 25 あっ!キリンも象も氷になった!:『ウルトラマン80』#50(最終回)のタイトル。登場怪獣はマーゴドン。
  • 26 タロウの首がすっ飛んだ!:『ウルトラマンタロウ』#14のタイトル。登場怪獣はエンマーゴ。
  • 27 『特捜最前線』:1977-87年放送の刑事ドラマ。二谷英明演ずる神代課長をリーダーとするエリート刑事集団《特命課》が事件解決のために活躍する。特に長坂秀佳脚本回の面白さは秀逸。
  • 28 ベータカプセル:『ウルトラマン』で主人公のハヤタ隊員がウルトラマンに変身するための道具
  • 29 ハヤタ隊員:科学特捜隊の一員だったが、ウルトラマンと接触し、一心同体となる。
  • 30 モロボシ・ダン:『ウルトラセブン』の主人公。宇宙からやってきたウルトラセブンの地球上での姿。メガネ状の変身装置ウルトラ・アイを目に装着することでウルトラセブンの姿に戻る。
  • 31 アマギ隊員がピンチなんだよ:『ウルトラセブン』最終回(#49「史上最大の侵略(後編)」)で満身創痍のモロボシ・ダンが、ヒロイン・アンヌ隊員の制止を振り切ってウルトラセブンに変身するときのセリフ。
  • 32 エビラ:1966年公開の東宝映画『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』に登場する怪獣。
  • 33 変身人間シリーズ:東宝製作の特撮映画『美女と液体人間』(58)『電送人間』(60)『ガス人間第一号』(60)の総称。
  • 34 カメレオン男か死神カメレオンか:『仮面ライダー』#6「死神カメレオン」#7「死神カメレオン 決斗!万博跡」に登場する怪人の名称。劇中呼称はカメレオン男だが、エピソードタイトルが死神カメレオンとなっているため、どう呼ぶかの違いが発生した。
  • 35 『ウルトラマンメビウス』:2006-07年放送の特撮ドラマ。ウルトラマン誕生40周年記念作品。地球にやってきたウルトラマンメビウスが、CREW GUYSと共に怪獣や宇宙人と戦う。
  • 36 続篇:『ウルトラマンメビウス』#32「怪獣使いの遺産」は、『帰ってきたウルトラマン』#33「怪獣使いと少年」の後を継ぐ物語であった。
  • 37 『ウルトラマンマックス』:2005-06年放送の特撮ドラマ。地球にやってきたウルトラマンマックスがDASHと共に怪獣や宇宙人と戦う。
  • 38 ヒビノミライ:『ウルトラマンメビウス』の主人公。宇宙から来たウルトラマンメビウスの地球上での姿。
  • 39 『ウルトラマンギンガ』:2013年にTV番組『新ウルトラマン列伝』内で放送された特撮ドラマ。特殊防衛チームは登場せず、ウルトラマンギンガは高校生・礼堂ヒカルと一心同体になり怪獣と戦う。
  • 40 梶研吾:漫画原作者、脚本家、監督。
  • 41 ペガッサ星人:『ウルトラセブン』#06「ダークゾーン」に登場する宇宙人。
  • 42 同じ宇宙工作員で:『ウルトラマンマックス』#32「エリー破壊指令」。宇宙工作員ケルスが登場。
  • 43 CREW GUYS:『ウルトラマンメビウス』の防衛チームの名称。
  • 44 ゾアムルチ:『ウルトラマンメビウス』#32「怪獣使いの遺産」に登場する怪獣
  • 45 ムルチ:『帰ってきたウルトラマン』#33「怪獣使いと少年」に登場する怪獣
  • 46 『大鉄人17』:1977年に放送された特撮ドラマ。製作は東映、原作は石ノ森章太郎。石ノ森原作では初の巨大ロボットものであった。
  • 47 『仮面ライダー響鬼』:2005-06年放送の特撮アクションドラマ。製作は東映。主演に細川茂樹、主題歌に布施明と大人のイメージを感じさせた作品。
  • 48 『超人機メタルダー』:1987-88年放送の特撮ドラマ。製作は東映。
  • 49 『変身忍者嵐』:1972-73放送の特撮アクション時代劇。製作は東映。原作は石ノ森章太郎。
  • 50 月ノ輪:『変身忍者嵐』に登場するキャラクター。西洋妖怪を追って日本にやってきた謎の仮面剣士。その正体は…。
  • 51 『ゴジラ』:1954年に製作された日本初の怪獣映画にしてすべての原点。東宝製作。監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英二
  • 52 『ガス人間第一号』:東宝製作の映画で1960年公開作品。ヒロイン・春日藤千代を八千草薫が演じている。
  • 53 『仮面の忍者 赤影』:1967-68年放送の特撮アクション時代劇。原作は横山光輝。
  • 54 アゴンとドグマ:『仮面の忍者 赤影』の第3部根来篇の#31「怪忍百面鬼」#32「鉄甲アゴン」#33「大百足ドグマ」#34「怪獣大逆襲」に登場する怪忍獣。アゴンはカブトムシの怪忍獣で根来十三忍の《虫寄せ風葉》が操り、ドグマはムカデの怪忍獣で《人むかでの矢尻》が操る。2匹は鈴鹿峠で織田信長一行を襲う。
  • 55 『ジャイアントロボ』:1967-68年放送の特撮ドラマ。製作は東映。原作は横山光輝。
  • 56 『仮面ライダー対ショッカー』:1972年公開の中編映画。「東映まんがまつり」の1本として公開された。
  • 57 藤岡弘:『仮面ライダー』放送当初の主人公・本郷猛を演じた俳優。番組撮影中にバイクで転倒、重傷を負ったため番組を降板したが、リハビリ後復帰を果たした。
