「鶴川ショートムービーコンテスト 飯島敏宏監督企画2025」レポート
2025年11月24日、東京町田市の和光大学ポプリホール鶴川にて「グローイングアップ映画祭 鶴川ショートムービーコンテスト2025」の特別企画として「飯島敏宏監督企画」が開催。初期ウルトラシリーズを支えた飯島監督が手掛けた『ウルトラマン』最初期のエピソード3本の上映とスペシャルトークショーに、多くのファンがつめかけた。
『ウルトラマン』撮影スタート時の3作品を上映

昨年は『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』と『ホームカミング』が追悼上映されたこの企画。今年は14時と17時の2回開催され、第2話「侵略者を撃て」、第3話「科特隊出撃せよ」、第5話「ミロガンダの秘密」の3作品を上映。14時からの回は、小学生のための特撮映画ワークショップ作品『森林の逆襲』が併映され、17時からの回では、スペシャルトーク「飯島敏宏監督ウルトラマン誕生秘話」が開催。ウルトラマンのスーツアクターである古谷敏氏、フジ・アキコ隊員役の桜井浩子氏、スクリプターの田中敦子氏が登壇した。聞き手は、平成ウルトラシリーズを手掛けた小中和哉監督。
古谷敏氏
桜井浩子氏
田中敦子氏

円谷プロのウルトラシリーズは、2話以降のエピソードから撮影をはじめ、スタッフやキャストが撮影に慣れてから第1話を撮るセオリーがある。上映された3作品は『ウルトラマン』で撮影された最初の3作。いずれも飯島監督と的場徹特技監督による3話持ち(まとめて3本を撮ること)で制作されている。
当初は、俳優が演じるドラマの本編と特撮の両方を、同じ撮影班が撮る1班体制だったため、 第2話のドラマ部分を撮り終えた飯島監督は、特撮シーンの撮影現場にも立ち会った。スペシャルトークでは、この時の裏話が披露された。

「たまたま私は撮影現場にいたんですけれども、お昼過ぎに特技監督の的場さんが車でお帰りになっちゃった(笑)」(桜井浩子氏)
「ウルトラマンのはじめてのアクションシーンなんだけれど、飯島監督が『的場監督が帰っちゃったよ、まいったね』と控室に入ってきて、それでご自分でアクションの殺陣師を買って出て撮影したんです」(古谷敏氏)
「本当は、特撮監督がアクション指導をつけるべきだったのだと思いますが、的場監督は大映からいらした特撮監督でしょ。大映で撮られていた映画では、戦うシーンの動きは殺陣師がつけるものですから、ここは僕の仕事じゃないと思われて帰ってしまったんです」(田中敦子氏)

突然のことながら、特撮格闘シーン演出もこなしてしまう実力が、飯島監督がクランクイン作品の監督に選ばれた理由のひとつだったのだろう。腕で十字を作る、あのスペシウム光線のポーズも飯島監督の考案だという。
また桜井氏は、第2話のバルタン星人の映像をはじめて見たとき、キャストから「おお!」とおどろきの声が上がったことも述懐。
「キャップ役の小林昭二さんに『みんな、廊下にこい』と呼びだされて、あれだけ特撮シーンがよいんだから役者の俺たちも負けてられないぞ、と発破をかけられました」(桜井氏)
当時の現場の熱気を語り、会場をうならせていた。
この会場を満杯にしたいんだ
「グローイングアップ映画祭」は、アマチュア作家による短編映画のコンペティション「鶴川ショートムービーコンテスト」をメイン企画に、コロナ時期の休止をはさみながらも、今回10回目の開催をむかえた。もともとは市井の企画だったが、町田市在住だった飯島監督の協力が得られたことで、スタートしたイベントであった。だが飯島監督は惜しくも2021年に逝去された。
今回の上映会とスペシャルトークは、満席となったが、これは映画祭ではじめてのこと。また、前日の11月23日には「鶴川ショートムービーコンテスト2025入選作品上映会」も開催され、こちらも大盛況だった。

桜井氏は、この光景を見て目を細めていた。
「飯島監督が『この会場を満杯にしたいんだ』とおっしゃって、私が最初に鶴川ショートムービーコンテストに呼ばれたのが7〜8年前。気持ちっていうのは、すぐには成就しないものだなあと思いつつ、この場に監督がいらっしゃったらすごくよろこんだと思います。私は、ウルトラマンから離れていた時期があったんですが、たまたま円谷プロで、オブザーバー(初期円谷プロ作品に関する企画の監修)をやっていた飯島監督と再会したんです。そこで『桜井くん、プロデューサーやっちゃいなさい』っていわれて、一緒にラジオ番組の『ウルトラQ倶楽部』など、いろんなことを20年近くやらせていただきました。それでいまの自分がいます。その意味でも監督は晩年の恩師ですね」(桜井氏)

田中氏は飯島監督との交流を振り返る。「私は、円谷作品の時よりも、飯島監督が木下恵介プロダクションや、その後のドリマックスの社長をやってらっしゃる時期に、プロデューサーとしてお世話になりました。木下監督が亡くなった翌年、追悼のために映画『二十四の瞳』のドキュメンタリーを作りたいと、飯島監督に企画を持ちかけたり、作品のあらすじを読んでいただいたり。倒られる直前まで、ずっとお付き合いさせていただいていました。私の仕事の近況をお話したり、はげまされたり、晩年まで親しくしてくださった。今日のイベントは感慨深いものがありますね」(田中氏)

古谷氏は、2026年に60周年を迎える『ウルトラマン』の衰え知らずの人気と飯島監督への思いを語りイベントを締めくくる。
「僕が今日、イベント出演を快諾したのは、やはり飯島監督への恩返しです。僕をレジェンドとして扱ってくださる方もいらっしゃいますが、僕なんかちっちゃいですよ。僕らが一生懸命やっても、作品の人気は60年も続きません。飯島監督の作品が最初で、それを小さい時に見てくれたファンの方たち、夢少年と夢少女たちが、ウルトラマンを愛してくれているから続いてるんです。飯島監督は、僕にとって、最高で、最高の監督です」(古谷氏)
いまなおその魅力が色あせない飯島監督が手がけた初期3作品の上映と、監督の偉業を現場で目の当たりにしたレジェンド3人によるトークショーは、大盛況のうちに幕を閉じた。「鶴川ショートムービーコンテスト」への応募作品も年を経るごとに、その質と量を増している。60年前に飯島監督をはじめ、多くのスタッフの熱意がまいた種は、着実に根付いていると感じる1日だった。




聞き手をつとめた小中和哉監督とスペシャルトークに登壇したお三方で記念のフォトセッション。
飯島監督夫人・弘子(前列中央右、矢代京子)氏も交えて記念撮影。
TEXT:幕田けいた
【グローイングアップ映画祭
鶴川ショートムービーコンテスト2025】
2025年8月1日から9月5日まで作品募集が行われ、各賞の発表が2025年11月23日に行われた。グランプリに加え、準グランプリ、飯島敏宏監督賞、町田市長賞、町田市議会議長賞、町田市文化・国際交流財団理事長賞、U-18賞、観客賞などを設定。毎年多くの作品がエントリーされる。募集テーマは自由となっていて、プロ、アマチュア、年齢、国籍など問わず、15分以内のオリジナル作品(実写、CG、アニメーションを問わない)が対象。作品が脚本や技術、登場人物の感情の表現など、さまざまな観点から選考される。受賞作品には、それぞれ賞金が授与される。
公式サイト:http://www.tsurukawa-smc.com/



