変わるものと変わらぬもの 30周年記念展「ALL OF EVANGELION」
六本木ヒルズ森タワー52階にある展望台・東京シティビューで2026年1月12日(月・祝)まで、『エヴァンゲリオン』シリーズ30周年記念展「ALL OF EVANGELION」が開催されている。30年に渡って愛されてきた『エヴァンゲリオン』の画素材(設定画やレイアウト、原画、セル画など)を網羅した、ファンには見逃せない魅力あふれる展示となっている。

制作過程の「画素材」に特化した展示

『新世紀エヴァンゲリオン』は、1995年10月から1996年3月に掛けて、テレビシリーズ全26話が放映された。翌1997年には、テレビシリーズの結末を新たに作り直した劇場版が公開され、社会現象ともいえる反響を呼んだ。2007年には『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズが、劇場版4部作の映画として制作された。その最終作にあたる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されたのは2021年3月。この作品は、興行収入100億円を超える大ヒットを記録した。
2025年は、最初のテレビシリーズ放映から30年という節目の年に当たる。本展示では、長い歴史を持つテレビ・劇場作品の制作過程で作られた、膨大な数の素材や資料から500点以上の画素材を展示。これまで、『エヴァンゲリオン』シリーズにまつわる展示は数多く開催され、多数の書籍が出版されたが、画素材について、ここまでの質と量を一気に集めたのは初の試みだ。
制作物を見ることで、「画」の持つ力がわかる
本展では、全シリーズを網羅したことによって、画素材を通して「変わったもの」と「変わらないもの」がくっきりと見えてくる構成になっている。
最初のテレビシリーズでは、「セル画」(透明なフィルムにセル絵の具を使って着彩したもの)が使われている。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』が制作される少し前の2000年前後から、徐々にセル画はなくなっていき、パソコンで着彩する手法に切りかわっていった。セル画はきちんと保管しないと散逸し劣化してしまう。本展示の第1章では、約270点ものセル画が展示されているが、1995年に作られたアニメーション作品のセル画が、このクオリティで残されているのはすばらしいことだ。

本展示第3章以降で扱われる『新劇場版』以降の作品は、着彩以降の工程がデジタルに移行したため、「形ある物」としてのセル画は存在しない。それに変わって展示されるのが「レイアウト」や「原画」など、紙に鉛筆や色鉛筆を使って人の手で描かれた「作画」行程の資料群だ。展示では、一点一点にはキャプションを置かず、膨大な数のレイアウトや原画が展示スペースいっぱいにわけへだてなく展開している。
「レイアウト」は、画面の設計図面のようなもので、そのカットにおけるキャラクターの表情やポーズやメカのアクションの見せ方、背景のパースや描き込み具合、カメラアングルといった、画面を構成する要素が描かれている。

「原画」は、カット内の一連の動きのなかでキーとなる画のことで、カット毎に担当アニメーターによって描かれる。作画監督が修正をする場合もあり、それは色の違う作画用紙に描かれる。これらのレイアウトや原画には、アニメーターや演出家、監督からの指示やコメントが書かれているものもある。アニメーションは、ひとつのカットに対して複数の人がかかわる共同作業なので、こうした申し送りは重要だ。そうした細かいやりとりも、ぜひ見てもらいたい。
作り手の熱量が作品をアップデートさせた

もうひとつ、「CGをはじめとするデジタル技術」の導入も大きな変化といえる。
第4章の終わりで、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のメイキング映像をいくつか見られる。CGでセットを作り、キャラクターを配置してカメラアングルなどを検証する「プリヴィズ」や、役者に演技をしてもらいそれをデジタルデータに変換する「モーションキャプチャー」といった、CG作品で使われるデジタル技術が制作に導入され、それが新たな魅力をもたらしている。こうした新しい技術やテクノロジーを、従来のアニメーション表現に取り入れたのも大きな変化だ。

その一方で、庵野秀明をはじめとする作り手の熱量や、作品に対する決して手を抜かない姿勢は、一貫して「変わらないもの」だったと感じた。第2章の展示スペースにある予告編集を見ても、最初のテレビシリーズで、制作スタッフが限界ギリギリのところで作品作りをしていたことを感じ取れた。それでも手を抜かずに真摯に作品と向き合った姿勢が、シリーズが長く愛される源泉となったのは間違いない。劇場版から新劇場版になってもその姿勢は変わらず、新しい技術や手法を導入しながら作品をアップデートした。本展は、そうした遍歴が一望できる稀有な展示となっている。
TEXT:齊藤睦志

【30周年記念展「ALL OF EVANGELION」開催概要】
会場:東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
会期:2025年11月14日(金)~2026年1月12日(月・祝)
開館時間:10:00~22:00(最終入館21:00)
30周年記念展「ALL OF EVANGELION」 公式サイト:
https://allofevangelion-ex.roppongihills.com/
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