  • 58 桜島1号:『仮面ライダー』#40「死斗!怪人スノーマン対二人のライダー」#41「マグマ怪人ゴースター桜島大決戦」で一時的に戻ってきた仮面ライダー1号の俗称。1話から13話までのレギュラー登場時より全体に色が黒っぽく、眼の色も赤が強調されている。
  • 59 本郷猛初の変身ポーズ:13話までのレギュラー登場時には変身ポーズがなく、映画『仮面ライダー対ショッカー』で初めて変身ポーズを披露。53話からの新1号(マスクの色が明るくなり、腕に2本のラインが入る)とはポースをとる際の掛け声が異なる。
  • 60 サイクロン号:『仮面ライダー』の主人公・仮面ライダー1号、2号が乗るオートバイの名称
  • 61 中屋敷鉄也:俳優、スーツアクター。仮面ライダーを演じた。
  • 62 本郷猛:『仮面ライダー』の主人公。ショッカーに改造され仮面ライダーとなった。
  • 63 『サンダ対ガイラ』:1966年公開の日米合作特撮映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』の略称。監督は本多猪四郎。
  • 64 《フラバラ》:1965年公開の日米合作特撮映画『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』の略称。監督は本多猪四郎。
  • 65 エリー:『ウルトラマンマックス』の防衛チームDASHの女性型オペレーターアンドロイド。満島ひかりが演じた。
  • 66 ケサム:『ウルトラマンマックス』#07「星の破壊者」に登場する宇宙工作員の名前。
  • 67 『アベンジャーズ』:2012年公開のアメリカ映画。アメリカの出版社・マーベルコミックが出版するヒーローマンガの主人公たちが一同に会し活躍する。登場するヒーローはアイアンマン、キャプテン・アメリカ、超人ハルク、マイティ・ソー、ホークアイ、ブラック・ウィドウなど。
  • 68 『GODZILLA ゴジラ』:2014年公開のアメリカ映画。監督はギャレス・エドワーズ。日本が生んだ怪獣ゴジラを描いた2本目のアメリカ映画。1本目は1998年公開の『GODZILLA』でローランド・エメリッヒが監督した。
  • 69 『バットマン』:マーベルと競合するアメリカの出版社・DCコミックが刊行するコミックを原作とする映画。1943年以来何度も映画化されているが、ここではクリストファー・ノーランが監督した『バットマン ビギンズ』(2005)『ダークナイト』(2008)『ダークナイト ライジング』(2012)の3本を指す。
  • 70 『仮面ライダーTHE FIRST』:2005年公開の特撮アクション映画。本郷猛がショッカーにより改造されるが、仮面ライダーとなりショッカーと戦うという『仮面ライダー』の原点を現代的な造形、アクションで構成しなおした作品。本郷猛を黄川田将也、一文字隼人を高野八誠が演じた。監督は長石多可男。
  • 71 『仮面ライダーTHE NEXT』:2007年公開の『仮面ライダーTHE FIRST』の続編。ライダー1号、2号に加え、仮面ライダーV3も登場。V3に変身する風見志郎を加藤和樹が演じた。TVドラマ『仮面ライダー』放送開始当初の怪奇性を取りいれた作品。監督は田崎竜太。
  • 72 『進撃の巨人』:2015年夏公開の映画。8月に前編『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』が、9月に後編『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN END OF WORLD』が公開予定。諌山創によるマンガが原作。巨人が襲ってくる物語のため特撮が使用される。監督は樋口真嗣。
  • 73 『ゴジラ』:2016年公開予定の新作映画。2004年公開の『ゴジラ FINALWARS』以来12年ぶりの日本国内製作のゴジラ映画となる。総監督/脚本・庵野秀明、監督/特技監督・樋口真嗣。
  • 74 『ウルトラマンメビウス』のノベライズ:朱川氏が執筆した『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』
  • 75 『怪奇大作戦』:1968-69年放送、円谷プロ制作の特撮ドラマ。特殊な科学技術や装置を使って行われる怪奇現象を利用した犯罪を、SRI(科学捜査研究所)の面々が解決する。SRIのクールな科学者・牧史郎を演じた岸田森の圧倒的存在感が印象深い。
  • 76 池上遼一の『スパイダーマン』:1970-71年に「月刊少年マガジン」に連載されたマンガ。アメリカ・マーベルコミックの『スパイダーマン』の翻案マンガとしてスタートするが、途中からオリジナル作品に変化する。第7話以降、平井和正が原作として表示される。
  • 77 平井和正:日本のSF作家。『ウルフガイ』シリーズ『幻魔大戦』シリーズなど人気シリーズを発表。また『8マン』(画:桑田次郎)『幻魔大戦』(画:石ノ森章太郎)などのマンガ原作や、TVアニメ『エイトマン』などでは脚本も担当した。
  • 78 書泉ブックタワー:東京・秋葉原にある大型書店。土地柄マニアックな書籍の取り扱いが多い。特撮コーナーをはじめコミック、映像関連、ライトノベル、ミリタリー、格闘技、鉄道など濃度の高いファンの要望に応える書店として独自の立ち位置を保持している。
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